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太陽に新たな発見 「兄弟星」見つかる

日経サイエンス

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太陽は今から46億年前、ガスと塵(ちり)の雲の中で物質が凝集して誕生した。同じ雲から、ほぼ同時期に数百~数万個の恒星が生まれたとみられるが、それらの兄弟星は長い年月の間にかなたに吹き飛ばされたり、天の川銀河の中心を巡る公転速度のわずかな違いのために徐々に離れていったりして、太陽の周囲から消えた。近年、そうした「太陽の兄弟星」が発見され、太陽の系譜が明らかになってきた。

生物学者がDNAや遺伝形質を調べて系統図を描くように、天文学者は星々の化学元素の比や運動のパターンを調べ、星どうしのつながりを明らかにする。米タコマ・コミュニティ大学のイバン・ラミレス教授は、恒星の化学組成と、天の川銀河内を移動する速度から兄弟星の候補を約30個選び出し、さらに詳しく解析して、2014年に太陽の兄弟星を発見した。

発見したのは、ヘルクレス座の方角に見えるやや青みがかった星だ。太陽よりも質量が約15%大きいだけで、ほぼ同じ大きさ。太陽のすぐ近くで形成されたとみられるが、現在は110光年離れた位置にある。双眼鏡で夜空を見上げれば、ヘルクレスの肩の上、こと座のベガの近くに見える。

現在、欧州宇宙機関(ESA)の探査機ガイアが、天の川銀河の3Dマップを作成するため、全天の10億個の恒星の光度と正確な位置を観測している。その巨大な恒星データベースを調べれば、行方不明の太陽の兄弟星の半数が見つかるだろうとラミレス教授は予測している。このほか、太陽と兄弟星の材料となった元素を供給した「母なる星」の存在も明らかになっている。

太陽と兄弟星がそれぞれ核融合によって輝き始めて間もなく、それぞれの周囲で塵と微粒子が合体し始め、数々の惑星が生まれた。地球は太陽誕生から3800万年~1億2000万年後に形成されたと考えられている。このころは太陽の近くに兄弟星があり、兄弟星の惑星を太陽が奪い取っていた可能性もあるという。太陽はずっと独りぼっちだったわけではない。今後、太陽から最も遠い太陽系外縁部の天体の研究が進めば、太陽が奪い取った惑星が見つかるかもしれない。

宇宙にはブラックホールなどのエキゾチックな天体が多くあり「太陽を含めた恒星に関しては、問題は総じて解決ずみだという人もいる」と、米民間科学研究所、フラットアイアン研究所のメーガン・ベデル博士は話す。「だが、わかっていないことは依然として多い」。

(詳細は現在発売中の日経サイエンス3月号に掲載)

日経サイエンス2019年3月号

著者 :
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 1,440円 (税込み)

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