「世界のメルカリ」へ米市場の壁 7~12月期営業赤字
フリーマーケットアプリのメルカリが7日発表した2018年7~12月期の連結決算は、米国事業の投資などがかさみ36億円の営業赤字(前年同期は23億円の赤字)だった。中古品をフリーマーケットなど対面で販売する文化が根づく地域で、ネットで完結する個人の中古品売買はまだまだ未開の市場。一気にグローバル企業に脱皮するには米市場の成功が不可避だが、開拓の苦闘が続く。
「この成長スピードならライバルに追いつき、CtoC(個人間取引)文化を作っていける」。この日、都内で記者会見したメルカリの小泉文明社長は米国事業への手応えを示した。

ただ決算は厳しい内容だ。18年7~12月期の連結売上高は前年同期比45%増の237億円だった。国内のフリマアプリ事業の営業利益は24%増の44億円となっており、連結ベースで営業赤字の主な要因は米国にある。
14年に進出した米国では、認知度を広げるための広告宣伝費のほか、人材採用で人件費が膨らんでいる。米フェイスブックやグーグルなどの出身者を幹部に積極的に登用してきた。配送体制を整備するためのコストも重荷だ。
もともと米国では古くからガレージセールやフリマがあり、ネットでの転売より対面販売や寄付を選ぶ人は多い。

中古品のCtoCサービスのライバルはネット上で仲介して、商品は個人間で手渡しするクレイグスリストといった企業が中心だ。同じ地域内のマッチングが多い。対してフリマアプリは新興のポッシュマークなど数社が競う程度で、成長余地が大きい。
光明は見えている。アプリ上での売買金額を示す流通総額の伸びだ。18年7~12月期は1億5900万ドル(約174億円)と約7割増えた。衣類や書籍などが取引されている。
メルカリは日本同様に宅配便を使い商品の受け渡しまでアプリ内で完結できる。全米で一律の料金体系のため「ハワイやアラスカでもアプリが使われるようになった」(米国メルカリのジョン・ラーゲリン最高経営責任者=CEO)。直接手渡しする時間を惜しむ多忙な人の需要も取り込みつつあるという。
米国勢調査局の調査によると、小売分野の17年の電子商取引(EC)の売上高は約4500億ドル(約49兆円)にものぼる。経済産業省調べで9兆円の日本に比べると巨大市場だ。競合が少ないなか、新市場を生み出すことができれば大きな先行者利益を得られる。
それでも市場の攻略は緒に就いたばかり。月間の流通総額は数千万ドルでメルカリの目標である1億ドルにはまだ遠い。
メルカリがキーワードに掲げるのは「The Selling App(売れるアプリ)」。売り手の使い勝手に重点を置いたアプリを目指す。
米物流大手UPSと組み梱包の代行や、個人情報を記載せずに配送できるようにした。人工知能(AI)や電子決済のためのブロックチェーン(分散型台帳技術)にも投資をしている。
山田進太郎会長兼最高経営責任者は創業当初からアマゾン・ドット・コムのような「世界的なテックカンパニーになる」と公言してきた。
メルカリは昨年に株式上場したことで、手元資金は18年12月末時点で1000億円強と潤沢だが、日本では新規事業としてスマホ決済にも参入を目指している。海外では、低い認知度や競合に押され近く欧州から撤退する。米国での成功に時間をかけるわけにはいかない。
(吉田楓、成瀬美和)