2019年4月23日(火)

滋賀の図書館 貸出冊数なぜ多い(もっと関西)
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2019/2/7 11:30
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滋賀県民の人と雑談し、こんな話題になった。「滋賀の人はほんま、図書館が好きなんや」。調べてみると、県民1人当たりの図書館からの貸出冊数はこの10年、1位または2位だ。なぜ、ここまで愛されるのか。それを解き明かすため、図書館通いを始めた。

木をふんだんに使用した守山市立図書館。デートスポットとしても注目される(滋賀県守山市)

木をふんだんに使用した守山市立図書館。デートスポットとしても注目される(滋賀県守山市)

大津市の滋賀県立図書館を訪ねた。「1人当たりの年間貸し出しは7.97冊で全国2位。職員の司書有資格者率は1位。でも昔は見るに忍びないものだった」。大西良子館長はそう言ってあるデータを見せてくれた。

県が振興旗振り

1980年代初頭。県内の公立図書館は10カ所なかった。県民への1人当たりの貸出冊数も年1冊前後にとどまっていた。大西館長は「全国的にみても下位レベルだった」と話す。それが、なぜここまできたのか。

まず、70年代後半から80年代半ば、当時の武村正義知事が文化振興を旗印に掲げた。県内の各市町村に最低1つ、図書館を設置しようと、県は市町村に補助金を出して開設を働きかけた。さらに選書などを担当する司書の採用と養成に取り組んだ。こうしたハード、ソフト面の取り組みが実を結んだのだ。

その一方で電子書籍などの普及もあり図書館好きの県民にも陰りが見え隠れする。貸出冊数は2009年度をピークに下落傾向だ。図書館に出向く必要が薄れてきているのも事実だ。

県民の「図書館愛」はここまでなのか。ちょっと心配して県内の図書館巡りをしていた時、面白いものに出くわした。

昨年11月1日に改装オープンした守山市立図書館だ。「本の森」をコンセプトに内外装にふんだんに木を使っているのが特徴だ。新国立競技場のデザインを手がけた建築家の隈研吾氏が設計し、総事業費は26億6千万円にのぼる。

多くの人が集う場にしたい。その意図はデータに表れている。昨年11~12月の貸出冊数は17万25冊でリニューアル前の同時期比で58%増えた。新規登録者数は3639人で同15倍。三田村悦子館長は「想像以上」と手応えを感じている。

10代利用増える

なかでも10代の利用が増えた。どこの図書館でも利用の中心は高齢者と親子連れで、若者は敬遠しがちだ。ところが13~18歳の貸出冊数はリニューアル後2カ月間で同93%増と大きく伸びた。「デートコースとして使っている人も多い」(三田村館長)と図書館の新しい姿が見えてくる。

湖南市立図書館は昨年11月、県内初の電子図書館を開設した。本離れする若者や仕事などで図書館に来られない人に利用してもらうのが狙いだ。登録するとパソコンやスマートフォンで電子書籍を読むことができる。電子書籍のアイテムは現在134点。3月末までに500点に拡大する。

子供たちにずっと本が好きであってほしい。そんな取り組みが長浜市の私立江北図書館で始まっている。1907年(明治40年)1月に地元出身の弁護士、杉野文弥氏が中心となって開設。現存する県内最古の図書館だ。3年前から県内の小学生を対象にした読書感想文書き方講習会を開いている。

明定義人館長は「子供の本嫌いのきっかけは夏休みの宿題の読書感想文」と話す。書き方など教わっていないから書けない。だから本を読むことが嫌いになる。この負の連鎖を断ち切ろうと講習会を始めた。昨夏は10日間で延べ194人が参加。「本の読み方も深まった」と期待を抱く。

今や公私立含めて49ある県内の図書館。とても身近な存在であることに気づく。そしてどこも本を好きにする努力を欠かさない。図書館を愛する県民の一端が分かったような気がする。

(大津支局長 橋立敬生)

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