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施政方針演説の全文

安倍晋三首相の所信表明演説の全文は次の通り。

衆院本会議で施政方針演説をする安倍首相(28日)

一 はじめに

平成最後の施政方針演説を、ここに申し述べます。

本年4月30日、天皇陛下が御退位され、皇太子殿下が翌5月1日に御即位されます。国民こぞって寿(ことほ)ぐことができるよう、万全の準備を進めてまいります。

「内平らかに外成る、地平らかに天成る」

大きな自然災害が相次いだ平成の時代。被災地の現場には必ず、天皇、皇后両陛下のお姿がありました。

阪神・淡路大震災で全焼した神戸市長田の商店街では、皇后陛下が焼け跡に献花された水仙が、復興のシンボルとして、今なお、地域の人々の記憶に刻まれています。

商店街の皆さんは、復興への強い決意と共に、震災後すぐに仮設店舗で営業を再開。全国から集まった延べ200万人を超えるボランティアも復興の大きな力となりました。かつて水仙が置かれた場所は今、公園に生まれ変わり、子どもたちの笑顔であふれています。

東日本大震災の直後、仙台市の避難所を訪れた皇后陛下に、一人の女性が花束を手渡しました。津波によって大きな被害を受けた自宅の庭で、たくましく咲いていた水仙を手に、その女性はこう語ったそうです。

「この水仙のように、私たちも頑張ります」

東北の被災地でも、地元の皆さんの情熱によって、復興は一歩一歩着実に進んでいます。平成は、日本人の底力と、人々の絆がどれほどまでにパワーを持つか、そのことを示した時代でもありました。

「しきしまの 大和心のをゝしさは ことある時ぞ あらはれにける」

明治、大正、昭和、平成。日本人は幾度となく大きな困難に直面した。しかし、そのたびに、大きな底力を発揮し、人々が助け合い、力を合わせることで乗り越えてきました。

急速に進む少子高齢化、激動する国際情勢。今を生きる私たちもまた、立ち向かわなければならない。私たちの子や孫の世代に、輝かしい日本を引き渡すため、共に力を合わせなければなりません。

平成の、その先の時代に向かって、日本の明日を、皆さん、共に、切り開いていこうではありませんか。

二 全世代型社会保障への転換

【成長と分配の好循環】

この6年間、3本の矢を放ち、経済は10%以上成長しました。国・地方合わせた税収は28兆円増加し、来年度予算における国の税収は過去最高、62兆円を超えています。

そして、この成長の果実を、新3本の矢によって、子育て支援をはじめ現役世代へと大胆に振り向けてきました。

児童扶養手当の増額、給付型奨学金の創設を進める中で、ひとり親家庭の大学進学率は24%から42%に上昇し、悪化を続けてきた子どもの相対的貧困率も、初めて減少に転じ、大幅に改善しました。1993年以来、一貫して増加していた現役世代の生活保護世帯も、政権交代後、8万世帯、減少いたしました。

5年間で53万人分の保育の受け皿を整備した結果、昨年、待機児童は6000人減少し、10年ぶりに2万人を下回りました。子育て世代の女性就業率は7ポイント上昇し、新たに200万人の女性が就業しました。

成長の果実をしっかりと分配に回すことで、次なる成長につながっていく。「成長と分配の好循環」によって、アベノミクスは今なお、進化を続けています。

【教育無償化】

我が国の持続的な成長にとって最大の課題は、少子高齢化です。平成の30年間で、出生率は1.57から1.26まで落ち込み、逆に、高齢化率は10%から30%へと上昇しました。

世界で最も速いスピードで少子高齢化が進む我が国にあって、もはや、これまでの政策の延長線上では対応できない。次元の異なる政策が必要です。

子どもを産みたい、育てたい。そう願う皆さんの希望をかなえることができれば、出生率は1.8まで押し上がります。しかし、子どもたちの教育にかかる負担が、その大きな制約となってきました。

