危険タックル「反則指示なし」 警視庁、大学と異なる捜査結果

2019/2/5 16:15
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日本大アメリカンフットボール部の危険タックル問題で、警視庁は5日、内田正人元監督(63)と井上奨元コーチ(30)について、タックルをした選手(20)に、相手を負傷させる意図の指示をした事実は認められないとの捜査結果を東京地検立川支部に送付した。大きな注目を集めた問題の刑事事件化は見送られる見通しとなった。

東京都内で行われた定期戦で、パスを投げ終えた関学大選手に背後からタックルする日大の選手(関学大提供・一部画像処理をしています)=共同

「やりましたね」「おう」。部員の一人は日大の第三者委員会の聞き取り調査に対し、元コーチと元監督の間にこんなやりとりがあったと証言。第三者委はこうした証言を基に反則行為は2人の指示だったと認定した。

だが、警視庁捜査1課による捜査で浮かび上がった現場の状況は証言を裏付けるものではなかった。関係者約200人から事情聴取し、試合の映像を解析。元コーチと元監督のやり取りを証言した部員は会話を聞き取れるほど近くにいなかったことが分かった。元コーチは元監督に声をかけておらず、元監督が「おう」とうなずく様子も確認できなかったという。

「勘違いした」「聞き間違えた」。部員らは警視庁の調べにこう説明したという。

選手が元コーチから言われた「つぶせ」との言葉も、警視庁は「強いタックル」などの意味で一般的に使われることから負傷行為を意図したものとは言えないと判断した。ただ「つぶせ」の指示は元コーチの意図を超えて選手に伝わったとみられる。「つぶしに行くんで使ってください、と監督に言いに行け」。試合前の元コーチのこの発言を選手は「ケガをさせろ」という意味だと理解。

「やる気が足りない」と実戦練習から外され、当日のメンバー表にも名前はなく「ここでやらなければ後がない」と考えた選手は、その通りの言葉を元監督に伝えた。試合の1プレー目、パスを投じた後で無防備になった関学大選手に背後から激しくタックル。計3回の反則で退場となった。

現役部員は「何も考えずに指導者の言いなりになる雰囲気だった。同じ立場だったら自分もやっていた」と明かす。

スポーツ法学に詳しい辻口信良弁護士は「選手が元監督らの指示に『それはどういう意味ですか』と意図を確かめられない雰囲気があったのは事実だろう。手段を選ばない勝利至上主義が組織を非民主的で上意下達の体質にし、選手を追い込んでしまったのではないか」と指摘する。

日大は大学本部に運動部活動を所管する「競技スポーツ部」を新設。学長のガバナンスが直接及ぶようにすることを柱とした改革を進める。大学運営に携わる理事らが監督やコーチなどを兼務しないことも決めた。

2018年度の公式試合の出場資格停止処分を受けた日大アメフト部は新監督を迎え、反則をした選手も含め、19年度から公式試合に復帰する。タックルを受けた関学の選手は大学日本一を決める18年12月の「甲子園ボウル」で活躍し、MVPを獲得した。元監督は解雇無効の地位確認を求めて東京地裁に提訴。反則を指示した事実は存在しないなどとして「懲戒解雇には合理的な理由がない」と主張している。

◇  ◇

日大悪質タックル問題 悪質タックルは2018年5月6日、東京都調布市で行われた日本大と関西学院大の定期戦で発生。日大の守備選手(20)がパスを投げ終えて無防備な状態だった関学大のクオーターバック(QB)の選手に背後からタックルし、約4週間のけがを負わせた。関学大の選手側は、傷害容疑で内田正人元監督(63)と井上奨元コーチ(30)を警視庁に告訴した。
 日大の選手は記者会見を開き、2人から「けがをさせろ」という趣旨の指示を受けたと説明。一方、2人は意図的な反則の指示を否定した。
 経緯を調査した日大の第三者委員会は当事者や関係者への聞き取りなどから、選手の証言は信用性が高いと総合的に判断し、指示を認定。2人を懲戒解雇処分とした。
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