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ユニクロ、GUに続け ファストリの隠し玉「PLST」

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停滞が続く国内婦人服市場で、じわじわと売り上げを伸ばしているブランドがPLST(プラステ)だ。落ち着いたデザインで、値ごろな仕事着を求める30代以上の女性から支持を集め、売上高は約200億円に達した。運営するファーストリテイリングが「ユニクロ」と「GU(ジーユー)」に続く「第3の柱」へと期待を寄せる「隠し玉」でもある。

NIKKEI MJ

「ユニクロ」以上、「セオリー」未満

「素材の質が良くて体形をカバーできるのが良いわ」。1月上旬、東京・銀座のプラステ店舗に仕事帰りに立ち寄った40代女性は満足げだ。人気主婦ブロガーの紹介記事を見て来店したといい、約3100円のニットと約6400円のパンツを仕事着として購入した。「でもプラステがユニクロと同じグループだなんて知らなかった」

店内に並ぶ服はシンプルなデザインのものが多い。ただ、ワイドパンツであればウエスト部分にゴムが採用されて着心地が楽な一方で、外見からは分からないようにするなど、細部に工夫を凝らした商品が多い。

プラステは全国に約100店舗を構える。ユニクロやGUと違うのは、大丸東京店など百貨店の婦人服売り場にも入居している点だ。2014年から積極出店に転じ、店舗数は5年前から6割増し。ブランド売上高は約200億円に達した。

プラステの河崎邦和社長はブランドを「価格は百貨店ブランドの半分程度、商品価値はユニクロの2~3倍を意識している」と語る。

プラステの平均単価は約7000円。ユニクロやGUより高いが、ファストリ傘下で仕事着が多い米「セオリー」よりも安い。オンワード樫山や三陽商会が百貨店で展開するブランドの間に並べば、値ごろ感が際立つ。

近年、ファッションのカジュアル化が進み、百貨店では服を買わず、ユニクロやショッピングセンター(SC)のカジュアルブランドで済ませる、という人が増えている。だが、仕事でも着られて、いつも買う服との価格差が小さいブランドを探すのは案外難しい。

特に、加齢を経て体形の変化が気になる世代でも安心して着られる、と機能性をうたう商品は少ない。ファッション産業から抜け落ちた働く女性のニーズに、プラステがはまっている。

普段は「マウジー」などカジュアル衣料を着るという30代の女性会社員は、「価格はいつもの服より高いが、ストレッチが効く機能性が良い。体のラインを美しく見せるシルエットもいい」と、3年前から仕事着に使っていると話す。

ユニクロの生産資源を活用

プラステが百貨店ブランドより安値で提供できるのは、ファストリが持つ経営資源をフル活用しているためだ。代表例が生産面。プラステは詳細を明かしていないが、あるアパレル関係者は「ユニクロが関係のある海外工場の中で、高価格帯の商品を手掛ける場所で作っている」と指摘する。

商品面でも、「ユニクロやGUが採算面で手を出せない、一つ上の素材を活用する」(ファストリ幹部)。比較的肉厚な素材を使い、素材の風合いやディテールにもこだわる。デザインもその時々の流行に合わせる。

衣料品売上高が縮小の一途をたどる百貨店業界も、プラステの集客力に期待を寄せる。18年9月にプラステが出店した東武百貨店池袋本店では「新たな中価格ブランドとして人気が高まっており、顧客を増やしている」(同店の広報担当者)。

京急百貨店の上野賢了社長は「価格と品質のバランスに加えセレクトショップのような雰囲気もあるため若者に人気」と話す。プラステは18年9月、商業施設「ウィング上大岡」に出店、売り上げは好調という。全国から出店を求める百貨店や商業施設が増えている。

もっとも、ファストリは長年プラステの広告を抑制していた。事業が一定規模に成長するまで時間をかけて育てる戦略をとっていたもようだ。原因の1つは立ち上げ当初の迷走にあった。

元「セオリー」系、迷走も

プラステが誕生したのは02年。当初は「PLS+T(プラスセオリー)」。米高級ファッションブランド「セオリー」の運営会社から生まれ、同ブランドの商品を中心に販売する業態だった。当時の平均価格は2万円と今より高め。だが一時ブランドの価格帯を3つ設けるなど迷走した。

09年、ファストリがセオリーの運営会社を完全子会社化したことを受け、プラステも商品コンセプトや価格帯、出店場所を全面的に見直した。従来の百貨店に加え、SCに出店先を拡大。1万円以下の中価格帯では成長余地が残っているとして、軸足を移していった。ユニクロなどと共通の経営資源を活用し始めたのもこの時期からだ。

今後は東京や大阪など大都市に大型店を出していく方針だ。現在、1店舗当たりの平均面積は200平方メートル弱。330平方メートル以上の広さを持つ店を増やしていく。

消費者のニーズに対応した商品も取り扱う。現在は仕事着が全体の7割を占めるが、「通勤服のカジュアル化が進んでいる」(河崎氏)のにあわせ、スニーカーにも合う商品なども展開する。

河崎氏の目標は「中価格市場でナンバーワンを目指す」こと。ただ、課題も増えそうだ。一つは独立したブランドイメージを確立できるか。ファストリ内ではユニクロを中心とした戦略を取るため、プラステの強みが今後ユニクロに吸い取られてしまう可能性もある。

出店が増えれば賃料負担も増す。引き合いの多いユニクロほど強気に賃料交渉を進められないため、立地の良い場所の確保が重要になる。固定費を抑えつつ売上高を伸ばす出店戦略も必要だ。

現在ファッション世界3位で、1位の奪取を目指すファストリにとって、ユニクロ、GUに続く大型ブランドを増やすことは長年の懸案だ。特に中~高価格帯ブランドの充実は必達目標となる。プラステが第3の柱になるには、GUに肩を並べる規模を実現することが必要だ。

「第3の柱」育成に苦慮

2018年9月1日、プラステはセオリーから分社化し独立した。採用や社員教育などをセオリー内で進めていたが、名実ともに独立採算を目指す。柳井氏はファストリの連結売上高を18年8月期比1.5倍の3兆円、GU売上高は同5倍の1兆円が目標と公言している。プラステには1000億円以上の規模を求めているもようだ。

ファストリは世界大手に見習いポートフォリオを充実しようと、00年代から米セオリーをはじめ高価格帯のブランドを相次ぎ傘下に収めてきた。買収ブランド群をまとめたグローバルブランド事業は、18年8月期の売上高が前の期比10%増の1544億円。半面、営業損益は41億円の赤字と2期ぶりに赤字転落した。

米セオリーとプラステは好調だったが、コントワー・デ・コトニエ(フランス)、プリンセス・タム・タム(フランス)、JBrand(米国)の赤字が響いた。業績不振が続くコントワーは77億円の減損損失を計上。好調が続くファストリの業績に影を落とす。

欧米ブランドの買収でファストリの知名度は世界的に上がり、ユニクロの海外出店で好立地を確保できるなど一定の効果をもたらした。ただ、買収ブランドの商品企画や生産体制を徐々にユニクロに合わせていったことで、従業員やコアなファンが離れていった。

「さすがに売却した方がいい」。18年末、仏ブランドについて社内で議論が持ち上がったが、柳井氏は手放すことに消極的だったとされる。だが、テコ入れ策を強めるか、売却を含めた抜本的な策を実行するか、遠くない時期に判断することが必要となりそうだ。

(原欣宏、勝野杏美)

[日経MJ 2018年1月30日掲載]

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