これを社会全体で分かち合うことで、子どもたちを産み、育てやすい日本へと、大きく転換していく。そのことによって、「希望出生率1.8」の実現を目指します。

10月から3歳から5歳まで全ての子どもたちの幼児教育を無償化いたします。小学校・中学校9年間の普通教育無償化以来、実に70年ぶりの大改革であります。

待機児童ゼロの目標は、必ず実現いたします。今年度も17万人分の保育の受け皿を整備します。保育士の皆さんの更なる処遇改善を行います。自治体の裁量を拡大するなどにより、学童保育の充実を進めます。

来年4月から、公立高校だけでなく、私立高校も実質無償化を実現します。真に必要な子どもたちの高等教育も無償化し、生活費をカバーするために十分な給付型奨学金を支給します。

家庭の経済事情にかかわらず、子どもたちの誰もが、自らの意欲と努力によって明るい未来をつかみ取ることができる。そうした社会を創り上げてこそ、アベノミクスは完成いたします。

子どもたちこそ、この国の未来そのものであります。

多くの幼い命が、今も、虐待によって奪われている現実があります。僅か5歳の女の子が、死の間際につづったノートには、日本全体が大きなショックを受けました。

子どもたちの命を守るのは、私たち大人全員の責任です。

あのような悲劇を二度と繰り返してはなりません。何よりも子どもたちの命を守ることを最優先に、児童相談所の体制を抜本的に拡充し、自治体の取り組みを警察が全面的にバックアップすることで、児童虐待の根絶に向けて総力を挙げてまいります。

【一億総活躍】

女性比率僅か3%の建設業界に、女性たちと共に飛び込んだ中小企業があります。時短勤務の導入、託児所の設置などに積極的に取り組み、職人の3割は女性です。

彼女たちが企画した健康に優しい塗料は、家庭用の人気商品となりました。女性でも使いやすい軽量の工具は、高齢の職人たちにも好んで使われるようになりました。この企業の売り上げは、3年で2倍、急成長を遂げています。

女性の視点が加わることにより、女性たちが活躍することにより、日本の景色は一変する。人口が減少する日本にあって、次なる成長の大きなエンジンです。

女性活躍推進法を改正し、このうねりを全国津々浦々の中小企業にも広げます。十分な準備期間を設け、経営者の皆さんの負担の軽減を図りながら、女性の働きやすい環境づくりに取り組む中小企業を支援してまいります。

パワハラ、セクハラの根絶に向け、社会が一丸となって取り組んでいかなければなりません。全ての事業者にパワハラ防止を義務付けます。セクハラの相談を理由とした不利益取り扱いを禁止するほか、公益通報者保護に向けた取り組みを強化し、誰もが働きやすい職場づくりを進めてまいります。

働き方改革。いよいよ待ったなしであります。

この4月から、大企業では、三六協定でも超えてはならない、罰則付きの時間外労働規制が施行となります。企業経営者の皆さん。改革の時は来ました。準備はよろしいでしょうか。

長年続いてきた長時間労働の慣行を断ち切ることで、育児や介護など様々な事情を抱える皆さんが、その事情に応じて働くことができる。誰もがその能力を思う存分発揮できる社会に向かって、これからも、働き方改革を全力で推し進めてまいります。

障害者の皆さんにも、やりがいを感じながら、社会でその能力を発揮していただきたい。障害者雇用促進法を改正し、就労の拡大を更に進めます。

人生100年時代の到来は、大きなチャンスです。

元気で意欲ある高齢者の方々に、その経験や知恵を社会で発揮していただくことができれば、日本はまだまだ成長できる。生涯現役の社会に向かって、65歳まで継続雇用することとしている現行制度を見直し、70歳まで就労機会を確保できるよう、この夏までに計画を策定し、実行に移します。

この5年間、生産年齢人口が450万人減少する中にあっても、多くの女性や高齢者の皆さんが活躍することで、就業者は、逆に250万人増加いたしました。女性も男性も、お年寄りも若者も、障害や難病のある方も、全ての人に活躍の機会をつくることができれば、少子高齢化も必ず克服できる。

