2019年9月19日(木)

IWC脱退、関西の反応は(もっと関西)
とことんサーチ

関西タイムライン
2019/1/24 11:30
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日本が国際捕鯨委員会(IWC)からの脱退を決定――。このニュースを見て、ふと思った。「関西の鯨肉関係者はこのニュースをどう受け止めているのだろうか」。大阪では刺し身はもちろん、「関東煮」と呼ばれるおでん、ハリハリ鍋など鯨肉を使った食文化が色濃く残る。和歌山には国内有数の捕鯨地、太地町(たいじちょう)もある。関係者の声を聞いてみた。

「商業捕鯨の拠点で捕られた肉が、どの程度回ってくるのか読めない」。大阪市でクジラ料理店「勇魚(いさな)」を営む女将の西極由美さんはIWCからの脱退について、不安そうな表情を見せていた。

日本政府は6月にIWCから離脱し、7月から領海や排他的経済水域(EEZ)で商業捕鯨を再開する方針だ。これまではIWCの管理の下、南極海や太平洋における調査捕鯨という形で、主に「クロミンククジラ」や「ミンククジラ」、「イワシクジラ」を調達していた。ただ、日本の領海やEEZで果たしてクジラがどこまで捕れるか不透明とされ、料理店にとっては食材変更の問題が浮上しかねない。

クジラといってもすべてが食用に向くわけではなく、料理店は提供する料理に合わせて最適なクジラの種類や部位を選んでいる。部位なら下顎の周囲でハリハリ鍋に合う「鹿の子」、ベーコンに向く腹部の「ウネス」などだ。「コロ」と呼ばれる皮はおでんに入れると、だしのうまみが引き立つ。勇魚では、クジラの刺し身やユッケなどを提供するが、主にクロミンククジラの赤身を使っている。

次に大阪市内にある1967年創業のクジラ料理の老舗「徳家」を訪れた。徳家の看板はだしの味がうす口のハリハリ鍋。鍋のコースは仕事帰りのサラリーマンに人気だ。IWCからの脱退について、女将の大西睦子さんに聞くと「寝耳に水。国際社会の中で共存しながら、良い食材を適量確保していくことが重要だと考えている」と述べた。

大阪のクジラ料理関係者の間ではIWCの脱退はやや不安視されているようだ。では、捕鯨地はどうなのだろうと思い、和歌山の太地町に赴いた。

太地町は江戸時代に網、投げやりを使った古式捕鯨で栄えた「クジラの町」だ。現在は近海でIWCの管理対象外の「コビレゴンドウ」や「ハナゴンドウ」といった小型のクジラを捕獲している。これらの鯨肉は地産地消され、域外にはあまり流通しない。

町内の「くじらの博物館」近辺で、ある女性の町民にIWC脱退について意見を聞くと「生産者の経営が安定する方向につながればよい」と期待を寄せた。やはり太地町は捕鯨の町らしくIWCの脱退に伴い、捕鯨の自由度が増すことを期待する向きが多いのだろう。和歌山県の仁坂吉伸知事も、IWC脱退に支持を表明していた。

IWC脱退で実際、捕鯨はどれくらい可能なのだろうか。下関海洋科学アカデミーの石川創・鯨類研究室長は「イワシクジラは日本のEEZの外でないと捕獲は難しいが、ミンククジラなどは日本近海でそれなりに捕獲できる」と指摘する。一方、東海大学の大久保彩子准教授は「国際社会から国連海洋法条約の違反を問われる可能性がある。得るものが少ないうえ、捕鯨の規模も小さくなるリスクが増えた」と話す。

65年度に20万トンを超えた国内消費量は82年のIWCによる商業捕鯨のモラトリアム(一時停止)や若者のクジラ離れなどの影響で大きく減少。このところ4千~6千トンで推移する。こうした状況でも関西では、酒かすとともにクジラを煮込む兵庫の「かす汁」、和歌山の「竜田揚げ」など大阪以外でもクジラ料理を伝承してきた。

国際秩序からの離脱による流通の変化が食文化にどう影響を与えるのか、注目されそうだ。

(大阪経済部 杜師康佑)

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