太陽誘電、エルナー完全子会社化 車載向け取り込み

2019/1/29 10:34
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電子部品大手の太陽誘電は1月1日付で同業のエルナーを完全子会社化した。エルナーが強みとする車載向けのアルミ電解コンデンサーの取り込みを狙う。生産技術、販売網を融合することでシナジー効果を引き出す。ただ、エルナーは価格カルテルから独占禁止法の関連損失を抱えて、救済色も強い。「火中の栗」にしない成長投資を求められる。

「経営のスピードを速めることを優先する」。太陽誘電の登坂正一社長は説明する。2018年4月にエルナーの第三者割当増資を引き受け子会社化したばかりで、半年もたたず、完全子会社にすることを9月に発表した。

エルナーが顧客との間で結ぶ秘密保持契約(NDA)があり、手間取った双方の連携を一気に進めるという。完全子会社化で、「そうした問題を取り払い、営業などをスムーズにする」(登坂社長)。

もっとも、エルナーの苦しい台所事情を救うことが背景にある。エルナーはコンデンサーの価格カルテルで各国地域の当局から独占禁止法で罰金・制裁金を受けた。累計で60億円近い特別損失を計上しており、17年12月期まで5期連続の最終赤字で、債務超過に陥っていた。

4月の子会社化後も、関連損失が続き、米国・カナダで訴訟費用が発生する恐れも出てきた。財務体質の立て直し、信用の低下の食い止めが喫緊の課題となっていた。

太陽誘電にとってはリスクを抱え込み大博打に売って出たようにもみえるが、実はそうでもない。エルナーは業績こそ沈むが、主力のコンデンサー事業の売り上げは堅調に推移する。両社とも同事業で強みを持ち、物流面のコスト削減、一体開発によるスピード化、販売網の相互活用などメリットが大きい。

太陽誘電は通信基地やデータセンター向けの大容量セラミックコンデンサーに強みを持つ

太陽誘電は通信基地やデータセンター向けの大容量セラミックコンデンサーに強みを持つ

得意領域もすみ分けている。太陽誘電は大容量のセラミックコンデンサーに定評があり、スマートフォン、パソコン、データセンターなどに製品を出荷する。一方、エルナーはアルミ電解コンデンサーを手がけている。車載機器や産業向けの電子部品として高い信頼を獲得している。

太陽誘電側から見れば、車載分野とのパイプが魅力だ。そもそも、求められる安全性が高水準で参入障壁が高い。エルナーを取り込めば、打開の糸口をつかめる。

エルナーは車載向けコンデンサー製品に強みを持つ

エルナーは車載向けコンデンサー製品に強みを持つ

エルナー製のコンデンサーは、欧州の自動車市場で普及する48ボルトのマイルドハイブリッド車(HV)で採用される。ディーゼル車などのコンベンショナルカーから、電動化の流れが加速する。エルナーはコストと性能のバランスがとれた製品を供給している。

「コンデンサー需要が高まるなかで、太陽誘電単独では生産能力に限界があった」(登坂社長)。これまで生産能力を年率、10~15%引き上げるが、実需はそれをも上回って増える。群馬、新潟にある工場は17年夏からフル稼働が続いている。

エルナーにしても旺盛な需要があるにもかかわらず、経営難から投資が後手になっていた。太陽誘電は19年3月期からの3年で1500億円の投資を計画しており、エルナー向けも含まれる。車載・産業機器向けの売上高比率を今の約3割から、4割程度に高める。エルナーはその突破口になる。

米中の貿易摩擦の影響で今後の需要見通しは不透明感が漂う。両社で効率の良いポートフォリオを築き、市況に左右されにくい経営につなげる。そうなればエルナーの完全子会社化の意味は大きい。太陽誘電は19年3月期の連結最終利益が29%増の210億円と過去最高を更新する見通し。ただ足元の株価は昨年来高値(3695円)からほぼ半分の水準で推移する。厳しい評価をくつがえすためにも、早期にパフォーマンスを出すことが重要になる。

エルナー完全子会社化の一端ともなった生産能力不足。設備投資とあわせて、改善活動を進める。「スマートE」というプロジェクト名で、不良率の低減、生産効率化に取り組む。ICT(情報通信技術)を活用してデータを集めて、設備や従業員の作業を「見える化」する。

「それぞれの工程ごとにデータをひもづけして、異常を検知できるようになってきた」(登坂社長)。生産設備の台数が多く、効果が出やすい生産プロセスで採用したところ生産性が3~4割高まった。

設備や作業のバラツキが減り、不良原因の特定も可能になった。作業スペースの削減につながり、その分、装置や人員を増やせる好循環につながる。

国内の主力工場から、中国や韓国、マレーシアの生産拠点に成果を広げる。こうしたノウハウを浸透させるため、言語に左右されないマニュアルづくりに挑む。各工程の作業状況をカメラで撮影・解析する。国内外のすべての生産ラインの従業員の動きを可視化する構想を持つ。

電子機器に使う積層セラミックコンデンサー(MLCC)の需要は伸びる見通し。スマホの高機能化、自動車の電装化が後押しする。

利益を一気に積み上げ、企業として新たな成長路線で勝ち抜くタイミングを逃すのだけは避けたいところだ。業績への一時的なマイナスも織り込みつつも、エルナーを取り込み攻めの戦略を推進する。機を見た経営判断、構造改革が必要になるのはこれからだ。(佐藤雅哉)

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