平成の、その先の時代に向かって、「一億総活躍社会」を、皆さん、共に、創り上げていこうではありませんか。

【全世代型社会保障】

少子高齢化、そして人生100年の時代にあって、我が国が誇る社会保障の在り方もまた大きく変わらなければならない。お年寄りだけではなく、子どもたち、子育て世代、更には、現役世代まで、広く安心を支えていく。全世代型社会保障への転換を成し遂げなければなりません。

高齢化が急速に進む中で、家族の介護に、現役世代は大きな不安を抱いています。介護のために仕事を辞めなければならない、やりがいを諦めなければならないような社会はあってはなりません。

現役世代の安心を確保するため、「介護離職ゼロ」を目指し、引き続き全力を尽くします。

2020年代初頭までに50万人分の介護の受け皿を整備します。ロボットを活用するなど現場の負担軽減を進めるとともに、10月からリーダー級職員の方々に月額最大8万円の処遇改善を行います。

認知症対策の強化に向けて、夏までに新オレンジプランを改定します。認知症カフェを全市町村で展開するなど、認知症の御家族を持つ皆さんを、地域ぐるみで支え、その負担を軽減します。

勤労統計について、長年にわたり、不適切な調査が行われてきたことは、セーフティーネットへの信頼を損なうものであり、国民の皆様におわび申し上げます。雇用保険、労災保険などの過少給付について、できる限り速やかに、簡便な手続きで、不足分をお支払いいたします。基幹統計について緊急に点検を行いましたが、引き続き、再発防止に全力を尽くすとともに、統計の信頼回復に向け、徹底した検証を行ってまいります。

全世代型社会保障への転換とは、高齢者の皆さんへの福祉サービスを削減する、との意味では、全くありません。むしろ、高齢者の皆さんに引き続き安心してもらえることが大前提であります。

65歳以上の皆さんにも御負担いただいている介護保険料について、年金収入が少ない方々を対象に、10月から負担額を3分の2に軽減します。年金生活者の方々に、新たに福祉給付金を年間最大6万円支給し、所得をしっかりと確保してまいります。

こうした社会保障改革と同時に、その負担を次の世代へと先送りすることのないよう、2025年度のプライマリーバランス黒字化目標の実現に向け、財政健全化を進めます。

少子高齢化を克服し、全世代型社会保障制度を築き上げるために、消費税率の引き上げによる安定的な財源がどうしても必要です。10月からの10%への引き上げについて、国民の皆様の御理解と御協力をお願い申し上げます。

8%への引き上げ時の反省の上に、経済運営に万全を期してまいります。

増税分の5分の4を借金返しに充てていた、消費税の使い道を見直し、2兆円規模を教育無償化などに振り向け、子育て世代に還元いたします。軽減税率を導入するほか、プレミアム商品券の発行を通じて、所得の低い皆さんなどの負担を軽減します。

同時に、来るべき外国人観光客4000万人時代を見据え、全国各地の中小・小規模事業者の皆さんにキャッシュレス決済を普及させるため、思い切ったポイント還元を実施します。自動車や住宅への大幅減税を行い、しっかりと消費を下支えします。

来年度予算では、頂いた消費税を全て還元する規模の十二分な対策を講じ、景気の回復軌道を確かなものとすることで、「戦後最大の国内総生産(GDP)600兆円」に向けて着実に歩みを進めてまいります。

三 成長戦略

【デフレマインドの払拭】

平成の日本経済はバブル崩壊から始まりました。

出口の見えないデフレに苦しむ中で、企業は人材への投資に消極的になり、若者の就職難が社会問題となりました。設備投資もピーク時から3割落ち込み、未来に向けた投資は先細っていきました。

失われた20年。その最大の敵は、日本中にまん延したデフレマインドでありました。

この状況に、私たちは3本の矢で立ち向かいました。

早期にデフレではないという状況を作り、企業の設備投資は14兆円増加しました。20年間で最高となっています。人手不足が深刻となって、人材への投資も息を吹き返し、5年連続で今世紀最高水準の賃上げが行われました。経団連の調査では、この冬のボーナスは過去最高です。

