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全日本卓球、小中学生が躍進 幼少期の環境に共通点

水谷隼(木下グループ)のシングルス10回目の優勝や伊藤美誠(スターツ)の2年連続3冠という記録ずくめの大会となった卓球の全日本選手権で、小中学生3人の活躍も目立った。共通点はどの選手も保護者が卓球経験者で、練習に打ち込める環境が整っていること。将来への期待が大いに高まるとともに、この競技における幼少期の過ごし方の重要さも改めて感じさせた。

14歳木原、最年少で決勝進出

史上最年少の中学2年で女子シングルス決勝進出を果たしたのが14歳の木原美悠(エリートアカデミー)だ。5回戦で2年前の優勝者、平野美宇(日本生命)を4-1で破ると、その勢いで実績ある社会人選手を次々と撃破。身長165センチと日本女子の中では大柄で、力強いスマッシュを放つ。ラケットのバック面には伊藤と同じ表ソフトと呼ばれる突起のついたラバーを張り、速いボールを打てるバックハンドも特徴だ。

「向かっていく気持ちで試合ができたことがよかった」と大会後に振り返ったように、劣勢でも諦めない姿勢が快進撃を支えた。準々決勝の佐藤瞳(ミキハウス)戦では、世界ランキング12位で日本屈指のカットマンを相手にゲームカウント1-3と追い込まれてから驚異的な粘りを見せた。

木原は女子シングルスで史上最年少のファイナリストとなった=共同

卓球では試合進行を早くするため、各ゲームの開始から10分後に両者のスコアが計18点未満の場合、サーブを受ける選手が13回返球すればレシーバーの得点になる「促進ルール」がある。木原は攻撃型の選手だが、第5ゲームで正確なラリーを続けてこのルールを適用させると、レシーブ時は佐藤の攻撃を巧みに防いでポイントを獲得。これで佐藤がリズムを崩すと、一気に試合をひっくり返した。

5歳ごろから本格的に卓球を始め、10歳からは元選手の父親が自宅を改装して始めた教室で腕を磨いた。小学校卒業後は張本智和らが在籍する日本オリンピック委員会(JOC)エリートアカデミーへ。充実したコーチ陣や設備のもとでフィジカルも鍛え、ラリーで体を振られても正確な返球ができるようになったという。伊藤との決勝こそ一方的な展開となったが、第4ゲームの3-9から8連続得点で1ゲームを奪うなど、今後の伸びしろを存分に感じさせる戦いぶりだった。

「スーパー小学生」も躍動

大会序盤に開催される高校2年生以下のジュニアの部では「スーパー小学生」が年上選手を次々と破った。小学4年で10歳の張本美和(木下グループ)はジュニアでいずれも高校生を破って3勝を挙げ、年齢制限のないシングルスでも1回戦で高校生、2回戦では社会人に勝利。2011年大会で同じく小4だった伊藤や平野が挙げた最年少勝利記録に並んだ。

小4で初出場した全日本選手権の女子シングルスで2勝、女子ジュニアでは3勝を挙げた張本美和

世界ランキング3位の兄、智和に似た速い打点のバックハンドや、巻き込みや投げ上げなど10種類近くあるサーブで年上の選手を翻弄。身長149センチの体を思い切りひねって放つフォアハンドの強打も効果的で、ジュニア4回戦でフルゲームの末に張本を退けた高校生選手は「フォアは高校生並みのパワーがあった。とても小学生とは思えない」と驚きを隠せなかった。

2歳で卓球を始め、年代別の大会では何度も日本一を経験。普段は中国出身で元卓球選手の両親が営む卓球場で練習を積む。昨年1月から指導する孫雪コーチによると、精神面の弱さが露呈することもあったが、「相手の方がプレッシャーがある」(張本)と自分に言い聞かせて臨んだ今大会は積極的な姿勢が目立ったという。敗れた相手が「勝負どころでは絶対回り込んできた」と話したように、劣勢でも思い切ったプレーを続け、局面を何度も打開してみせた。

男子では小5で11歳の松島輝空(木下グループ)が大会4日目のジュニア準々決勝まで進み、会場の視線を一身に集めた。身長143センチの左利き。こちらも「張本2世」と言われるほどバックハンドがうまく、「けっこう負けず嫌い」と自負する性格通り、パワーのある高校生を相手に一歩も引かなかった。

小5で初出場した全日本選手権男子ジュニアでベスト8まで進んだ松島輝空

まともにぶつかれば押し切られそうだが、元実業団選手で父の卓司さんと重ねたコースを正確につく練習の成果が出た。小1から5年連続で年代別の日本一を経験していることに加え、最近は国際大会にも出場。同世代でも体の大きな海外勢に対抗するため、戦術の組み立て方の幅を広げてきたという。

日本卓球協会がこのほど7歳以下の子供向けの育成事業を始めたように、卓球は幼いころに育まれた感覚が大きく影響する競技だ。今回の3人はもう何年も毎日数時間ラケットを振る生活を送っている。研ぎ澄まされた感覚と巧みな技術で格上の選手を破っていく姿は、近い将来、より大きな舞台で見ることができそうだ。

(鱸正人)

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