EPAでフランスワインお得に 今選ぶコンビニの赤は
エンジョイ・ワイン(8)

日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)が発足し、値下げ表明が相次ぐ欧州ワイン。気軽に飲める低価格帯のワインは関税撤廃の恩恵が大きく、注目されている。今回は大手コンビニエンスストアで購入できる1000円前後のフランス産赤ワインを比較試飲し、ランク付けしてみた。結果は意外なものとなった。
評価の方法は昨年12月の記事(「ヨーカドー」のお手ごろスパークリングをランキング)とほぼ同じ。セブン・イレブン、ローソン、ファミリーマートの各店舗から計8本を選び、シニアソムリエまたはシニアワインエキスパートの資格を持つワイン愛好家5人がブラインド・テイスティング(銘柄を伏せての試飲)し、5点満点で採点した。
以下、結果を1位から順に紹介する。点数は5人の平均。価格は1月15日時点の税込み価格。

8本の中で最安値だったが、5人のうち3人が5点を付けるなど、評価は断トツで高かった。シニアソムリエの市川朋依さんは「酸もタンニン(渋味)もなめらかで、エレガントな味わい」と評価。シニアワインエキスパートの滝沢一恵さんは「熟成香や複雑な香りがあり、とてもおいしい」とやはり高得点を付けた。
赤ワインの代表品種カベルネ・ソーヴィニヨンとメルロをブレンドした典型的なボルドーワインだが、ラベルに「ボトリング:メルシャン株式会社」と表記されている。ワインを、ボトルではなく大きな容器に入れて輸入し国内で瓶詰めした、いわゆる「バルクワイン」だ。バルクワインは「安もの」とのイメージもあるだけに、このワインが8本の中で唯一バルクワインとわかった瞬間、全員から驚きの声が上がった。
メルシャンによると、セブン&アイグループと共同開発した商品で、フランスからの海上輸送に2万4000リットル入りのポリエチレン製フレキシタンクを使用。フレキシタンクには酸化防止機能もあり、こうした輸送技術や醸造技術の進化で、バルクワインの品質はどんどん向上しているようだ。

これもボルドーワイン。メルロが80%使われており、品種特有の口当たりの柔らかさが出ている。ブログで専門的なワイン情報を発信しているシニアワインエキスパートの鈴木明人さんは「みずみずしくてエレガント」と一番高い4.5点を付けた。

メルロ、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フランをブレンドしたボルドーワイン。「タンニンと酸がしっかり」(シニアワインエキスパートの齋藤稔さん)した、いかにも牛肉のステーキなど肉料理と合いそうなワインで、愛好家の受けは総じてよかった。
ところが、ラベルに「渋味が少なく飲みやすい」と書かれているのを発見。ふだんあまりワインを飲まない人はタンニンが苦手な人も多いことから、「ラベルを参考に買ってがっかりする人もいるのではないか」と心配する声も出た。
メルロを主体にカベルネ・フランとカベルネ・ソーヴィニヨンをブレンドしたボルドーワイン。「しっかりとした果実味があるのでタンニンがあまり目立たない」(滝沢さん)など、果実味を特徴として挙げる人が多かった。シニアソムリエで、ワインスクールの講師もしている内田一樹さんは「タンニンは脂身と合わさるとうまみを感じるので、脂身の多い肉料理と合わせると互いの味がより引き立つ」と合わせる料理を提案した。
カベルネ・ソーヴィニヨンとシラーをブレンドした南フランスのワイン。味わいのタイプとしては辛口に入るが、温暖な場所で育ったシラーに由来すると思われるリキュールのような甘みが強く、評価は総じて辛口だった。ただ、「甘めが好き」という齋藤さんは4.5点と高評価。また、「すき焼きと合う」(滝沢さん)など、しょうゆやみりんを使った甘辛い味の和食と合わせるなら、お薦めとの意見も多かった。

メルロとカベルネ・ソーヴィニヨンから造ったボルドーワイン。内田さんは「タンニンが柔らかで口当たりがよく、強めの酸がさわやかさを演出している。酸味の効いたトマト系の料理と合うのではないか」とコメント。逆に市川さんは「果実味が控えめで、あまり好みではない」と低評価。他の人も含め、女性と男性とで評価が分かれた印象だ。

メルロとカベルネ・ソーヴィニヨンのブレンド。「酸のレベルが高く、しっかりとしたタンニンが味わい全体を引き締めている、クラシックなボルドースタイル」(鈴木さん)。一方、「果実の甘みがあまり感じられない」(内田さん、市川さん)との感想もあった。チリワインやカリフォルニアワインのような果実味の強い赤ワインが好みという人には向かないかもしれない。
南フランス産。これも「飲みやすい」「ふくよかな果実味」などの高い評価と、「水っぽい」「人工的な味がする」といった低い評価に分かれた。
テイスティングを通じて分かったのは、主要コンビニで、1000円前後で売っているフランス産赤ワインは総じてしっかりした味わいであることだ。1位のメゾン・デュアールの例が示すように、技術の進化でコンビニワインのコストパフォーマンスは確実に上がっているようだ。
また、コンビニは売り場が狭いためどうしても品ぞろえが少ないが、その割には「味わいがバラエティーに富んでいる」(鈴木さん)という発見もあった。
さらに、高順位のワインはほぼ全員が高い評価だったのに対し、順位の低いワインは評価が割れる傾向もはっきりした。ワインを買う際には自分の好みに合うか確認することが大切だが、ラベルの説明や陳列棚の店頭販促(POP)の情報は正確さを欠いたり、情報量が不十分だったりする、という問題点も明らかになった。コンビニでワインを買う時にはこのランキングを参考にしてほしい。
猪瀬聖(ライター)
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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