2019年2月22日(金)

新幹線のび~る鼻、半世紀で4倍の切実な事情

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2019/2/8 11:57
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JR東日本は8日、次世代新幹線「ALFA―X(アルファエックス)」の試験車両を山口県下松市で報道公開した。新幹線として国内最速の時速360キロメートルで営業運転を目指しており、先頭車両の先端部は過去最長の22メートルと、国鉄時代の初期車両に比べれば半世紀で4倍に伸びる計算だ。とどまるところを知らない「長鼻化」にはスピード以外にも理由がある。

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山が多い日本はトンネルが多い。高速走行のためカーブをなるべく少なくしたい新幹線には避けて通れないが、高速でトンネルに進入すると反対側で「ギュイーン」という衝撃音が鳴る。トンネル突入時の圧力波を抑え、騒音をなくすのが長鼻の重要な役割だ。

JR東日本は次世代新幹線の試験車両を公開した(8日、山口県下松市の日立製作所の笠戸工場)

JR東日本は次世代新幹線の試験車両を公開した(8日、山口県下松市の日立製作所の笠戸工場)

運転速度が速くなるにつれて大きくなる騒音を流線形の曲線で風を流れやすくし、和らげる長鼻スタイルは、11年に営業運行を始めた「E5系」以降に確立された。

JR東日本が日立製作所の笠戸事業所(山口県下松市)で披露した新型の試験車両の鼻は、現行の東北新幹線「はやぶさ」で主力を張るE5系と比べても1.5倍の長さ。JR東日本先端鉄道システム開発センターの浅野浩二所長は「先頭車両の客室は窓が3つ分しかない。鼻は伸ばせば伸ばすほど圧力波は減るが、居室性との兼ね合いを見て実際の走行車両を決めていきたい」と話した。

国鉄時代の1982年にデビューし、上越・東北新幹線の初代車両として知られる丸目・丸鼻の「200系」と比較するともっと極端だ。試験車両とはいえ、アルファエックスの鼻の長さは4倍に達する。200系は営業最高速度が時速210キロメートルにとどまっており、速度も7割増しと高速化が順調に進んでいる。

東北・上越新幹線向けの200系の丸みを帯びた鼻は「団子鼻」の愛称も(JR東日本提供)

東北・上越新幹線向けの200系の丸みを帯びた鼻は「団子鼻」の愛称も(JR東日本提供)

アルファエックスは5月にも試験走行を始め、鼻を長くすることで速度で生じる騒音を軽減できるかを確かめる。試験走行を経て、北海道新幹線が札幌までの延伸を予定する2030年度の投入を目指す。

川崎重工業も18年12月、E5系より1メートル長い約16メートルの鼻の試験車両を公開済み。JR東日本は日立の試験車両と同時に試し、客席数とのバランスを見て実際に営業する車両の形状を決める。試験車両では地震などの緊急時に停止しやすい新技術も導入し、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」活用による予防保全も取り入れる。

新幹線のスピードをめぐってはJR東海が15年に東海道新幹線(東京―新大阪間)の最高時速を285キロメートル(以前は270キロメートル)と23年ぶりに引き上げるなど、JR各社が高速を競う。訪日外国人観光客の増加やビジネス需要でダイヤも過密化の一途で、国内は高速化レースが過熱する。

ただ官民一体となって取り組む海外輸出となると、話は別だ。日本の新幹線は専用線を走行してモノにぶつからないことを前提としており、衝突安全がまず求められる海外の高速鉄道とは根本的に設計思想が違う。スピードとコスト以外に、相手国固有の事情に左右されることもある。

欧米の鉄道車両ビッグ3の一角同士が組むはずだったシーメンス・アルストム連合も破談に終わり、日本企業にとっては攻勢のチャンス。インドへの新幹線輸出など新たな案件もある。技術を磨くに越したことはないが、今後需要が伸びる可能性のある新興国では予算が限られる場面も多い。地域に応じた適切な技術の活用とコストのバランスも欠かせない要素となりそうだ。(西岡杏、岩本圭剛)

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