日本企業に、再び、未来へ投資する機運が生まれてきた。デフレマインドが払拭されようとしている今、未来へのイノベーションを、大胆に後押ししていきます。

【第4次産業革命】

世界は、今、第4次産業革命の真っただ中にあります。人工知能、ビッグデータ、IoT、ロボットといったイノベーションが、経済社会のありようを一変させようとしています。

自動運転は、高齢者の皆さんに安全・安心な移動手段をもたらします。体温や血圧といった日々の情報を医療ビッグデータで分析すれば、病気の早期発見も可能となります。

新しいイノベーションは、様々な社会課題を解決し、私たちの暮らしを、より安心で、より豊かなものとする、大きな可能性に満ちている。こうしたSociety5.0を、世界に先駆けて実現することこそ、我が国の未来を開く成長戦略であります。

時代遅れの規制や制度を大胆に改革いたします。

交通に関わる規制を全面的に見直し、安全性の向上に応じ、段階的に自動運転を解禁します。寝たきりの高齢者などが、自宅にいながら、オンラインで診療から服薬指導まで一貫して受けられるよう、関係制度を見直します。外国語やプログラミングの専門家による遠隔教育を、5年以内に全ての小中学校で受けられるようにします。

電波は国民共有の財産です。経済的価値を踏まえた割当制度への移行、周波数返上の仕組みの導入など、有効活用に向けた改革を行います。携帯電話の料金引き下げに向け、公正な競争環境を整えます。

電子申請の際の紙の添付書類を全廃します。行政手続きの縦割りを打破し、ワンストップ化を行うことで、引っ越しなどの際に同じ書類の提出を何度も求められる現状を改革します。

急速な技術進歩により、経済社会が加速度的に変化する時代にあって最も重要な政府の役割は、人々が信頼し、全員が安心して新しいシステムに移行できる環境を整えることだと考えます。

膨大な個人データが世界を駆け巡る中では、プライバシーやセキュリティーを保護するため、透明性が高く、公正かつ互恵的なルールが必要です。その上で、国境を越えたデータの自由な流通を確保する。米国、欧州と連携しながら、信頼される、自由で開かれた国際データ流通網を構築してまいります。

人工知能も、あくまで人間のために利用され、その結果には人間が責任を負わなければならない。我が国がリードして、人間中心のAI倫理原則を打ち立ててまいります。

イノベーションがもたらす社会の変化から、誰一人取り残されてはならない。この夏策定するAI戦略の柱は、教育システムの改革です。

来年から全ての小学校でプログラミングを必修とします。中学校、高校でも、順次、情報処理の授業を充実し、必修化することで、子どもたちの誰もが、人工知能などのイノベーションを使いこなすリテラシーを身に付けられるようにします。

我が国から、新たなイノベーションを次々と生み出すためには、知の拠点である大学の力が必要です。若手研究者に大いに活躍の場を与え、民間企業との連携に積極的な大学を後押しするため、運営費交付金の在り方を大きく改革してまいります。

経済活動の国境がなくなる中、日本企業の競争力、信頼性を一層グレードアップさせるために、企業ガバナンスの更なる強化が求められています。社外取締役の選任、役員報酬の開示など、グローバルスタンダードに沿って、これからもコーポレートガバナンス改革を進めてまいります。

【中小・小規模事業者】

中小・小規模事業者の海外輸出は、バブル崩壊後、2倍に拡大しました。

下請けから脱し、自ら販路を開拓する。オンリーワンのワザを磨く。全国360万者の中小・小規模事業者の皆さんは、様々な困難にあっても、歯を食いしばって頑張ってきました。バブル崩壊後の日本経済を支え、我が国の雇用の7割を守ってきたのは、こうした中小・小規模事業者の皆さんです。

