2019年8月20日(火)

ネットに刺さった初の政治家 アキバは聖地
ワルぶる閣下~その虚実 麻生太郎物語(1)

麻生太郎物語
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2019/2/4 2:00
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首相の盟友、政権の屋台骨、首相の精神安定剤――。長期政権として記録を更新する安倍晋三政権において、副総理・財務相の麻生太郎を評する言葉はさまざまだ。初当選から2019年で40年。思わぬ形でインターネットに日本で初めて刺さった政治家にもなった。今でこそ政権のど真ん中に存在するが、かつては非主流派として長くもがいた時代があった。

追い風が吹き始めるかもしれない――。

そんな予感が生まれたのは、今では有名となったある演説の翌日だった。

■総裁候補へ訪れた転機

06年9月9日夕、東京・秋葉原駅前で開いた自民党総裁選の街頭演説。場所は今では人気アイドルグループ「AKB48」のショップがある駅前広場だ。安倍晋三、谷垣禎一に続いて最後に演説した麻生は冒頭「秋葉原駅前の皆さん、そして自称『秋葉原オタク』の皆さん」と呼びかけた。麻生の演説がキャプテン翼などの話にさしかかると、それまで足早に歩いていた若者が1人、2人と足を止めて演説に耳を傾け始めた。

当時まだ日本語版のツイッターはなかった。麻生の発言は「2ちゃんねる」などで拡散され、掲示板では「とうとうオタクも市民権を得た」「俺たちの麻生太郎」といった好意的な書き込みが相次いだ。総裁選での安倍優勢は変わらなかったが、演説翌日、ネット上での反応について報告を受けた麻生は予期せぬ反応に驚くとともに、麻生を支えてきた周囲も将来への手応えを感じていた。

■「男一匹ガキ大将」から「ローゼン閣下」へ

麻生は子どもの頃から好奇心が旺盛だった。

福岡県飯塚市の自宅で「ゴルゴ13」を読みながらくつろぐ麻生

福岡県飯塚市の自宅で「ゴルゴ13」を読みながらくつろぐ麻生

ボウリングが流行っていると聞けばアベレージが200を超えるまで没頭し、大学生時代にはヨット部での活動にのめり込んだ。初めてはまった漫画は本宮ひろ志の「男一匹ガキ大将」。大学卒業後、米国留学中もわざわざ日本から漫画を船便で取り寄せた。福岡県飯塚市の自宅にはまるまる「ゴルゴ13」という本棚があり、1巻から最新巻の191巻までが収まる。

月に何度か地元に戻る際に、その本棚の前のソファでくつろぐ時間が至福の時だ。今でも私用車の後部座席にはその週発売の漫画雑誌が積み上げられている。秘書の一日の最初の仕事も近くのコンビニで当日発売の漫画雑誌を買うことだ。

「マンガを読んでいると世相の変化がよく分かる」。かつて、そんな発言をするたびに政治家仲間からは「あいつはマンガばかり読んでいる」とからかわれた。だが麻生自身はむしろ自分の「政治家らしくなさ」に誇りすら感じていた。

麻生のマンガ好きは永田町の政治家仲間だけでなく世間にも知られ始めた。05年には、麻生自身はほとんど記憶にないが、羽田空港の売店で少女漫画「ローゼンメイデン」の単行本を手に取っていたとの目撃談がネット上で話題となった。麻生が少女漫画を愛読していたとの話が盛り上がり、「ローゼン閣下」と呼ばれるようになった。

「昔から特技と言えば、ばあさん芸者にもてることだったが、なんで若者にまで受けるようになったのかが分からない。むしろ俺の知らなかった自分の魅力を引き出してくれて感謝したいぐらいだ」。麻生はいまだにこういう疑問を口にする。マンガ好きに加え、麻生の歯に衣(きぬ)着せぬ麻生の物言いも、政治家や役人の曖昧な答弁に共感できない若者層の心をつかんだ。

ネットの住民にうけたのは、麻生にとって思わぬ幸運だったかもしれない。だが、ネット人気を機に一般にも知名度が広がった麻生は、それを武器に首相の座への道を歩んでいく。

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