米、INF条約破棄を正式通告「国益守る」
【ワシントン=中村亮】ポンペオ米国務長官は2日の声明で、中距離核戦力(INF)廃棄条約を破棄するとロシアに同日付で通告したと明らかにした。ポンペオ氏は「残念なことにロシアの重大な違反によって条約はもはや有効ではない」とロシアを非難した。破棄通告は「米国の国益を守るためだ」と強調した。
米国は同日、条約の義務履行を停止した。条約は6カ月後に失効する。ポンペオ氏は「他国が義務を無視する場合に米国が見過ごすことはない」と強調。「米国は有効性のある軍縮を推進する」と説明し、ロシアと対話を継続する考えも示した。ただロシアも2日に条約を破棄する意向を表明しており、米ロの歩み寄りの機運は乏しい。
INF廃棄条約は、射程500~5500キロメートルの地上配備型の弾道ミサイルや巡航ミサイルの開発や配備を禁じている。1987年に当時のレーガン米大統領と旧ソ連のゴルバチョフ共産党書記長が調印し、翌年に発効した。米ソ双方の中距離ミサイルの配備で高まった緊張を和らげて冷戦終結に貢献した。
最近は中国や北朝鮮、イランなどのミサイル開発が進み、米ロだけを対象に地上配備型の中距離ミサイルの配備を禁じる条約は時代遅れとの声が強まっていた。今後は覇権争いを繰り広げる米中ロの軍拡競争が激しくなる恐れがある。