FBI、アップルの中国人元社員を逮捕 自動運転の機密を不正入手か
【シリコンバレー=白石武志】米アップルが持つ自動運転技術の機密情報を盗んだとして、米連邦捜査局(FBI)が中国国籍の同社元社員を逮捕・起訴していたことが30日、分かった。中国の競合企業に情報を渡そうとしていた疑いがもたれている。先端技術を巡る米中間の緊張を高める可能性がある。
FBIが公開した起訴資料によると、逮捕された元社員は2018年6月にアップルに入社し、自動運転車のハードウエア開発者として勤務していた。19年1月に別の従業員の知らせを受けて、アップルの情報セキュリティー担当者らが個人所有のパソコンや携帯電話を調べたところ、自動運転車の配線など同社の知的財産を含む2000を超えるファイルが見つかった。
FBIは中国を拠点とする自動運転技術の開発会社など複数の企業の求人に元社員が応募していたとみている。元社員は中国への渡航予定日の直前に逮捕され、すでに釈放された。元社員はアップルから解雇された場合の「保険」として機密情報をコピーしたと主張し、容疑を否認しているもようだ。30日夜の段階でアップルからのコメントは得られていない。
自動運転技術を巡っては18年7月にも中国人のアップル元社員が機密情報を盗んだ疑いで米カリフォルニア州の空港から出国する直前にFBIに逮捕された。この元社員は中国の広州に本社を置く電気自動車(EV)メーカーの小鵬汽車への転職を予定していたとされる。
アップルは独自に自動運転技術の開発を進めており、約5000人の従業員が関係していることが明らかになっている。専門的な知識を持つ人材が限られる自動運転分野では国境を越えた技術者の争奪戦が激しいとされ、トランプ米政権は中国による知的財産権の侵害に警戒感を強めている。