新しいチャレンジをものづくり補助金で応援します。全国的に人手不足が深刻となる中で、IT補助金、持続化補助金により、生産性向上への取り組みも後押しします。

4月から、即戦力となる外国人材を受け入れます。多くの優秀な方々に日本に来ていただき、経済を担う一員となっていただくことで、新たな成長につなげます。働き方改革のスタートを見据え、納期負担のしわ寄せを禁止するなど、取引慣行の更なる改善を進めます。

後継者の確保も大きな課題です。47都道府県の事業引き継ぎ支援センターでマッチングを行うとともに、相続税を全額猶予する事業承継税制を個人事業主に拡大します。

環太平洋経済連携協定(TPP)や欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)は、高い技術力を持つ中小・小規模事業者の皆さんにとって、海外展開の大きなチャンスです。「総合的なTPP等関連政策大綱」に基づき、海外でのマーケティング、販路開拓を支援してまいります。

四 地方創生

【農林水産新時代】

安全でおいしい日本の農産物にも、海外展開の大きなチャンスが広がります。農林水産品の輸出目標1兆円も、もう手の届くところまで来ました。

同時に、農家の皆さんの不安にもしっかり向き合います。2次補正予算も活用し、体質改善、経営安定化に万全を尽くします。

素晴らしい田園風景、緑あふれる山並み、豊かな海、伝統ある故郷(ふるさと)。我が国の国柄を守ってきたのは、全国各地の農林水産業です。美しい棚田を次の世代に引き渡していくため、中山間地域への直接支払いなどを活用し、更に、総合的な支援策を講じます。

農こそ、国の基です。

守るためにこそ、新たな挑戦を進めなければならない。若者が夢や希望を持って飛び込んでいける「強い農業」を創ります。この6年間、新しい農林水産業を切り開くために充実させてきた政策を更に力強く展開してまいります。

農地バンクの手続きを簡素化します。政権交代前の3倍、6000億円を上回る土地改良予算で、意欲と能力ある担い手への農地集積を加速し、生産性を高めます。

国有林野法を改正します。長期間、担い手に国有林の伐採・植林を委ねることで、安定した事業を可能とします。美しい森を守るため、水源の涵養(かんよう)、災害防止を目的とした森林環境税を創設します。

水産業の収益性をしっかりと向上させながら、資源の持続的な利用を確保する。3000億円を超える予算で、新しい漁船や漁具の導入など、浜の皆さんの生産性向上への取り組みを力強く支援します。

平成の、その先の時代に向かって、若者が自らの未来を託すことができる「農林水産新時代」を、皆さん、共に、築いていこうではありませんか。

【観光立国】

田植え、稲刈り。石川県能登町にある50軒ほどの農家民宿には、直近で1万3000人を超える観光客が訪れました。アジアの国々に加え、米国、フランス、イタリア、イスラエルなど、20カ国以上から外国人観光客も集まります。

昨年、日本を訪れる外国人観光客は、6年連続で過去最高を更新し、3000万人の大台に乗りました。北海道、東北、北陸、九州で3倍以上、四国で4倍以上、沖縄では5倍以上に増えています。消費額にして、4兆5000億円の巨大市場。

観光立国によって、全国津々浦々、地方創生の核となる、たくましい一大産業が生まれました。

来年の4000万人目標に向かって、海外と地方をつなぐ空の玄関口、羽田、成田空港の発着枠を8万回増やします。世界一安全・安心な国を実現するため、テロ対策などの一層の強化に取り組みます。国際観光旅客税を活用し、主要な鉄道や観光地で表示の多言語化を一気に加速します。

来年3月の供用開始に向け、那覇空港第二滑走路の建設を進めます。発着枠を大幅に拡大することで、アジアと日本とをつなぐハブ機能を強化してまいります。

北海道では、昨年、フィリピンからの新たな直行便など、新千歳空港の国際線が25便増加しました。雄大な自然を生かした体験型ツーリズムの拡大を後押しします。広くアイヌ文化を発信する拠点を白老町に整備し、アイヌの皆さんが先住民族として誇りを持って生活できるよう取り組みます。

