2019年4月22日(月)

曙ブレーキ、ADR申請 CASEで綻ぶケイレツ

自動車・機械
2019/1/30 22:32
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曙ブレーキ工業は30日、私的整理の一つである事業再生ADR(裁判以外の紛争解決)を使って再建を目指すと発表した。自動車各社は自動運転車やカーシェアリングなどにしのぎを削る一方、次世代車の開発原資を絞り出そうと既存の部品メーカーへは厳しい原価削減を迫る。日本車を長く支えてきた既存のサプライチェーン(供給網)がきしみ始めている。

1月初め、ある地方銀行が債務の返済を曙ブレーキに強く迫ってきたのが引き金だった。

曙ブレーキは債務超過でもなく、資金繰りに窮しているわけでもない。しかし、ゼロ金利政策で追い込まれている地銀各行にとって、債務返済の延長を訴える曙ブレーキの要求はのめる話ではなかった。取引のある約30の地銀が足並みをそろえて債権回収を迫れば曙ブレーキの資金繰りは一気に悪化してしまう。この事態を避けるため、曙ブレーキはメインバンクと協議してADRを申請することを決めた。

「つながる」「自動運転」「シェアリング」「電動化」の英語の頭文字をとって表現される「CASE」への対応に国内の自動車各社は大きくかじを切る。米グーグルや自動運転用の半導体に強い米エヌビディアなどとの提携や、カーシェア大手の米ウーバーテクノロジーズなどに対抗するためのIT(情報技術)人材の獲得に躍起だ。

その陰で沈むのが、ガソリン車を中心にして構築された既存の部品メーカーだ。

曙ブレーキは部品工業会会長やトヨタ自動車の部品協力会「協豊会」の会長企業を2度務めるなど、日本の自動車部品業界の顔的存在だ。海外展開も早かったが、2009年に独部品大手ボッシュの米国工場を買収したのがあだになった。リーマン・ショックによる受注の急減や、その後の急速な回復に対応できず、グループの足を引っ張った。

曙ブレーキの取引先は米ゼネラル・モーターズ(GM)を筆頭に、日産自動車、トヨタ、米フォード・モーターなど多岐にわたる。ブレーキ部品は品質が悪いと振動や鳴き音が出るなど車の性能を大きく左右する。その品質を見込んで、かつてボッシュなどが曙ブレーキの買収を仕掛けたことがあるが、トヨタなど国内の自動車メーカーが阻止した経緯もある。

しかし、最近では人材の受け入れなどにとどまり、国内の完成車メーカーからの「経営指導や技術支援などを受ける機会はめっきり減った」(協豊会の会員企業)という。

曙ブレーキ以外でも、既存のサプライヤーと完成車メーカーとのすきま風は最近目立っている。

鉄鋼部品では新日鉄住金がトヨタをはじめとする国内自動車メーカーと特殊鋼の取引価格を巡り対立している。「鋼材の値上がりを無視した価格で納入を求めている」(中村真一・新日鉄住金副社長)ことから、中小の金属加工メーカーの経営を圧迫、トヨタなどに取引の見直しを求めている。

エアバッグ大手のタカタもリコール(回収・無償修理)への対応や損失負担を巡り大株主のホンダをはじめ、トヨタや日産などの足並みがそろわず、1兆円もの負債を抱え経営破綻した。

今後、曙ブレーキは「トヨタを軸に投資ファンドも加え、増資の引き受けなどの支援を求めていく」(幹部)方針だ。3回の債権者集会を開き、増資計画を盛り込んだ事業再生案を6月までにまとめる予定だ。複数の企業からの出資を受けて安定した財政基盤を確保したい考えだが、トヨタがどう判断するか、焦点となる。

「続発する品質不正問題も監視役である自動車メーカーと部品メーカーとの溝が広がっているという点で根っこは同じだ」と指摘する声は多い。かつて日本の自動車は"ケイレツ"に象徴される自動車メーカーと部品メーカーの固い結束で良品廉価の車を造り出し、世界市場を席巻した。

しかし、欧米勢が先導する「CASE」の波に追いつこうとするあまり、既存のサプライチェーンとの関係は希薄になり、足元が揺らぎ始めた。CASE時代の調達網をどう見直すか。国内の自動車メーカーの対応が問われている。

(藤本秀文、浅山亮)

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