関西の力、万博で前進へ 関西財界セミナーが開幕 - 日本経済新聞
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関西の力、万博で前進へ 関西財界セミナーが開幕

(更新)

関西の企業経営者らが経済や社会課題など幅広いテーマで話し合う第57回関西財界セミナー(関西経済連合会、関西経済同友会が主催)が7日、京都市で開幕した。テーマは「いま、試される関西~前進するための条件~」。2025年に大阪で開く国際博覧会(大阪・関西万博)という機会を生かし、関西の競争力や魅力をどう高めていくかなどを議論した。

関経連の松本正義会長は全体会議で「関西は大阪・関西万博や20カ国・地域(G20)首脳会議など発展の起爆剤となる材料が目白押しだ。平成最後の節目の年に何ができるか、何をなすべきなのかを関係者が一体となって考え、行動していく必要がある」と訴えた。

大阪万博は大阪湾の人工島・夢洲(ゆめしま)が会場で、全国への経済波及効果が約2兆円と試算される。20年の東京五輪・パラリンピックに続く景気浮揚策と位置付けられ、関西経済の復権に向けたけん引役も担う。

観光振興やまちづくりを議論した分科会では期待の声が相次いだ。阪急電鉄の角和夫会長は「万博を機にインフラ整備が加速すれば喜ばしい」と強調。夢洲が万博後も魅力を高めるために不可欠な要素としてエンターテインメント(娯楽)を挙げ、横浜アリーナやさいたまスーパーアリーナを上回る大規模施設の建設を提案した。

池田泉州銀行の片岡和行特別顧問も「大阪・関西が世界から注目され、ファンやリピーターを増やす絶好の機会」と意気込む。その上で、来場者を受け入れられる交通インフラの早急な整備を求めた。

来場者が約2800万人と想定される大阪万博はインバウンド(訪日外国人)の拡大も後押ししそうだ。電通の前田真一執行役員は「万博の前にG20やラグビーワールドカップがある。これらを通してインバウンドのデータを共有し、関西のブランディングを作り込んでいくことが必要だ」と力を込めた。

大阪万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。貧困などを解決するために国連が定めた「持続可能な開発目標(SDGs)」達成への貢献を目指している。こうした社会課題の解決に向けた企業の役割についても活発に意見が交わされた。

エア・ウォーターの岸貞行顧問は「SDGsの概念はグローバルなので、欧米への進出においてもSDGsという看板を掲げ、同じ土俵で勝負できる」との見方を示した。松本会長は「SDGsの解決を万博のテーマに添えているが、言葉として便利に使うのでなく、アクションを考えるべきだ」と呼び掛けた。

この日は650人弱が参加した。8日も6つの分科会で議論が続くほか、セミナー宣言の採択などが予定されている。

万博を巡る主な発言

万博後の夢洲の活用策

阪急電鉄・角和夫会長「万博の後に夢洲にはエンターテインメントも欠かせない要素になる。最低5万席の大規模アリーナが必要になると思う」

交通アクセスの整備

池田泉州銀行・片岡和行特別顧問 「万博は大阪・関西が世界から注目され、ファンやリピーターを増やす絶好の機会。そのためには交通アクセスの整備が重要で、既存道路の改良や拡充を最優先に官民一体の早急な対応が求められる」

関包スチール・尾鼻康弘常務執行役員 「万博の想定来場者は約2800万人。ゲートウェイとなる関西国際空港や新大阪駅から夢洲への直通の交通手段が(現時点では)ないことを懸念している」

京南倉庫・上村多恵子社長 「万博をチャンスとし、玄関口としての港湾や空港、道路、鉄道を整備し、人流と物流をつないでいく。港湾は(万博に向けた)工事の着工後に激しい渋滞が予想される夢洲のコンテナヤードを引っ越し、移転先を(電子化が進んだ)世界最先端のサイバーポートに」

万博を生かした大阪・関西復権への提言

NTT西日本・村尾和俊相談役「万博を機に関西ブランドに磨きをかけて世界に発信し、ヒト、モノ、カネを取り込んで、関西を東京と並び立つ西の極にしていくべきだ」

電通・前田真一執行役員 「万博の前に20カ国・地域(G20)首脳会議やラグビーワールドカップもある。こうしたイベントを通じてインバウンドのデータやストーリーを共有し、関西のブランディングを作り込んでいくことが必要だ」

相次ぐ災害、国土強靱化の議論も白熱

第57回目となった2019年の関西財界セミナーでは、関西が18年に経験した西日本豪雨や台風21号などの災害を踏まえ、激甚災害への備えや国土強靱(きょうじん)化の点からインフラ強化が急務との意見が多く出た。南海トラフ地震が発生すると太平洋側の交通網が寸断されるリスクがある。日本海側の大動脈として北陸新幹線の大阪延伸の早期実現を求める声などが出た。

NTT西日本の村尾和俊相談役は「新大阪駅がリニア中央新幹線とともに北陸新幹線の結節点になる」と指摘。同新幹線の大阪延伸が西日本における国土形成上の重要なピースになるとした。

この考えは北陸財界も同じだ。会合に参加した北陸経済連合会の久和進会長(北陸電力会長)は「南海トラフ地震の際は太平洋側の鉄道が止まるかもしれない。日本海側を通る新幹線は国土強靱化に資する。北陸新幹線の1日も早い大阪延伸が期待され、関西での機運醸成が必要」と述べた。

道路ネットワークの充実が災害時の復旧速度に関わるとの議論もあった。西日本高速道路会社の酒井和広社長は「暫定2車線の高速道の4車線化を進める」などと話した。

関西財界セミナー
 関西の企業経営者らが関西の活性化策について幅広く討議する会合。貿易自由化を迫られて日本経済が転換期にあった1963年に第1回を開催した。第1回では松下幸之助・松下電器産業(現パナソニック)会長(当時)が企業体質を改善する必要性を訴え、出席した経営者に奮起を促したという。
 以降は企業トップが社業の枠を超えて関西の将来を考える議論に没頭する場となった。79年に関西新空港建設促進を決議したほか、2005年に関西広域連合の早期創設を訴えるなど関西における重要な政策決定にも影響力を行使してきた。

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