2019年2月23日(土)

アップル、次の成長手探り 脱・iPhone依存なるか

ネット・IT
北米
2019/1/30 11:20
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【シリコンバレー=白石武志】「iPhone」の成長が壁に突き当たった。米アップルが29日に発表した2018年10~12月期決算は中国経済の失速が響き、減収減益となった。今後は端末上のサービス開発に軸足を移して再成長を目指す構えだが、動画配信などの分野では米ネットフリックスなどのライバルがひしめく。iPhoneに並ぶ収益源に育つかどうかはまだ不透明だ。

18年10~12月期の業績予想を下方修正し、iPhone関連株ばかりか為替相場まで揺らした1月2日の「アップル・ショック」から約1カ月。29日に正式発表した売上高は5%減の843億1千万ドル(約9兆2千億円)、純利益は0.5%減の199億6500万ドルだった。

アップルが減収となるのは16年7~9月期以来、9四半期ぶり。減益は8四半期ぶりだ。ティム・クック最高経営責任者(CEO)は電話会見で「とりわけ中国の経済環境は、我々の当初の予想よりも著しく厳しかった」と振り返った。

製品別では稼ぎ頭であるiPhoneの売上高が15%減となり、業績全体の足を引っ張った。クック氏はその理由として通貨安によってトルコなどの新興国で割高な値付けになったこと、日本の携帯電話会社による購入補助金の削減などの「外部要因」を列挙した。

アップルは17年前の02年6月にもドット・コム・バブル崩壊のあおりで業績予想を下方修正している。このときCEOだったスティーブ・ジョブズ氏は投資家宛ての書簡の中で「我々はいくつかの驚くべき新製品を開発中だ」と記した。後のiPhone発売をにおわす発言によって、投資家の成長期待をつなぎ留めている。

今のアップルに向けられているのは、かつてのジョブズ氏の時代に誇っていたイノベーション(技術革新)の力を失いつつあるのではないかという疑念だ。米調査会社のカナリスによるとアップルの中国シェアが16年以降、9%で足踏みを続けるのと対照的に、中国の華為技術(ファーウェイ)は18年の中国シェアを3年前の約2倍の27%まで伸ばした。

中国経済の減速が米アップルの業績に響いている(北京のアップルストア)

中国経済の減速が米アップルの業績に響いている(北京のアップルストア)

ライバル企業が高品質ディスプレーなどの電子部品を入手しやすくなっていることもアップルに逆風となっている。英調査会社IHSマークイットによると18年のスマホ向け高品質液晶パネルの市場では中国メーカー向けを得意とする中国・天馬微電子のシェアが21.6%となり初めて首位に立った。

これまでアップルは豊富な資金力を生かして最先端の電子部品技術を囲い込んできたが、「中国の電子部品メーカーが実力を上げたことでiPhoneと同等以上の性能を半値以下で提供できるようになった」(IHSの早瀬宏シニアディレクター)。

実際に中国のスマホメーカーは一部の機能でiPhoneを上回る評価を得ている。ファーウェイの最近の機種では3~4つのカメラを搭載し、解像度や望遠性能などを高めた。人工知能(AI)を使った画像処理にも強みを持つ。次世代スマホの本命の一つとされる折り畳み可能なスマホ「フォルダブル」についても、ファーウェイのほかOPPO(オッポ)などの中国メーカーが19年内に発売する見通しで、中国勢が今後の市場をリードする可能性がある。

また豊富なアプリをそろえているのも中国スマホの強みの一つだ。検索サイト大手の百度(バイドゥ)やスマホ大手の小米(シャオミ)が独自のアプリストアを開設。スマホ決済や動画投稿など中国発で世界的なヒットになるアプリも登場している。

こうした機能・サービスの向上を背景に中国のスマホ市場は中国メーカーが上位4社を占める。アップルは5位に踏みとどまるが、かつて首位だった韓国サムスン電子のシェアは現在1%程度とされる。

アップルはiPhoneの世界販売台数が頭打ちとなった3年前から1台当たりの単価を引き上げることで収益を最大化する戦略を進めており、低価格スマホが人気のインドなど他の新興国市場でも存在感を示せていない。iPhone販売に売上高の6割超を依存するビジネスモデルによる成長は限界を迎えつつある。

29日の電話会見でクック氏がiPhoneに続く収益源として期待を示したのがアプリ配信サービス「アップストア」やクラウド上にデータを保管する「iCloud」などのサービス部門だ。18年10~12月期に同部門の売上高は19%増の109億ドルと初めて100億ドルの大台を突破し、売上高全体の13%を占めるようになった。

今回の決算から初めて開示を始めた事業部門ごとの粗利益率でも、サービス部門は63%と、iPhoneやマックなどの製品部門(34%)を大きく上回った。18年末時点で約447億ドルに上る現金を新たなサービス開発に注ぐことで、端末メーカーからより収益性の高いサービス事業者への脱皮を模索する考えだ。

アップルは潤沢な手元資金をこれまで自社株買いなどに費やしてきたが、次の成長への投資に振り向ける兆しもある。例えばアップルは米ロサンゼルス近郊に自前のコンテンツ制作拠点を建設中とされ、年間10億ドルを投じて19年後半にも定額制の動画配信サービスに参入する計画が噂される。

ただ、最大のライバルとなるネットフリックスは18年に少なくとも80億ドルをコンテンツ関連に費やすなど、世界的な動画サービスで先行している。米コンサルティング大手、ベイン・アンド・カンパニーのジャン・フィリップ・ビラニエ氏は「アップルは音楽配信でイノベーションを起こした実績を持つ会社だが、動画配信で成功するか判断するのは時期尚早だ」と話す。

年明け以降、クック氏は米誌への寄稿の中で「消費者は無責任に膨大な利用者情報を集めている企業や、制御不能な情報漏洩などを容認する必要はない」と述べ、消費者データを使った広告ビジネスで稼ぐ米グーグルや米フェイスブックなどをけん制している。今後、アップルがどういった形で広告収入に依存しないビジネスモデルをつくり上げるのかも焦点となる。

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