【地方創生】

観光資源などそれぞれの特色を生かし、地方が、自らのアイデアで、自らの未来を切り開く。これが安倍内閣の地方創生です。

地方の皆さんの熱意を、引き続き1000億円の地方創生交付金で支援します。地方の財政力を強化し、税源の偏在を是正するため、特別法人事業税を創設します。

10年前、東京から地方への移住相談は、その半分近くが60歳代以上でした。しかし、足元では、相談自体10倍以上に増加するとともに、その9割が50歳代以下の現役世代で占められています。特に、30歳未満の若者の相談件数は、50倍以上になりました。

若者たちの意識が変わってきた今こそ、大きなチャンスです。地方に魅力を感じ、地方に飛び込む若者たちの背中を力強く後押ししてまいります。

地域おこし協力隊を、順次8000人規模へと拡大します。東京から地方へ移住し、起業・就職する際には、最大300万円を支給し、地方への人の流れを加速します。

若者たちの力で、地方の輝ける未来を切り開いてまいります。

【国土強靱化】

集中豪雨、地震、激しい暴風、異常な猛暑。昨年、異次元の災害が相次ぎました。もはや、これまでの経験や備えだけでは通用しない。命に関わる事態を「想定外」と片付けるわけにはいきません。

7兆円を投じ、異次元の対策を講じます。

全国で2000を超える河川、1000カ所のため池の改修、整備、1000キロメートルに及ぶブロック塀の安全対策を行い、命を守る防災・減災に取り組みます。

4000キロメートルを超える水道管の耐震化、8000カ所のガソリンスタンドへの自家発電の設置を進め、災害時にも維持できる、強靱(きょうじん)なライフラインを整備します。

風水害専門の広域応援部隊を全ての都道府県に立ち上げ、人命救助体制を強化します。

ハードからソフトまであらゆる手を尽くし、3年間集中で、災害に強い国創り、国土強靱化を進めてまいります。

【東日本大震災からの復興】

9月20日からいよいよラグビーワールドカップが始まります。5日後には、強豪フィジーが岩手県釜石のスタジアムに登場します。

津波で大きな被害を受けた場所に、地元の皆さんの復興への熱意と共に建設されました。世界の一流プレーヤーたちの熱戦に目を輝かせる子どもたちは、必ずや、次の時代の東北を担う大きな力となるに違いありません。

東北の被災地では、この春までに、4万7000戸を超える住まいの復興がおおむね完了し、津波で浸水した農地の9割以上が復旧する見込みです。

原発事故で大きな被害を受けた大熊町では、この春、町役場が8年ぶりに、町に戻ります。

家々の見回り、草刈り、ため池の管理。将来の避難指示解除を願う地元の皆さんの地道な活動が実を結びました。政府も、インフラ整備など住民の皆さんの帰還に向けた環境づくりを進めます。

福島の復興なくして東北の復興なし。東北の復興なくして日本の再生なし。復興が成し遂げられるその日まで、国が前面に立って、全力を尽くして取り組んでまいります。

来年、日本にやってくる復興五輪。その聖火リレーは福島からスタートします。最初の競技も福島で行われます。東日本大震災から見事に復興した東北の姿を、皆さん、共に、世界に発信しようではありませんか。

五 戦後日本外交の総決算

【公正な経済ルールづくり】

昨年末、TPPが発効しました。来月には、欧州との経済連携協定も発効します。

いずれも単に関税の引き下げにとどまらない。知的財産、国有企業など幅広い分野で、透明性の高い、公正なルールを整備しています。次なる時代の、自由で、公正な経済圏のモデルです。

自由貿易が、今、大きな岐路に立っています。

世界貿易機関(WTO)が誕生して四半世紀、世界経済は、ますます国境がなくなり、相互依存を高めています。新興国は目覚ましい経済発展を遂げ、経済のデジタル化が一気に進展しました。

