マイクロソフト、「反アマゾン」で伸ばすクラウド
【シアトル=佐藤浩実】米マイクロソフトが30日発表した2018年10~12月期の売上高は前年同期比12%増の324億7100万ドル(約3兆5400億円)だった。基本ソフト(OS)「ウィンドウズ」の販売減を補ったのはクラウド経由でデータ分析の機能などを提供するサービスだ。米アマゾン・ドット・コムの躍進を恐れる小売業を味方につけ、8割近い伸びを守った。

「あらゆる産業の代表的な企業とのパートナーシップが、クラウド事業の力強い結果につながった」。30日に開いた電話会見で、サティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)はクラウドの継続的な成長を誇った。
CPU(中央演算処理装置)不足の余波でパソコンメーカー向けの「ウィンドウズ」の販売が5%減り全体の売上高は市場予想に届かなかったが、ネット経由でデータ分析などの機能を提供する「アズール」(76%増収)をはじめ、クラウド関連事業は軒並み2けたの伸びを維持した。税制改正の影響で前年は赤字だった全社の最終損益も84億2千万ドルの黒字を確保した。
ナデラ氏が就任した14年2月4日からおよそ5年。ウィンドウズの会社というMSの印象は一変し、アズールを含む「インテリジェントクラウド」部門の売り上げ構成比は全体の約3割に達した。業務ソフトをクラウド経由で提供する「オフィス365」なども含めた「サービス」でみると比率は約5割にのぼる。
アズールはこれまで企業が自前で用意していたサーバーをMSがまとめて整備し、データの保管や人工知能(AI)を使う解析機能などとともに提供するものだ。同様のサービスで先頭を走るのはアマゾンの子会社、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)。AWSを猛追するためにMSが推し進めるのが「反アマゾン」の同志を募る戦略だ。
今月15日、MSは米ドラッグストア大手のウォルグリーン・ブーツ・アライアンスとの7年にわたる戦略的協業を発表した。決算会見でもナデラ氏が協業について説明。アズールの分析機能などを使い、健康・医療分野の新しいサービスを作り上げるという。1月初旬には米食品スーパーのクローガーと、昨年7月には米ウォルマートとの長期的なパートナーシップも結んだ。
全米小売業協会(NRF)がまとめた米小売業の売上高ランキング(17年実績)によると、ウォルグリーン、クローガー、ウォルマートの3社は6位、2位、1位。3位につけたアマゾンによって「ディスラプト(破壊)されるのでは」との警戒感が「敵の敵」であるMSとの協業を後押ししていることは想像に難くない。ナデラ氏も、アマゾンを名指しはしなかったものの「我々の競争相手はときに顧客のビジネスと競合してしまうが、僕らであれば信頼関係を築ける」と強調する。
調査会社カナリスによれば、18年7~9月期のクラウドの世界シェアはAWSが32%、MSが17%だった。ナデラ氏の就任時はAWSの9分の1ほどしか事業規模がなかったことを思えば大きな進歩だが、まだ背中は遠い。世界景気の減速など企業の投資意欲を鈍らせる外的要因も広がるなかで、反アマゾンの同志に限らずどこまで味方を増やしていけるかが今後の成長を左右する。
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