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「神薬」ブームの次の一手 小林製薬、現地販売で中国深掘り

小林製薬は2020年に中国で医薬品の製造販売を始める。訪日客向けが収益のけん引役だが、中国人に人気の高い消炎鎮痛剤「アンメルツ」などは医薬品のため、外資規制で現地販売が難しいのが課題だった。18年に中国の医薬品メーカーを買収。現地で製造販売する体制を整え、帰国後消費も取り込む。

31日発表した18年12月期の訪日客向け売上高は推計107億円と、17年12月期から4割強も伸びた。訪日客需要が寄与し、連結売上高が7%増の1674億円、連結純利益が14%増の180億円となった。

同日の決算説明会で小林章浩社長は「訪日客需要の次を見据え、海外展開にとくに注力していく」と話し、20年からアンメルツを中国で販売すると表明した。アンメルツのほかの販売品目は未定だが、中国人訪日客に人気の高い医薬品を検討中だ。

小林製薬はカイロや冷却シート「熱さまシート」など医薬品以外の製品は既に現地で製造販売している。同社によると、アンメルツなど医薬品販売は外資への規制があり、日本の会社が現地でイチから製造販売する許可を行政当局から得るまでに10年程度もかかるという。

このため、18年6月に現地で軟こうなどを製造する医薬品メーカー「江蘇中丹製薬」を買収した。現地に足場を持つことで、行政当局からの許可を得るまでにかかる期間を短縮できる効果も見込んで買収したという。

小林製薬の18年12月期の中国での売上高はカイロや冷却シートなどの販売がけん引し、17年12月期比33%増の89億円に上った。新たに生産するアンメルツなどの医薬品もカイロなどと同じ販路を活用し、現地の卸を通じてドラッグストアなどの小売店で販売する。

効果がひと目で分かる商品パッケージなどで訴求する日本式のマーケティングを中国でも展開する。医薬品だけで10年後に中国で年間40億円の売り上げを目指す。

数年前中国のポータルサイトで広まった、日本に行ったら買うべき「12の神薬」のリストに同社の商品が5点も入った。世界的にみても類似の医薬品がないのが人気の秘訣となっている「神薬」のブームで「小林(シャオリン)」の社名が中国人に浸透。最近は売れる商品のすそ野が芳香剤や洗剤などの日用品にも拡大する。爆買いが終息したにもかかわらず、売り上げは伸び続けている。

ただ、同社の神薬5品のうち熱さまシートを除く4品は現地の製造販売だけではなく、輸出や越境EC(電子商取引)での販売も原則できない。現状では「中国に帰国後は、正規のルートで(熱さまシートを除く)当社製の神薬を買う手段はなかった」(同社)。

訪日客需要は「日本製」だから支持されている面があったが、「(最近は)メードインジャパンというよりも、小林製薬というブランドの認知が進んだ」(同社)という。こうした中国人の消費者心理の変化をつかみ、今後は現地での製造販売で帰国後のリピート需要を掘り起こす。

(斎藤毬子)

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