そして、こうした急速な変化に対する不安や不満が、時に保護主義への誘惑を生み出し、国と国の間に鋭い対立をも生み出しています。

今こそ、私たちは、自由貿易の旗を高く掲げなければならない。こうした時代だからこそ、自由で、公正な経済圏を世界へと広げていくことが、我が国の使命であります。

昨年9月の共同声明にのっとって、米国との交渉を進めます。広大な経済圏を生み出す東アジア地域包括的経済連携(RCEP)が、野心的な協定となるよう、大詰めの交渉をリードしてまいります。

国際貿易システムの信頼を取り戻すためには、WTOの改革も必要です。米国や欧州と共に、補助金やデータ流通、電子商取引といった分野で、新しい時代の公正なルールづくりを我が国がリードする。その決意であります。

【安全保障政策の再構築】

平成の、その先の時代に向かって、日本外交の新たな地平を切り開く。今こそ、戦後日本外交の総決算を行ってまいります。

我が国の外交・安全保障の基軸は、日米同盟です。

平和安全法制の成立によって、互いに助け合える同盟は、その絆を強くした。日米同盟は今、かつてなく強固なものとなっています。

そうした深い信頼関係の下に、抑止力を維持しながら、沖縄の基地負担の軽減に取り組んでまいります。これまでの20年以上に及ぶ沖縄県や市町村との対話の積み重ねの上に、辺野古移設を進め、世界で最も危険といわれる普天間飛行場の一日も早い全面返還を実現してまいります。

自らの手で自らを守る気概なき国を、誰も守ってくれるはずがない。安全保障政策の根幹は、我が国自身の努力に他なりません。

冷戦の終結と共に始まった平成の30年間で、我が国を取り巻く安全保障環境は激変しました。そして今、この瞬間も、これまでとは桁違いのスピードで、厳しさと不確実性を増している現実があります。

テクノロジーの進化は、安全保障の在り方を根本的に変えようとしています。サイバー空間、宇宙空間における活動に、各国がしのぎを削る時代となりました。

もはや、これまでの延長線上の安全保障政策では対応できない。陸、海、空といった従来の枠組みだけでは、新たな脅威に立ち向かうことは不可能であります。

国民の命と平和な暮らしを、我が国自身の主体的・自主的な努力によって、守り抜いていく。新しい防衛大綱の下、そのための体制を抜本的に強化し、自らが果たし得る役割を拡大します。サイバーや宇宙といった領域で我が国が優位性を保つことができるよう、新たな防衛力の構築に向け、従来とは根本的に異なる速度で変革を推し進めてまいります。

【地球儀俯瞰外交の総仕上げ】

我が国の平和と繁栄を確固たるものとしていく。そのためには、安全保障の基盤を強化すると同時に、平和外交を一層力強く展開することが必要です。

この6年間、積極的平和主義の旗の下、国際社会と手を携えて、世界の平和と繁栄にこれまで以上の貢献を行ってきた。地球儀を俯瞰(ふかん)する視点で、積極的な外交を展開してまいりました。

平成の、その先の時代に向かって、いよいよ総仕上げの時です。

昨年秋の訪中によって、日中関係は完全に正常な軌道へと戻りました。「国際スタンダードの下で競争から協調へ」「互いに脅威とはならない」、そして「自由で公正な貿易体制を共に発展させていく」。習近平主席と確認した、今後の両国の道しるべとなる3つの原則の上に、首脳間の往来を重ね、政治、経済、文化、スポーツ、青少年交流をはじめ、あらゆる分野、国民レベルでの交流を深めながら、日中関係を新たな段階へと押し上げてまいります。

ロシアとは、国民同士、互いの信頼と友情を深め、領土問題を解決して、平和条約を締結する。戦後70年以上残されてきた、この課題について、次の世代に先送りすることなく、必ずや終止符を打つ、との強い意志を、プーチン大統領と共有しました。首脳間の深い信頼関係の上に、1956年宣言を基礎として、交渉を加速してまいります。

