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大坂なおみ、テニス界に久々のスーパースター誕生

MIRAIテニスアカデミー代表 辻野隆三

全豪オープンのテレビ解説で2週間ほどオーストラリア東部のメルボルンにいました。3年前、女子テニスの大坂なおみ(日清食品)の全豪初出場を解説していたときから、「(世界上位に)いつか出てくる」と思っていましたが、2018年全米オープンに続き四大大会を連覇して世界ランキング1位。これほど衝撃的な形でスーパースターに上りつめる選手は久しぶりですね。近年では04年ウィンブルドン選手権でセリーナ・ウィリアムズ(米国)を退け、17歳で四大大会を制したマリア・シャラポワ(ロシア)がスターダムに駆け上がっていったときと似ています。

大坂は左右に振られても粘り負けせず、エースも狙っていった=共同

「今後10年、女子テニスを背負う」

スターになるべくしてなる――。大坂はそういう選手です。3年前、国別対抗戦のフェド杯米国代表監督(当時)だったメアリー・ジョー・フェルナンデスさんが「米代表としてプレーしないか」と大坂を口説こうとしていた姿を目撃しました。それは大坂のオーラを感じていたからでしょう。今回、米テレビ局の解説をしていたジム・クーリエさん(米国、四大大会4勝)も、ウィンブルドン選手権決勝後のコート上のインタビュアーで知られるスー・バーカーさん(1976年全仏オープン女王)も大坂について、「この先10年間は女子テニス界を背負っていく選手だから」と当然のことのように話していました。

実は今回現地入りしたときは、大坂が決勝まで勝ち進むところまでイメージできませんでした。この先、2つ目の四大大会を制覇するまで2~3大会は苦労するだろうと思っていました。18年全米オープン女王としてプレッシャーを感じていたとまではいいませんが、緊張している様子でした。「スタートさえうまく滑り出せれば……」と思っていたところ、初戦をスムーズにストレート勝ち。さらに3回戦でベテランの謝淑薇(台湾)に逆転勝ちしてから、流れがよくなりましたね。ペトラ・クビトバ(チェコ)との決勝までを振り返ると、大坂の方がクビトバに比べ、粘り強い試合巧者と多く対戦したと思います。しかし、大坂は何が起きてもおかしくない試合を勝ち抜き、流れを引き寄せて決勝も勝つべくして勝った感じがします。

また、大会を通じて力を一段とつけたように思います。ライバルたちは大坂を相当研究してきていました。ところが左右に振られても、フィットネスを強化してきた大坂はボールに手が届くばかりか、逆に角度をつけて打ち返し、エースを決めてしまいます。それを避けようと、ライバルたちはコートの中央付近深くに強いボールを打ってきました。

大坂はそこから引きませんでした。ベースライン近くに立って、オープンスタンスのまま深くコーナーぎりぎりに返球していました。相当な技術がいりますが、大会が進むにつれてこのショットがとても上達していきました。今、このショットを打てる女子選手は大坂くらいでしょうか。リターンもよく、「ここでフリーポイント(エースなど相手がリターンできずにサービスだけで得たポイント)がほしい」というピンチではファーストサーブの確率も高く、対戦相手はたまらなかったと思います。

大坂はいずれはクレーコートも攻略するだろう(2018年6月の全仏オープン)=共同

どこかゲームを楽しんでいる

まだ21歳。ネットプレーや相手の意表を突くドロップショットなどの技術は今後、まだまだ向上しそうです。思うようなプレーができない自分にいら立って感情的になることはあっても、徐々に成熟してきていると思います。どこかゲームを楽しんでいるのがいいですよね。男子テニスの錦織圭(日清食品)にも通じる点です。勝ちたい思いが強すぎるとプレッシャーになりますが、そういう部分をあまり感じさせません。

ハードコートに比べて球足が遅いクレーコートで、一般的には大坂は苦戦するとみられています。しかし、一発で相手の体勢を崩せるショットを持っていますから、いずれはクレーを攻略して全仏オープン(今年は5月26日開幕)でも勝つと思います。対照的に、球足の速い芝のコートは大坂のショットが最も生きるサーフェスです。このままいけば、ウィンブルドン選手権(7月1日開幕)を制するのも時間の問題だと思いますね。

 辻野隆三(つじの・りゅうそう) 1969年生まれ。東京都出身。ジュニアのタイトルを総なめにして87年にプロ転向。94年全豪オープン出場、94年アジア大会団体銅メダルを獲得。男子テニスの国別対抗戦、デビス杯日本代表としても活躍。現在はテレビ解説のほか、日本テニス協会プロツアー委員会委員長などを務める。MIRAIテニスアカデミー代表。

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