2019年8月20日(火)

ファーウェイ副会長の寄稿全文

2019/1/24 21:04
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中世の欧州で誕生した大学は、何世紀にもわたってその時代の知識を次の世代に伝えていくために主に存在した。人間の知識の進展というのは、当時は主にギルド制の中で働く人々によって蓄積されていた。だが、産業面におけるノウハウの蓄積と大学における研究が交わることはめったになかった。

孟晩舟氏

しかし学術界と産業界の関係は産業革命の時代に変わった。大学は単に知識を普及させる「場」から「知」の最前線を追求する場へと変化した。ジェームス・ワットが近代的な蒸気機関を開発したのは、グラスゴー大学で効率の悪い初期段階の蒸気機関を修理していた時だった。蒸気機関はその後、製造業や交通機関などで幅広く利用されていった。

1940~50年代になると、民間の企業や研究機関が基礎研究の分野で一定の役割を果たすようになった。米AT&Tのベル研究所はトランジスタやレーザー、情報理論を開発した。米テキサス・インスツルメンツ(TI)が集積回路を開発したことで「ムーアの法則」の時代が到来した。

現在、大学と企業はかつてなく緊密に協力し合っている。大学は人工知能(AI)の分野で基礎理論研究の最先端を担い、グーグルやフェイスブック、テスラ、華為技術(ファーウェイ)といった技術で先端を行く企業が理論の実用化に取り組んでいる。

18万人いるファーウェイの従業員の半数近くが研究開発に携わっている。この10年間の研究開発費は600億ドル(約6兆6千億円)超で、今後数年で150億~200億ドルを投じる計画だ。

IT企業として我々が成功し生き残るには、コミュニケーション技術の進展を研究開発部門が正確に予測できるかにかかっている。それを見通すために開かれた企業風土を培い、「1杯のコーヒーを飲みながら宇宙、世界全体のエネルギーを吸収するように」と従業員を鼓舞してきた。仕事ばかりしているのではなく、たまには時間を取って皆で集まり、互いに様々なアイデアをぶつけ合うことも大事だという意味だ。

外部との協力関係を育むために「ファーウェイ・イノベーション研究プログラム(HIRP)」と称し、世界中の大学や研究機関に仮想のコーヒーショップを提供し、そこで皆が様々な発想を語れるようにしている。第1号は10年に欧州で立ち上げた。このプログラムでは最も可能性がありそうな提案に資金を出す。HIRPで世界の上位100の大学と30カ国以上の国家研究機関の学者と緊密に協力している。

14年にはファーウェイのビジネスと基礎研究の方向性が合っている科学者たちをより幅広く支援するためにHIRPを拡充した。HIRPが支援したプロジェクト数は1200に上り、多くは既に商品化に成功した。たとえばファーウェイが独ミュンヘン技術大学と共同で開発したノイズ・キャンセリング技術は携帯電話に採用された。また独工学アカデミーのメンバーであるヨセフ・ノセック教授による無線技術の光通信への応用構想は、光伝送を活用した商品に使うチップのエネルギー消費を大幅に減らした。

一部の人々は懸念を抱いているようだが、ファーウェイは自分たちのパートナーが抱える様々な特許や研究結果を入手しようなどとは考えていない。英オックスフォード大学が新しいプロジェクトにはファーウェイからの資金援助を今後受けないと決定したことは知っているが、我々が目的としているのは研究者たちの成功や失敗から学ぶことだ。

このようなオープンな協力が、科学と商業利用の間に横たわる溝を埋める唯一の方法だ。そのためには、資金だけでなく忍耐が必要だ。なぜなら、基礎的な理論が実用化されるまでには、何十年もかかることがあるからだ。

大学と企業が互いに協力し合ってはじめて、このような時間的隔たりを埋めることができる。大学による基礎研究なしには産業は理論的な基盤を持つことができないし、産業界が存在しなければ学術界の知識は象牙の塔の中に閉じ込められてしまう。

ファーウェイが様々な大学を支援するのは、大学で追求されている科学研究がいわば灯台のように目指すべき未来を照らしてくれると考えているからだ。科学者は灯台の所有者であり、研究成果は研究者自身が好ましいと思う方向で商業化されていい。

ファーウェイは今後も科学や技術の世界に進歩をもたらすような基礎研究に資金を提供し続ける。このような協力関係はファーウェイの事業活動だけでなく、社会や産業全体に貢献するだろう。

=寄稿原文は英文媒体「Nikkei Asian Review」で

お断り 孟氏は2018年12月にカナダ当局に逮捕され現在保釈中です。孟氏本人が寄稿した事実と記載内容に報じる価値があると考え、寄稿を掲載します。

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