今日も走ろう(鏑木毅)

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心の内を素直に SNSは肩の力を抜いて

2019/2/7 6:30
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プロアスリートになり苦戦しているものの1つにSNS(交流サイト)がある。元来、私はIT(情報技術)系には疎く、次々とさまざまな形態がはやる状況になかなか追いつけていない。ただプロとして自分の思いや考えを発信し、少しでも理解してもらいたいと思いSNSを使っている。

使い始めた当初は、自分の発信に多くの人々が反応してくれるという高揚感、またその波及力に夢中になり、コンビニなどのレジ待ちのわずかな時間ですらコメントを確認するほどだった。

四国の徳島、高知両県にまたがる三嶺を走る

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やがて否定的なコメントに悩むようになった。普段なら中傷でも人の感じ方はさまざまだと受け流せるのだが、当時私は足の大きなけがと度重なる仕事上のストレスで精神的に不安定であり悲観的だった。そのため他人からバッシングされることを恐れ、私が理想とする姿を当たり障りなく発信し、良い反応になるにはどうすればよいか、どんな内容であれば受けるのだろうか、と真剣に悩んでいた。それほどまで気持ちをセーブして書いた投稿でも思ったほど反応がなければ何となく心が沈み、反応が良ければ気持ちが躍った。

ある日こんな虚構の自分を作り上げ、投稿している私は何のためにSNSで発信しているのか、一体これをいつまで続ければよいのだろうかと疑問がわいた。

SNSのメリットも大きい。2年前の南米パタゴニアで行われた141キロメートルの大会ではレース後半、寒さと疲労で何度もやめたいと思いながら走っていた。疲労で意識もぼんやりとしていたエイドステーションでサポートスタッフが私への数々の応援メッセージを伝えてくれた。地球の裏側からも応援してくれていると知り、孤独な大自然でのレースも多くの温かい目で見守られているようで、徐々に気力体力を取り戻し、極限状態を乗り越えることができた。これは何もレースだけにとどまらない。幾多の困難をたくさんのメッセージに支えられて今日の私があるのも間違いないのだ。

このような経緯で最近ようやくSNSとの付き合い方がわかってきた。当然のことばかりなのだが、まずはできる限り自然体で付き合うこと。自分の思いを伝えたい時のみ発信し、義務にならないようにする。また不特定多数が目にするためある程度配慮は必要だが、自分を飾らずにできる限り素直な心の内を書く。うれしいコメントには素直に喜び、ネガティブなものでも受け流しあまり深刻に受け止めない。

SNSの麻薬的な魅力に翻弄されてしまっては自分を見失う。そのため他人の反応を気にせず日記を公開するかのように肩の力を抜いて書くのが私には合っているようだ。

直接的な人間関係だけでもいっぱいいっぱいなのに、SNSによる間接的な人間関係まで抱え込んでしまうのが現代社会。それを煩わしいと悩まずにすむよう、自分にとって負担のない付き合い方を模索していこうと思っている。

(プロトレイルランナー)

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