2019年8月23日(金)

仮想通貨 しくじり芸人たちの告白
仮想通貨のミライ(1)

仮想通貨のミライ
(4/4ページ)
2019/1/28 2:00
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今でもボロボロになるまで専門書を読み込み、仮想通貨を勉強した結果、行き着いたのが「募金」だ。

ネムが日本円で戻ってきたときのツイートには喜びがあふれている=トキさんのツイッターより

ネムが日本円で戻ってきたときのツイートには喜びがあふれている=トキさんのツイッターより

海外協力を支援するボランティア団体、ピースウィンズ・ジャパンとの出会い。イラクに募金しようとすると高い手数料を払うと聞いた。その手数料があれば、さらに活動できるのに……。仮想通貨であれば手数料は無料。「助けを求めている人に仮想通貨が役立つんだ!」。団体側に提案し、2018年12月、台風で被害の出た岡山県真備町に50万円相当のネムを募金した。値上がりすれば込めた想いは何倍にも膨らむ。「次は世界に」と考えている。

仮想通貨少女の世界進出は道半ばだが、仮想通貨が世界共通の決済手段だからこそ、高校3年生になった上川の思いは世界への道とつながった。

仮想通貨バブルの崩壊とコインチェックの流出騒動はセットになって、人々の脳裏に強く焼き付いた。取材した人が共通して使う言葉は「事件」。当時、誰もが2014年に起きたマウントゴックス事件を想像していたからだ。流出した仮想通貨は580億円相当で、マウントゴックス事件の約480億円を超えて過去最高。マウントゴックスは運営会社社長だったマルク・カルプレスは今でも法廷に立っている。

しかし、コインチェックはマウントゴックスと違う道を歩み始めた。コインチェックは刑事責任を問われず、利用者に流出した仮想通貨を日本円で返金した。返金総額466億円で、被害者は7~8割取り戻した計算だ。相次ぎ損害賠償訴訟を起こされたが、急成長したコインチェックの営業利益は537億円(2018年3月期決算)。返金できるだけの利益を稼いでいた。

藤崎マーケットのトキも預けたお金が「7割ぐらい返ってきました。ゼロになると思っていたので。返ってきただけなのに、儲かったような顔してました(笑)」。これだけの大騒動を引き起こしたコインチェックは倒産せず、全額ではないものの顧客に被害も補償した。セキュリティがずさんで、経営が稚拙だったというのが仮想通貨に味噌を付けた構図だ。

■日本円よりいいよ

「『なんか、またやりたい』と気になっている。仮想通貨自体は本当に良いものですよ。手数料もかからないし、一瞬で送金できるし、『日本円』と比べると絶対こっちの方が良いのに」。トキは実際、別の仮想通貨をまだ残している。その理由は「また注目される日が来るんだろうなと思っている」から。

上川さんはSNSを通じ、現在でも仮想通貨について発信している=上川さんのツイッターより

上川さんはSNSを通じ、現在でも仮想通貨について発信している=上川さんのツイッターより

日本円という貨幣で作られた世界は手数料もかかるし、預金金利も付かない、ある面では非効率ともいえるシステム。今の若者に映る現代の金融システム像だ。それを正面から否定しにかかったのが仮想通貨だった。「決済」という機能に未来を感じたからこそ、仮想通貨に価値が生まれ、投機マネーまで呼び込んでしまった。

 仮想通貨を実現した技術はブロックチェーン。分散型台帳と呼ばれる新技術は今まで主流だった中央集権型の思想を根底から覆す威力が潜む。長い道のりのまだ入り口に差し掛かったところでつまづいたコインチェック。セキュリティや安定性でなお課題の残る分野だけに、貨幣を軸にした世界とのせめぎ合いがこれから本格化する。仮想通貨陣営のチャレンジャー、それを体内に取り込もうとするディフェンダーのストーリーを紹介する。

=敬称略、つづく

(水戸部友美)

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