2019年4月24日(水)

15歳 フェイスブックの憂鬱(The Economist)

ネット・IT
北米
The Economist
2019/2/6 2:00
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The Economist

2004年2月4日、青色のバナーを特徴とする新しいウェブサイトが誕生した。ハーバード大学の学生寮で立ち上げられた「ザ・フェイスブック・ドット・コム」は、人の生活をのぞきたい、のぞかれたいという人の欲望をうまく利用したが、ここまでの成功を予想した人は少なかった。同じSNS(交流サイト)の米マイスペースを買収した「メディア王」のルパート・マードック氏は08年、FBを「今月の注目」と表現したものの、本誌は翌年、記事の中でFBを「『最新のヒット』は簡単に次のヒットに追い越される」と警告した。

フェイスブックは2月4日、誕生から15年を迎えた=ロイター

フェイスブックは2月4日、誕生から15年を迎えた=ロイター

だがFBは、米全土と世界で急拡大し、写真共有サイトのインスタグラムや対話アプリのワッツアップなどの競合を買収し、トップの座を守ってきた。米国成人の約3分の2がFBを使うという。絶頂期には、平均的な利用者は同社のいずれかのサービスを1日1時間近く利用した。コミュニケーションの在り方を変え、疎遠になっていた人同士を結びつけ、世界の出来事の人々の認識に影響を与え、「友達」という言葉の意味を変えるなど、社会にこれだけ影響を与えた企業はあまりない。FBについて書いた新刊『Zucked(ザックト)』の著書、ロジャー・マクナミー氏は「時に"ビフォア"と"アフター"と呼べるほど根本的変化をもたらす技術革新が起きる。その一つがFBだ」と指摘する。

■人との交流の在り方を様変わりさせた

誕生日は、これまでを振り返る良い機会だ。FBは創業から15年で3つの面で米国に大きな変化を与えた。第1に若いとはどういうことか、その意味や実感を2度も変えた。最初はFB自体によるもので、00年代半ばに大学生や高校生の娯楽となり、多くが中毒と呼ぶほどはまった。2度目は、傘下のインスタグラムが競合アプリのスナップチャットと共に、今の大学生や高校生にとって欠かせないデジタルの"麻薬"となった。

FBは自分の感情や写真、コメントをやりすぎとも言えるほど共有する場を創出した。10代の子供は自分がどう見られているのかということばかりを気にするようになり、細切れの情報にしか目を向けなくなったのはFBのせいだと批判する人もいる。不安やうつ、自信喪失をもたらすとの声もある。FBに費やす時間が長い人ほど、他人は自分より恵まれていて、人生は不公平だと考える傾向にあるとする研究結果もある。

FBを中心とするSNSが若者の心理に長期にどんな影響を与えたかを十分理解するには何年もかかるだろう。だが、FBが人との交流の在り方を変えたのは明らかだ。画面越しなら安心できる距離感があるため、SNS上でいじめは痛ましいほど増えた。米国の10代の59%が、ネット上でいじめや嫌がらせを受けたという。FBは、遠く離れた人ともネット上の友情を育んできたが、オフラインの友人関係の在り方も様変わりさせた。米非営利団体コモン・センス・メディアの調査によると、12年には13~17歳の約半数が友人とは実際に会って話すことを好んだが、その比率は今日32%に下がり、35%は会うより携帯メールによる交流を好むという。

第2に、FBはプライバシーへの考え方も変えた。SNS上の人間関係は、信頼をベースに広がっていく。FBが登場して初めて、人々は自分の電話番号や交友関係、好き嫌い、所在地など個人情報をネット上で共有することに抵抗感を持たなくなった。閲覧できる人を自分で決められると思っていたからだ。FBがこうした情報を収集・分析し、特定利用層を対象に広告を配信するサービスを売って富を築いていると利用者はうすうす感じていたが、抗議することはほぼなかった。

■個人情報の収集・活用する手法に強い批判

だがプライバシーへの考え方は、FBにより再び変わりつつあるかもしれない。ただし、今回は逆方向にだ。英調査会社ケンブリッジ・アナリティカによる昨年の流用事件など、外部の企業がFB利用者の情報を入手、活用している不祥事が相次ぎ、FBが大量に個人情報を集めていることが判明した。米調査機関ピュー・リサーチ・センターによると、米成人利用者の約半数は、自分たちの詳細な個人情報をFBが蓄積していることを不安に感じているという。こうした個人情報に関する懸念や、ずさんな管理体制からFBは昨年、評判を落とした。米コンサルティング会社、レピュテーション・インスティチュートによると、米国人のFBの評価は18年に急落し、その数値はグーグルなど他のIT(情報技術)企業を大きく下回る。また、FBが"調査"という名目のもと利用者のネット上でのやりとりを本人の承諾を得ずに収集していた事実が1月末に新たに判明、このスキャンダルで同社のイメージはさらに悪化するかもしれない。

第3に、FBは政治にも消えない跡を残した。選挙で勝利を目指す政治家にとって有権者に働きかけるためのFBの有料広告と、ネットで拡散できる無料コンテンツは貴重なツールだ。同社の歴史を追った『フェイスブック 若き天才の野望』の著者デビッド・カークパトリック氏は、「過去10年に選出された政治家で、FBを使わなかった人を探すのは難しい」と言う。オバマ前大統領とトランプ大統領は、FBに少なからず助けられて選挙に勝った。オバマ氏の場合、資金集めと支持の呼びかけに役立った。一方、16年の大統領選にFBが果たした役割は議論を呼んだ。偽ニュースの流布や、ロシアによる大量の投稿という介入はトランプ氏に利した可能性がある。

偽ニュースが増加し、利用者が自分の好む情報とばかり接する「フィルターバブル」が広がり、多くの有権者は幻滅したことだろう。FBは世界中で偽情報やテロ、民族間抗争を広めることに加担してきた。だが市民運動の活性化にも貢献してきた。警察の暴力に反対するブラック・ライブス・マター運動は、FBでの投稿をきっかけに拡散した。「ウィメンズマーチ」から「インディビジブル」まで、草の根的な反トランプ運動はFBを通して組織化している。その他の様々な運動や活動が、FBやツイッター経由で参加者を集めている。「普通の人に発言する機会を与えている。それは、社会にとって結局プラスになる」とカークパトリック氏は指摘する。

■影響力のピークは去った

では、FBは今後15年も影響力を保てるだろうか。再び見誤るリスクはあるが、期待できそうにはない。影響力が既に広範囲に及んでいるのに加えて、FBへの懸念が高まっているからだ。印刷から電報まで、多くの新技術と同様、SNSは使い方次第で善にも悪にもなる。批判的な人は、FBは中毒性が高く民主主義を損なうものであり、利用者が目にする内容を決める権限が大きすぎるといった有害性を声高に指摘する。一部の大手IT企業経営者は、FBを「(広く社会に害を及ぼす)たばこの大手」のようだと呼ぶし、政治家は規制の導入が必要だと公然と語るようになっている。

FBは、18年10~12月期決算で過去最高の利益を記録したが、米国人の利用時間はもう増えそうにない。利用者らが以前のように楽しめるのか疑問に思うようになっているからだ。米調査会社ピボタル・リサーチによると、米国の成人はネットに費やす時間の11.5%をFBに使うが、2年前から20%減った。インスタグラムの利用時間は増えているが、FBの利用低下を補うほどではない。SNSが自分たちに良いものなのか疑問が高まる中、FBの米国での影響力は弱まるかもしれない。FBとの付き合いは続くが、恋愛期間は終わったということだ。

(c)2019 The Economist Newspaper Limited. February 2, 2019 All rights reserved.

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