スペシャル

フォローする

100球制限の是非は? 新潟県高野連が投じた一石
スポーツライター 丹羽政善

(2/3ページ)
2019/2/4 6:30
保存
共有
印刷
その他

その馬見塚先生によれば、障害発症のリスクを工学でいう「疲労」で考えると、次の5つの要因を考慮しなければならないとのこと。これを「投球障害リスクのペンタゴン」と命名している。

個体差 言い換えれば個人差ですが、180センチの選手と150センチの選手、骨の未熟な前思春期の選手と成長の終了した選手、柔軟性の高い選手と低い選手、既往歴のある選手とない選手では、同じ100球の投球でも肩や肘への影響にも差が出ます。この個体差を評価する方法として成長速度曲線の作成をはじめとする個人の評価を行い、それぞれにトレーニング法を設定するのがよいでしょう。

投球動作 これはフォームのことですが、特に肩、肘に負担が大きいコッキングフェーズ(グラブから球が離れ、踏み込んだ足が完全に接地するまで)での投球腕の動かし方や体幹との関係などによって、負担が異なります。けがをしにくいフォームとけがをしやすいフォームがあるということです。この投球動作を改善させるためには、「運動学習」という理論で「理想とする運動技術の把握」「真似(まね)ぶ」「コツやカンを習う」「量質転化」というステップを踏む必要がありますので、投球数を減らすという考えだけではリスクは減りません。

コンディショニング 疲労度や睡眠状態、栄養状態、柔軟性の状態など内的なコンディショニングに加え、気象条件やマウンドの状況などの外的なコンディショニングも考慮する必要があり、疲労した状態での投球は100球未満でもリスク要因となります。

投球強度 投球数を50球以内と制限しているにもかかわらず、肩や肘を痛めて選手がやってきます。多くの選手に共通しているのは「球数を減らす分、なるべく全力で投げている」ということです。工学分野では疲労を証明する「S-N曲線」という専門用語がありますが、これは投球数と投球強度の関係を説明するのに有効です。数は必ず強さを考慮しなければならないことを示しています。最近の大リーグの研究でも球速が速い選手ほど手術に至っていることが示されています。全力での遠投なども、選手の成熟度などを考慮して許容しなければなりません。

投球数 投球制限をすれば故障予防に有効な一方、外来には投球数を制限しているにもかかわらず肩や肘を壊して選手がきます。これは前述の投球強度や投球動作、コンディショニングの影響を考慮しなければならないことを示しています。実際の指導では投球数を増やすために投球強度を落としてもらうことやコンディショニングがよい状態で行うことなど、ほかの4つの要素のバランスを考えることを選手に伝えています。

なお、「投球障害リスクのペンタゴン」を具体的に図で示すと、以下のようになる。高校生の実例と長期選手育成という2つの例を示してもらった。

図1の解説 高校生投手の動作習得期にペンタゴンを説明した一例。この投手は投球動作に課題があり(80点)、技術力向上のため多くの投球数(100点)を必要とすることが見込まれた。このため投球強度を低めに設定し(60点)、コンディショニングもあまり疲労のない程度に設定した(60点)。短期的には個体差は変わらない(80点)とした。
 次に投球動作が改善してきたため(60点)、実戦練習を行うことにした(実戦練習期)。実戦では投球数を少し減らし(80点)、投球強度を上げ(80点)、試合が近いためコンディショニングもやや悪化したと考える(80点)。さらに実際の試合では(試合期)、全力投球も必要となるため(100点)、投球数を減らし(60点)、コンディショニングは変わらず(80点)、さらに投球動作は改善していると評価した(60点)。
 逆に公式戦で勝ち進んで決勝戦までいくと、コンディショニングは悪化し(80点)、投球動作も崩れがちとなる(80点)。だが決勝戦では投球強度を落とすわけにもいかないため(100点)、結果として投球数を少なくした(40点)。
  • 前へ
  • 1
  • 2
  • 3
  • 次へ

日経電子版が最長2月末まで無料!
初割は1/24締切!無料期間中の解約OK!

保存
共有
印刷
その他

電子版トップスポーツトップ

スペシャル 一覧

フォローする
2018年夏の全国高校野球選手権大会決勝戦で力投する金足農の吉田輝星=共同共同

 昨年12月下旬、新潟県高校野球連盟が2019年の春季県大会限定ながら、1人の投手が1試合で投げられる球数を100球に制限すると発表した。これに対して日本高校野球連盟は、否定的とされる。2月20日の理 …続き (2019/2/4)

中谷さんは「意図と根拠のある、納得できる1球を」と説く

 ドラフト1位で阪神に入団し、楽天、巨人でも捕手としてプレーした元プロ野球選手の中谷仁さん(38)が今年4月、母校である智弁和歌山高野球部の専任コーチに就任した。自身が主将を務めて甲子園で優勝した19 …続き (2017/6/24)

浮田監督は米マイナーリーグなどでプレーし、球団での通訳やイチローらを取材した経験を持つ(浮田監督提供)

 いったいどんな野球をするのか。
 夏の全国高校野球選手権岡山大会の1回戦を突破し、16日に優勝候補の創志学園との2回戦に臨む岡山県立津山高校野球部の浮田圭一郎監督の采配が、興味深い。
 浮田監督は日本の …続き (2016/7/16)

ハイライト・スポーツ

[PR]