2019年6月18日(火)

スイスの村に世界が熱視線、ダボス会議開幕

2019/1/22 22:21
保存
共有
印刷
その他

【ダボス(スイス東部)=細川倫太郎】スイス・ジュネーブから電車で約5時間。スイス東部の山岳リゾート、ダボスは世界経済フォーラム(WEF)主催で22日開幕した「ダボス会議」の舞台だ。第一線で活躍する政治家やビジネスリーダー3000人以上が一堂に会し、世界経済や環境問題などについて意見を交わす。会期中の4日間、人口約1万人の小さな村に世界の視線が注がれる。

ダボス会議期間中は村を巡回する無料シャトルバスが運行している

ダボス会議期間中は村を巡回する無料シャトルバスが運行している

2018年のダボスは近年まれにみる大雪に見舞われたが、19年の天気は良好だ。開幕前日の21日から村は慌ただしい空気に包まれていた。政府要人らを乗せた車がスムーズに通れるように雪かきをする人、会場設営の最終確認をするスタッフ――。「またこの季節がやってきたわね」。ダボスのレストランで働く女性は準備に大忙しだ。

宿泊施設の半年以上前から予約でいっぱいで、この時期だけ1泊100万円以上に達するホテルもある。会議場は村の中心に位置し、会期中は参加者やメディア関係者向けに無料シャトルバスが村を頻繁に巡回している。

村にはグローバル企業のブースがあちらこちらに設置され、自社サービスや商品をPRしている

村にはグローバル企業のブースがあちらこちらに設置され、自社サービスや商品をPRしている

フェイスブック、セールスフォース、ドイツ銀行――。村を見渡すと、至る所に企業の立派なブースが目に入ってくる。ダボス会議は新規顧客の開拓に向け、自社商品やサービスをPRする絶好の場でもあるのだ。

冬はスキー、夏は避暑を求めて訪れる客でにぎわうダボス。だが、交通の利便性がいいわけではなく、宿泊施設も限られている。なぜ、この村に世界のトップがわざわざ足を運び、会議が開かれるようになったのか。

答えは「膝をつき合わせて議論を深めるには最適な場所」(WEF)だからだ。ダボスの周りには娯楽施設などはなく、外からは閉ざされている。一方、街中には大きな会議場がある。世代や肩書を超えて、静かな環境で集中して話し合える。日本で言えばお寺にいるような感覚だろうか。WEFのクラウス・シュワブ会長はこの点に目をつけ、1971年からダボス会議を始めた。

25日までに350を超える討論会や、演説が予定されている

25日までに350を超える討論会や、演説が予定されている

ダボス会議には毎年テーマがある。今年は「グローバリゼーション4.0 第4次産業革命時代におけるグローバル構造の形成」。第1次は蒸気機関による工場、第2次は電力を使った大量生産、第3次はインターネットの普及、そして現代は人工知能(AI)やビッグデータなど最先端技術が登場している。

一方、世界を見渡すとトランプ米大統領のような自国第一主義を唱えるリーダーが生まれ、その波は各地に波及している。酷暑や豪雨など急激な気候変動の影響が広がり、アフリカや中東では難民が増加の一途をたどる。最先端技術を生かしながら国家や企業、個人が連携して、これらの課題にどう立ち向かうのか。今回のダボス会議の最大の主眼である。

参加者にとってダボスのもう一つの目的は、人脈づくりだ。早速、街中や会議場で名刺交換している人は多く、その場で商談が決まることも少なくないそうだ。会議場には基本的に秘書など随行者の入場は制限され、あちらこちらでテレビや新聞に出ている有名人が一人で歩いている。立ち話をした中国のIT(情報技術)企業幹部は「この自由な雰囲気が提携などの決断を後押ししてくれる面はある」と話す。

毎日行き交う通行人や車が事故を起こさないように除雪車が活躍している

毎日行き交う通行人や車が事故を起こさないように除雪車が活躍している

今年は当初参加を予定していたトランプ米大統領の欠席が決まった。WEFは残念に思っている様子で、一部のメディアからは「話題性に乏しい」との声も。だが、スイス公共放送の記者、フレディ・クシュタイガー氏は「むしろダボス会議を成功に導く追い風になる。人々の注目を独占してしまう人物がいない機会に、世界経済など重要な課題についてきちんと議論すべきだ」と強調する。

ダボス会議は一部のエリート層だけ集まる「金持ちクラブ」との批判が常につきまとう。株主、従業員、貧困層、女性、子ども――。国際政治ショーと企業PRの色合いも帯びるイベントで、様々な立場に目配せした議論ができるか。リーダーたちの言葉に注目だ。

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報