2019年5月27日(月)

白熱伝えるリズムと間 地方競馬の場内実況(もっと関西)
ここに技あり

関西タイムライン
コラム(地域)
2019/2/4 11:30
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迫力あるレースに華を添える競馬の実況。スポーツの実況はテレビやラジオのイメージが強いが、競馬場では場内の観客向けに実況が流れる。

近畿地方に2つしかない地方競馬の競馬場、園田競馬場(兵庫県尼崎市)と姫路競馬場(同県姫路市)では3人のアナウンサーが場内実況を担当する。名調子がファンをひき付ける実況歴60年以上の吉田勝彦さん(81)、安定感抜群の竹之上次男さん(48)、若さあふれる三宅きみひとさん(38)と三者三様の実況を楽しめる。それぞれ実況のタイプは異なるが、3人が共通して大事にするのは「リズム、テンポ、間」(吉田さん)だ。

わずか1~2分ほどのレース実況には、かなり多くの情報が入る。スタートしてからは先行争いを描写。その後、馬名を連ねて隊列を伝え、騎手の名などを入れながら、勝負どころでは人気馬が動くタイミング、最後の直線では白熱した攻防を表現する。

ゴール直前の競り合いで実況に力が入る

ゴール直前の競り合いで実況に力が入る

サッカーなどの実況もする三宅さんは「競馬の実況は他のスポーツより即時の描写が求められる。1分当たりに話す言葉の数も他と比べて多い」。わかりやすく、かつ聞きやすい実況にするには、良い「リズム」、早口になりすぎない「テンポ」、レースが動くタイミングでそれに言及する「間」が重要となる。

こうした特質を持つ競馬実況をするためには、発声や滑舌といったアナウンスの技術はもちろん、得意とする戦法など馬や騎手の特徴を理解する日々の努力が欠かせない。そのうえで「実際にマイクの前で話す量を増やすことが大事」と竹之上さんはいう。ファンがお金を賭ける競馬の実況では、着順や番号などは間違えられない。アナウンサーにも重圧がかかる。場数を踏み、舞台慣れすることも技量向上には必須なのだろう。

地上波のテレビ中継もあって華やかな中央競馬と比べ、地方競馬は規模が小さい。その分、実況アナウンサーと騎手、厩舎関係者との距離も近く、一緒に競馬場を盛り上げる「仕事仲間という意識が強い」と竹之上さん。日も昇らぬ早朝から何頭もの馬に稽古をつけ、レースに乗り、翌日もまた早起きする――。ハードな毎日を送りながら、ファンを楽しませる騎手の姿を間近で見ているからこそ「記録や功績を温かく伝える」(竹之上さん)実況を心がける。

ただ、3人とも満足な実況ができたのは数えるほどで、反省と後悔の連続だと口をそろえる。「なぜあの時、この言葉しか出なかったのか、ここは言い過ぎたのでは……」。60年以上のキャリアを持つ吉田さんでもこうした思いが「ずっとある」と話す。それだけ奥が深いのだろう。

文 大阪・運動担当 関根慶太郎

写真 目良友樹

カメラマンひとこと 寒空の下、分厚い防寒着姿でレースを追う実況者。勝敗を左右する騎手の駆け引きは見逃せない。双眼鏡をのぞき一挙手一投足に目を光らせる。「外から来た!」。熱い声が響くタイミングがシャッターチャンスだ。狭いブースで、実況の様子と最後の直線を一緒に写そうと、三宅さんの斜め後ろから手を伸ばし、ノーファインダーで撮った。

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