2019年5月25日(土)

ソニー、「卒スマホ組」に照準 ミラーレスに中級機

日経産業新聞
2019/1/25 11:10
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ソニーがミラーレスカメラで「卒スマホ組」にフォーカスする。「フルサイズ」投入で攻勢をかけたが、2016年12月以来、中級機を2月に発売する。SNSで共有するアプリを提供して、スマートフォン(スマホ)が物足りないという新たな層を取り込む。フルサイズ市場を席巻したが、カメラメーカーの2強が猛追する。攻防が激しくなるなかで、新機軸で業界をリードする。

「α6400」は液晶モニターが180度回転し「自撮り」できる

「α6400」は液晶モニターが180度回転し「自撮り」できる

「イノベーションを小型・軽量のボディに凝縮した」。ソニーマーケティングの小笠原啓克統括部長はほぼ2年ぶりとなる中級機「α6400」をこう紹介した。フルサイズで商品力を伸ばしただけに、そのポテンシャルへの期待は大きい。

α6400は「APS-C」サイズのイメージセンサーを搭載するミラーレスカメラ。主力の「フルサイズ」に比べ小さく、取り込める情報量はどうしても劣る。ただ、本体は小さく、軽量(403グラム)に仕上げた。持ち運びやすさ、割安さを魅力にする。

ここまでフルサイズでの攻勢が続いた。17~18年は「α73」や「α7R3」を相次ぎ発売した。そして、プロ市場に切り込んだ「歴史的ターニングポイント」(幹部)と自負する「α9」などフルサイズ機を満を持して投入した。「フルサイズのソニー」というポジショニングを確立した。

ほぼ1社でシェアを独占するかたちで、フルサイズ市場を立ち上げた。次に「ピント」をあわせたのが中型機となる。ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ(SIPS)の大島正昭担当部長は「フルサイズで培った技術をもっと多くの人に使ってほしい」と説明する。

コンパクトデジタルカメラは需要が大きく落ち込んだなか、盛り返したのがミラーレスカメラ。最大のライバルとなった「スマホ」の勢いを押しかえし、販売を伸ばしてきた経緯がある。もっとも、一眼レフからの買い替えだけでは行き詰まりが予想される。そこで「卒スマホ組」に狙いを定める。

「ユーチューブ」や「インスタグラム」などにコメントとあわせ投稿するのが、今や撮影ニーズの王道だ。「スマホより良い美しい映像を求める人が増えている」(ソニー幹部)。軽いノリで撮っても、いわゆる「映える」クオリティーを求める。20万円以上かかるフルサイズでは高く、重い。フルサイズの半額程度という、「APS-C」サイズはこうした顧客層の目にかなう。

α6400はそんな「卒スマホ組」に照準をあわせて、動画への対応を進めた。液晶モニターを180度回転して「自撮り」できる。撮影した4K動画をスマホに転送し、位置情報などをタグづけして共有できるアプリも提供する。ポストスマホがなかなか現れないなかで、カメラ機能でその座を狙う。

フルサイズミラーレスを巡る競争も目まぐるしい。13年の「α7」発売以降、ソニーはマーケットを1社でさらった。ただ、18年9月にニコン、10月にキヤノンが相次ぎフルサイズミラーレスを発売しており、これからがプレーヤーがそろったうえでのシェア争いの本戦となる。

2強との正面衝突を避けられず消耗戦も予想される。ソニーの変化球ともいえる中級機の投入。「卒スマホ組」にミラーレスを受け入れてもらえれば、レンズを共有できるフルサイズ需要も視野に入る。カメラ愛好者頼みでない需要創出へ、ソニーは緩急をつけながら、トレンドの変化を確実にとらえる考えだ。

「2強の参入を予想して準備はしていた」。ソニーのカメラ事業幹部は、フルサイズミラーレス市場の群雄割拠を冷静に受け止める。キヤノン、ニコンが市場参入し、昨年末のボーナス商戦が初めての攻防戦となった。このコメントが虚勢でないことを裏付けたのが、その実績だ。

調査会社BCN(東京・千代田)によると、12月のフルサイズミラーレス市場ではソニーが66%と圧倒した。キヤノンが17%、ニコンが16%と続くが大きく水をあける。カメラ全体では最後発ともいえるソニーがいまだに一人勝ちを続ける。

対応レンズのバリエーションが勝負を分けた。ソニーはアダプターなしでフルサイズ、APS-C両方に装着できるレンズを48本そろえる。ニコンやキヤノンはフルサイズで、レンズを取り付ける新マウントを打ち出し、レンズを増やすのはこれからとなる。

ビックカメラ有楽町店(東京・千代田)のカメラ担当者は「レンズがそろってきたソニーの売れ行きが良い。逆にレンズの少ないニコンやキヤノンは、購入までつながりにくい」と話す。先行者優位を保っている。

これまで2強と勝負の舞台を微妙にずらしながら戦ってきたソニー。歴史、実績、技術に積みあげがある2社は、猛然とレンズを増やしキャッチアップしてくるだろう。

ソニーにとっては、抜け目ないチャレンジが奏功して今にいたる。今後の先行きは混沌とする。そもそも、スマートフォン(スマホ)も複数のレンズを採用するなど高機能化で、貪欲に他デバイスの領域を侵す。ポストスマホの存在も気がかり。勝者として地位を守るためにも、これまでのフロンティアとしての姿勢が試される(岩戸寿)

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