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民意問う難しさ浮き彫りに 沖縄県民投票、混乱の3カ月

沖縄の選択

米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設を巡る県民投票は、告示まで2週間を切るタイミングでようやく構図が固まった。「賛成」「反対」の選択肢に「どちらでもない」を加える異例の修正で全県実施にこぎつけた。この3カ月間の県内の混乱は、複雑に絡む民意を問う難しさを浮き彫りにした。

「全ての会派から賛意が示され、賛成多数で可決されたことは意義深い」。玉城デニー知事は1月29日、2択から3択にする改正条例が成立すると安堵の表情をみせた。

沖縄県議会で県民投票改正条例案が可決し、記者団の取材に応じる玉城デニー知事(1月29日午後、沖縄県庁)=共同

2月14日告示、同24日投開票の日程は変えずに実施する。

■怒号飛び交う市議会

2択の条例が公布されたのは2018年10月末。投票事務の関連予算の審議が県内全41市町村で始まった。夜までもつれたり、傍聴席から怒号が飛び交ったりした議会もあった。宜野湾、沖縄、うるま、石垣、宮古島の5市が不参加を決めた。

5つの市役所には苦情が殺到した。市長を提訴する運動や「ハンガーストライキ」を始める大学院生も。だが5市は態度を変えず、県民の3割が投票できない事態が現実味を帯びた。

5市はいずれも自民系の首長だ。反発した点は主に2つ。1つは辺野古移設に伴い普天間が返還されるという点が条例にはほとんど書かれていないこと。もうひとつは単純な2択という手法だ。

辺野古移設の出発点は世界一危険といわれる普天間の返還だ。国土面積の約0.6%しかない沖縄に約70.3%の在日米軍専用施設が集中する。「代替施設は県外に」と県民ほとんどが思う。

護岸造成が進む沖縄県名護市辺野古沿岸部(1月28日)=共同

だが本土で受け入れてくれる地域は事実上ない。現状では「辺野古やむなし」が保守層の考えだ。もろ手を挙げて「賛成」の県民はほぼいない。本来の政策目的を不明確にしたまま2択を迫る手法が反感を買った。

同志社大大学院の新川達郎教授(行政学)は「少数意見は民主主義社会には必ずある。県民の声をどこまで把握して県民投票に進もうとしたのか検証の必要がある」と話す。

■公明が調整役に

玉城氏ら移設反対派としては、直近2回の知事選で反対民意を示したにもかかわらず工事を進める政府に対し、県民投票で明確な民意を示し事態打開につなげる狙いがあった。玉城氏は米ホワイトハウスへのウェブ上の請願署名に賛同する。移設阻止にむけ、世論喚起が玉城氏の戦略の柱だ。

沖縄県民投票で辺野古移設反対の票を投じるよう呼び掛ける人たち(1月26日、名護市辺野古)=共同

県と5市の溝を埋めようと動いたのが公明党だ。公明県本部は辺野古反対の立場で党本部とねじれ関係にある。支持者にも5市で投票できない状況に批判があり、県議会議長に調整を働きかけた。議長は1月24日、3択案を各党に提示した。

自民も各会派代表者による会合で歩み寄った。4月の衆院3区補欠選挙などで公明の支持を得たい思惑もあった。この間、玉城氏も与党県議らに「私も全力で汗をかきます」と調整を頼んだ。"穴あき"の県民投票では正当性が問われるのは確実だからだ。

■県議会の全会一致ならず

迎えた29日の本会議。自民は3択案の「全会一致」を約束していたが、分裂。宜野湾選出の県議が反対、名護選出の県議は退席した。「辺野古区民を思うと宜野湾市民でもこの3択では投票できない」(反対県議)

5市にも不満はくすぶる。宜野湾市の松川正則市長は「県民投票が普天間の固定化につながる懸念は残っている」と苦言を呈する。自公は3択となった県民投票にも静観して臨む。

「どちらでもない」が加わった影響に注目が集まる。「賛成」の一部が流れるのではないかとの見方は少なくない。移設反対派は「『反対』を投じる人はもともと固い」(県議)と話す。

県は15年度の県民意識調査で辺野古移設の賛否を5択で聞いている。「賛成」「どちらかといえば賛成」が計26%、「反対」「どちらかといえば反対」が計58%、「わからない」が15%だった。

一定層が「どちらでもない」に集まった場合、民意をどうとらえるかで論争が再燃する可能性もある。(酒井恒平)

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