2019年4月24日(水)

茶葉見極め 配合の妙 つぼ市製茶本舗(もっと関西)
ここに技あり 茶鑑定士

もっと関西
コラム(地域)
2019/1/21 11:30
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「茶鑑定士」の段位を持つ社員たちが様々な茶葉を黒い盆に入れ、色や形を見る。手触りを確かめ、香りをかぐ。白い茶わんに4グラムの茶葉を入れ、熱湯を注いで2分待ち、さじですくって口に含む。「ズッ、ズッ」と麺類をすするような音をたてるのは、空気を吸い込んで味や香りを感じやすくするためだ。

創業嘉永3年(1850年)のつぼ市製茶本舗(大阪府高石市)の検茶風景である。農家から仕入れた茶葉の特徴を検茶で見極め、3~10種類ほどの茶葉の合組(ごうぐみ)で一つの製品に仕上げる。

全国各地の茶葉をテイスティングし、味や香りを確かめる

全国各地の茶葉をテイスティングし、味や香りを確かめる

合組とはブレンドのこと。単一の茶葉で製品をつくると、それが切れたら販売を続けられない。色、香り、味と三拍子そろった茶葉を大量に仕入れるのも難しい。そこで個々の要素に優れた茶葉を組み合わせて総合点を高める。谷本順一社長(60)は「人間も完璧な人物はいないからチームで仕事をする。人間と茶は似ている」と話す。同じ製品の味が昨年と変わらないようにするのも大事な仕事だ。

味にもうま味、渋み、苦みの3種類がある。検茶では「味が軽い」「うま味が強い」といった言葉が飛び交う。

同じ農家の同じ畑でとれた茶葉でも摘んだ時期や位置、その年の天候で品質は変わってくる。新茶の仕入れで最も忙しい4~5月には、1日に2千種類も検茶をする。それでも社長の長男、谷本康一郎副社長(32)は「同じ茶葉に二度出会うことはない」と話す。一期一会だ。

うま味成分であるアミノ酸の濃度を測るなど科学的な分析もする。だが基本的にはヒトの感覚が頼りなので節制が求められる。味覚が変わらないよう、刺激の強いものや味の濃いものは食べない。

「好きなキムチも年に一度」(谷本社長)。検茶をする前は歯磨き粉も使わない。酒や整髪料の匂いもご法度だ。合組でどの茶葉をどの程度混ぜるかは、複数の鑑定士が話し合って決める。最終的な決定権は社長が持つが、合議制にしたのは個々人の感覚が体調によって変わるためだ。

谷本社長と康一郎副社長はともに茶鑑定士六段。全国茶業連合青年団が茶葉の品種や摘んだ時期、産地を当てる実技試験を実施しており、入社7年目の康一郎氏は昨年9月に40点満点中30点を取り、六段になった。

もっとも社長に言わせると「一人前になるには10年かかる」。日本茶製造・販売のプロとしては味などを鑑定する能力だけでは足りない。重要なのは値決めだ。茶葉の入札には味や香りなどに加え、相場や同業他社の購入意欲も考慮して臨む。これらを総合し、値段という点数をはじき出す能力が求められる。

文 堺支局長 塩田宏之

写真 山本博文

カメラマンひとこと 茶鑑定士と聞いて想像したのは年配者による検茶風景だ。ところが取材に応じてくれたのは30代の有段者。目の前に並ぶ美しい緑に相対する姿は、さながらベテランのようだ。盆には各地の茶葉が盛られていた。それぞれの異なる色合いを強調するため脚立の上から撮ることに。芳醇(ほうじゅん)な香りに包まれながらシャッターを切った。

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