北朝鮮の核、ミサイル、そして最も重要な拉致問題の解決に向けて、相互不信の殻を破り、次は私自身が金正恩委員長と直接向き合い、あらゆるチャンスを逃すことなく、果断に行動いたします。北朝鮮との不幸な過去を清算し、国交正常化を目指します。そのために、米国や韓国をはじめ国際社会と緊密に連携してまいります。

北東アジアを真に安定した平和と繁栄の地にするために、これまでの発想にとらわれない、新しい時代の近隣外交を力強く展開いたします。

そして、インド洋から太平洋へと至る広大な海と空を、これからも、国の大小にかかわらず、全ての国に恩恵をもたらす平和と繁栄の基盤とする。このビジョンを共有する全ての国々と力を合わせ、日本は、「自由で開かれたインド太平洋」を築き上げてまいります。

【世界の中の日本外交】

中東地域の国々とは、長年、良好な関係を築いてきました。その歴史の上に、中東の平和と安定のため、日本独自の視点で積極的な外交を展開してまいります。

アフリカ開発会議(TICAD)がスタートして30年近くがたち、躍動するアフリカはもはや援助の対象ではありません。共に成長するパートナーです。8月にTICADを開催し、アフリカが描く夢を力強く支援していきます。

世界の平和と繁栄のために、日本外交が果たすべき役割は大きなものがある。地球規模課題の解決についても、日本のリーダーシップに強い期待が寄せられています。

我が国は4年連続で温室効果ガスの排出量を削減しました。他方で、長期目標である2050年80%削減のためには非連続的な大幅削減が必要です。環境投資に積極的な企業の情報開示を進め、更なる民間投資を呼び込むという、環境と成長の好循環を回すことで、水素社会の実現など革新的なイノベーションを、我が国がリードしてまいります。

プラスチックによる海洋汚染が、生態系への大きな脅威となっています。美しい海を次の世代に引き渡していくため、新たな汚染を生み出さない世界の実現を目指し、ごみの適切な回収・処分、海で分解される新素材の開発など、世界の国々と共に、海洋プラスチックごみ対策に取り組んでまいります。

本年6月、主要国のリーダーたちが一堂に会するG20サミットを、我が国が議長国となり、大阪で開催します。

世界経済の持続的成長、自由で公正な貿易システムの発展、持続可能な開発目標、地球規模課題への新たな挑戦など、世界が直面する様々な課題について、率直な議論を行い、これから世界が向かうべき未来像をしっかりと見定めていく。そうしたサミットにしたいと考えています。

これまでの地球儀俯瞰外交の積み重ねの上に、各国首脳と築き上げた信頼関係の下、世界の中で日本が果たすべき責任を、しっかりと果たしていく決意です。

平成の、その先の時代に向かって、新しい日本外交の地平を開き、世界から信頼される日本を、皆さん、勇気と誇りを持って、共に、創り上げていこうではありませんか。

六 おわりに

2025年、日本で国際博覧会が開催されます。

1970年の大阪万博。リニアモーターカー、電気自動車、携帯電話。夢のような未来社会に、子どもたちは胸を躍らせました。

「驚異の世界への扉を、いつか開いてくれる鍵。それは、科学に違いない」

会場で心震わせた8歳の少年は、その後、科学の道に進み、努力を重ね、世界で初めてiPS細胞の作製に成功しました。ノーベル生理学・医学賞を受賞し、今、難病で苦しむ世界の人々に希望の光をもたらしています。

2020年、2025年を大きなきっかけとしながら、次の世代の子どもたちが輝かしい未来に向かって大きな「力」を感じることができる、躍動感あふれる時代を、皆さん、共に、切り開いていこうではありませんか。

憲法は、国の理想を語るもの、次の時代への道しるべであります。私たちの子や孫の世代のために、日本をどのような国にしていくのか。大きな歴史の転換点にあって、この国の未来をしっかりと示していく。国会の憲法審査会の場において、各党の議論が深められることを期待いたします。

平成の、その先の時代に向かって、日本の明日を切り開く。皆さん、共に、その責任を果たしていこうではありませんか。

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