2019年4月25日(木)

上場迫る、米ウーバーの「稼ぎ方」を解剖

CBインサイツ
コラム(テクノロジー)
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2019/1/21 2:00
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CBINSIGHTS

 今年前半に上場を検討している米ライドシェア大手のウーバーテクノロジーズ。未上場ながら企業価値が10億ドルを越える「ユニコーン」で、世界最大の地位は中国の新興メディア、バイトダンスに譲ったものの、今年最大の大型上場となる可能性が高い。現時点の推定企業価値は720億ドル。その源泉はどこにあるのか。日本ではあまりなじみのないウーバーはどう稼いでいるのか。膨大な公開資料を基に分析するCBインサイツの調査で、その実態を解剖する。

この業界ではコストを低く抑えておけるかが成長のカギとなる。ウーバーは運転手を獲得するために巨額の費用を惜しみなく投入してきたが、ウーバーの運転手の離職率は月13%近くに上る。

日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週1回掲載しています。

ウーバーの事業で最も利益を上げて成長しているのは料理配達サービス「ウーバーイーツ」だ。

2019年に新規株式公開(IPO)を控えるウーバーの収益構造や多額のコストとの見合いをもっとよく理解するため、財務や利用者に関する公表済みのデータ、ウーバー幹部の発言、ブラッド・ストーン氏の著書「UPSTARTS UberとAirbnbはケタ違いの成功をこう手に入れた」などに注目した。

■ウーバーの仕組み

ウーバーの本社(米カリフォルニア州)

ウーバーの本社(米カリフォルニア州)

「両面性市場(The two-sided marketplace)」とは、インターネットを使うビジネスモデルの一つだ。ウェブサイトやアプリなどテクノロジーの媒介で買い手と売り手をつなぎ、取引ごとに手数料を得る。両者がより素早く、強力につながるようにすれば、ビジネスが成り立つ。

両面性市場で最初に大成功したのは米イーベイだ。今ではウーバーや民泊世界最大手の米エアビーアンドビーなどの企業のおかげで、両面性市場の人気はますます高まっている。

こうした企業は、従来の仕組みに改良を加えている。イーベイは世界中の人と何でも売買できるようにし、エアビーは世界中の人と部屋を貸し借りできるようにした。そして、ウーバーはタクシーの乗客と運転手が路上で出くわすという運に頼ることなく、互いを見つけられるようにした。

米ベンチャーキャピタル(VC)、ベンチマークのゼネラルパートナーで、ウーバーに早い段階で投資したビル・ガーリー氏は、両面性市場ビジネスを評価する際に考慮すべき10項目を挙げている。

1、顧客の体験の質は改善されているか
2、経済的なメリットを提供できているか
3、このテクノロジーは市場をさらに強力にできるか
4、現在の市場は断片化されているか
5、サプライヤー契約が大きな障害になっているか
6、市場に十分な規模があるか
7、市場が拡大する余地はあるか
8、そのプラットフォームでどれほど頻繁に取引されているか
9、どうやって稼ぐのか
10、ネットワークに加われば、そのネットワークはさらに強力になるか

ガーリー氏によると、10項目のうち7~8項目を満たせば、そのビジネスは成功する確率が高い優れた投資になる可能性がある。

ウーバーの二面性市場の主な強みは、効率の良さだ。

営業許可証を発行する従来のタクシー制度は市内のタクシーの台数を一定に抑え、強制的に足りない状態にすることで運営している。このため、タクシーの運賃は高く、夜遅くや大雨など必要時には周りに1台もいないように思える。しかも、この問題は徐々に悪化している。都市の人口は増えているのに、タクシーの数は増えていないことが多いからだ。

これに対し、ウーバーはネットワークが拡大するほど価値が高まっている。ウーバーにとって成長とは、車を拾うまでの時間を短縮し、走行している運転手を増やし、料金を安くすることだからだ。そうすれば、売り上げもおのずと増える。これは理想的なプラットフォームビジネスの基準を全て満たす。

ウーバーの本質的な価値は信頼だ。従来のタクシーでは、流しで客を乗せるか、客からの電話で要請を受けて配車されたかによって運賃が決まる。言い換えれば、しっかりとした仕組みがなく偶然に近い形で見つけるか、配車会社の仲介で直接ルートが決まるかどちらか一方の「供給」手段により、「需要」を満たす。

ウーバーは変動する需要に最適な供給で応じられるようになる。供給が少ない時間帯に料金と運転手への奨励金を引き上げることで、稼働している運転手を増やし、乗客を拾えるようにしているからだ。

これには顧客の需要をコントロールする効果もある。割高な運賃を支払いたくない人は他の交通手段を見つけるが、そうではない人は割高な運賃を支払うからだ。

ウーバーはこのシステムにより、働く時間とエリアを定めるのではなく、好きな時間に働く契約者を雇い続けることもできる。これはコスト抑制だけでなく、離職率の高い運転手を補充し続ける手段としても重要だ。

ウーバーの最大の運営コストは運転手だ。自動運転車の実用化にこぎ着ければ、同社のビジネスモデルをさらに変える可能性がある。運転手の人件費が不要になれば、ウーバーは運賃のさらに75%を懐に入れることができるようになる。

■ウーバーのコストセンター

ウーバーは運転手に対し、社員ではなく独立した契約者として労働の対価を支払う。ウーバー側は車を所有せず、契約者が自家用車を持ち込む。同社は運営に必要な現物資産を全く持たない。供給と需要が合うように調整し、取り分を得るだけだ。

こうしたウーバーの事業運営モデルは、結局はかなり高くつく。ウーバーの業績が今も赤字なのは、有名な話だ。同社は2018年7~9月期の決算でまたしても赤字を計上した。売上高は前年同期比40%弱増の29億5000万ドルだったが、会計基準(GAAP)に照らせばなお10億ドル以上の赤字だった。その理由は以下のようなものだ。

・絶え間ない事業拡大:ウーバーは世界制覇を目標に掲げ、先行者利益があると信じている。とはいえ、これは事業の立ち上げやロビー活動、不慣れな市場での争いに数億ドルを費やす理由にはならない。

・ライドシェアのコモディティー化:ウーバーは有益な知的財産をほとんど持たない一方、進出先の地元ライドシェアは市場を独占したいと考える。このような地元勢との競争に数億ドルを費やす。

・運転手の離職:離職率は月13%近く。新規採用や引き留めのためのコストが高くつく。

上場が迫り、投資家はウーバーの収益力に不安を募らせている。そこで、ウーバーは配車サービスだけでなく自転車やスクーター、公共交通機関も取り込もうとしている。

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