2019年9月23日(月)

自治体新電力が関西で苦境 関電値下げで

2019/2/4 6:30
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エネルギーの地産地消や地域活性化を目的に自治体が主導して設立した地域新電力が関西で苦境に陥っている。原子力発電所を再稼働させた関西電力が大口向けの電力価格を大幅に下げて攻勢をかけており、競争力が失われているためだ。2019年度には大手電力が安価な電気を供出する新市場が開設されるが、新電力の挽回につながるかどうかは未知数だ。

■行政訴訟に発展も

いこま市民パワーの電源として稼働している太陽光発電(奈良県生駒市)

いこま市民パワーの電源として稼働している太陽光発電(奈良県生駒市)

奈良県生駒市で、市と、新電力のいこま市民パワー(同市)との随意契約が物議を醸している。市が周辺市より割高な電気を負担しているとして一部の住民が18年11月に生駒市に対し監査請求を提出。市長に同社に支払った電気料金の全額約2億5000万円を市に返還するよう求めたのだ。請求自体は今年1月28日に退けられたが、今後行政訴訟に発展する可能性が出ている。

いこま市民パワーは17年に生駒市が大阪ガス南都銀行などのほか、市民団体も巻き込む形で設立した。市内の公共施設や企業に電力を供給し、収益を地域振興に役立てる狙いだった。電源は太陽光発電などの再生エネルギーで賄うほか、大ガスから仕入れている。

第三者機関「入札監視委員会」は17年11月、いこま市民パワーと公共施設の電力で随意契約しようとする市に対して注文を出していた。契約自体は認めつつも「電力料金が市場価格を上回る場合は速やかに市場価格以下に」「不可能な場合は契約を解除し、一般競争入札も選択肢とせよ」としていた。

しかし市は同年12月、そのまま随意契約に踏み切った。関電は18年に入り大和郡山市など周辺の自治体の公共施設向け電力を大幅に割安な料金で落札。生駒市が負担する電気料金は周辺市よりもかなり割高になっている。市は18年12月の契約更新時にも価格を変更しなかった。

小紫雅史市長は「地域新電力は経営体力に乏しく、発足当初は市と随意契約を結ぶ場合がほとんどだ。エネルギーや経済の地産地消の効果などを考えれば地域新電力の意義は大きい」としつつも、「将来的には競争入札への切り替えを検討している」と話す。

■関電が企業向けに安値攻勢

関電は大飯原発の再稼働で経営体力を回復している(福井県おおい町)

関電は大飯原発の再稼働で経営体力を回復している(福井県おおい町)

大手の値下げ攻勢は西日本で顕著だ。日本経済新聞社が入手した関西地区での17年度の官公庁向け落札電源単価(1キロワット時)は195件。その平均は新電力が11・4円であるのに対し、関電は8・7円と2・7円安い。関電は小売り自由化で家庭向けで顧客流出に歯止めがかからないなか、安値攻勢で企業の顧客を奪い返そうとしている。

大阪府泉佐野市などが出資する泉佐野電力(同市)も大手の攻勢にあって競争力がそがれている。18年に工場など民間向けの解約が9件相次ぎ、月の売り上げは5%程度減った。原発稼働後に関電の電力料金が大幅に下がり、一度は奪った顧客を奪い返されたのだ。

関西ほど激しくはないものの、原発が稼働している九州でも事情は同じだ。福岡県みやま市などが出資するみやまスマートエネルギー(同市)の磯部達社長は「特に公共施設向けで九州電力が大幅な値下げ攻勢をかけていてとても太刀打ちできない。今のままでは新規顧客の獲得が厳しくなる」と語る。

■「象とねずみのけんか」

相次ぐ地域新電力の苦境についてある新電力関係者は「象とねずみがけんかするようなもので不公平だ」と憤る。安価な電力を作り出す石炭火力、大型水力や原子力など基幹電源を独占している大手との顧客獲得競争にはそもそも無理があるという主張だ。

関電は「公共施設の入札については募集要項に沿って応札している。(電力価格は)社内の経営合理化など経営努力に取り組んだ結果だ」と反論する。

国もこの状況を憂慮して、競争環境の是正策を講じた。19年度内に始まる「ベースロード市場」の開設だ。基幹電源で作り出された割安な電力を市場に一定の割合で供出するよう求め、市場取引によって価格を決める。だが新電力は「すべての基幹電源が供出されず限定的だ。大手有利の状況は変わらない」と不満を漏らす。

京都大学の諸富徹教授は「発電と小売部門を完全に切り離すことが必要だ。その上で欧州のように基幹電源をすべて市場に供出して市場の取引で価格が決まるような仕組みを構築すべきだ」と指摘している。

(川口健史)

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