2019年6月19日(水)

リーマン危機 揺らぐ判断 政策余地今も乏しく
日銀08年議事録「利下げで市場機能低下」

2019/1/29 20:00
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日銀は29日、2008年7~12月の金融政策決定会合の議事録を公開した。米金融危機の渦中、利下げの時期と幅を巡り議論が白熱。白川方明前総裁は「金利の引き下げで金融市場の機能がさらに低下してしまうと本末転倒」と副作用も強く意識していた。難しい環境で緩和余地を探る様子はいまの日銀にも重なる。

リーマン・ブラザーズの破綻は世界を震撼させた(2008年9月15日、ニューヨーク=AP)

「中央銀行としてなしうる最も本質的な貢献は流動性供給を通じた金融市場の安定維持だ」(白川氏)。その言葉通り、9月に米リーマン・ブラザーズが破綻した3日後には日銀は米連邦準備理事会(FRB)と連携してドルの緊急供給を実施し、金融システムの崩壊をいち早く防いだ。

判断が揺れたのは、利下げをするかどうか。10月8日、FRBなど6中銀は協調して0.5%の利下げに踏み切るが、日銀は見送った。当時の日本の政策金利はすでに0.5%と低く「6中銀の利下げを歓迎する」との声明を出すにとどめた。

その後、株安や景気悪化が深まり、結局日銀も0.1%にまで利下げすることになる。だが常にぎりぎりの議論を重ねた。日銀がこだわったのは市場機能の維持だ。白川氏はゼロ金利に近づくと「市場取引を支えるもろもろのインフラが壊れる」と将来、金利を正常化する際の支障を懸念していた。

利下げ余地が乏しく非伝統的な金融緩和に頼る構図は、いまと重なる。

現在の黒田東彦総裁は13年の就任当初、政府と一体となり、2%の物価目標の達成を最優先した。緩和の副作用には目をつぶり、16年にはマイナス金利政策を導入。金融機関や市場に波紋を広げた。

だがその黒田総裁も2期目に入った昨年ごろから「発言が白川前総裁に徐々に近づいている」との声が日銀内部で増えつつある。目標達成は6年たっても見通せず、最近は市場機能や金融仲介機能への目配りをせざるをえない。昨年7月には金利の動きを柔軟にする措置を取った。

この先、日銀は一段と難しい判断を迫られそうだ。米中貿易摩擦などで海外経済や金融市場の不透明感は強まっているのに緩和の追加余地は10年前よりもはるかに乏しい。副作用覚悟のマイナス金利の深掘りや、財政出動と一体での国債購入増額など、選択肢は危うさを伴うものが多い。

そして戦後最長の景気回復が視野に入ったにもかかわらず、金融政策の正常化に着手できていない。08~13年に副総裁だった山口広秀氏は「さらに金融緩和が必要になれば緩和手段の知恵を絞ると同時に、市場との対話を意識しつつ将来の正常化戦略もしっかりと打ち出すことが重要だ」と指摘する。(後藤達也)

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