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[FT]消費財大手、経営者交代相次ぐ

FT
2019/1/18 16:58
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Financial Times

世界の消費財大手で経営者の交代が相次いでいる。アクティビスト投資家の圧力が高まるなかで、消費者の購買行動がスマートフォンの普及で大きく変わっていることが背景にある。

この6カ月だけでも、英蘭ユニリーバ、米ペプシコ、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ、独バイヤスドルフ(日用品)において最高経営責任者(CEO)が退任した。少し前には、ネスレ、米モンデリーズ・インターナショナル(菓子)、米キャンベル・スープで経営陣が交代している。

英蘭日用品大手レキットベンキーザーのCEO退任を表明したラケシュ・カプール氏=ロイター

英蘭日用品大手レキットベンキーザーのCEO退任を表明したラケシュ・カプール氏=ロイター

今週は、漂白剤ドメストやコンドームのデュレックスの製造業者として知られる日用品の英蘭レキットベンキーザーを率いた2人の経営者が予想外の辞任を表明した。CEOのラケシュ・カプール氏は16日、2019年末までに辞任することを明らかにした。同氏の前任者として多くの称賛を受けたバート・ベクト氏が、欧州投資ファンドのJABホールディング(M&Aに積極的で、キューリグ・ドクター・ペッパーの親会社でもある)のCEO職辞任を表明した翌日のことだった。

「一つの時代が終わりつつあると感じざるを得ない」と米投資銀行ジェフリーズで長年消費財企業のアナリストを務めるマーティン・デブー氏は語る。「次世代の経営者は、当代経営者にはおそらく不可能なレベルでデジタルに精通していることが求められるだろう」と語る。

辞任を表明したCEOの中には、ペプシコのインドラ・ヌーイ氏やユニリーバのポール・ポールマン氏など、過去10年以上成功を収めた経営者もいる。しかし、上海からマンチェスターまで、スーパーマーケットの通路に商品を並べる消費財の巨大企業は今、明らかに重大な課題に直面している。中国で騰訊控股(テンセント)のメッセージアプリ「WeChat(ウィーチャット)」が全国チェーン展開する食料品店よりもはるかに重要な販路である時代にあって、古いノウハウやマーケティング戦略は率直に言ってもはや役に立たない。

ペプシコのCEOを退任したインドラ・ヌーイ氏=ロイター

ペプシコのCEOを退任したインドラ・ヌーイ氏=ロイター

売上高伸び率は業界平均で年2~3%と、10年前の6~8%から低下。プラスチック包装から原材料まで経費が上がり続けるなかで、企業は利益を確保するため値上げを余儀なくされている。

「大手消費財ブランドにかつての力はない。消費財の分野は特に市場参入のハードルが下がっている」と、英大手資産運用会社で一般消費財分野を担当するポートフォリオ・マネジャーは説明した。多くのCEOが同時期に60代に達したという偶然の要因もあるが、ビジネス環境は広範囲で変化している。「業界は彼らが身を投じた30年前とは様変わりしており、次なる戦いに立ち向かう意欲はうせている」と同氏。

売り上げ停滞の一因は、欧米のミレニアル世代(20~30代)消費者の新しい食習慣や食料品購買行動だ。この世代はしばしば旧来の大手ブランドを避け、より本物で、健康志向で、地域に密着しているとみられる新興銘柄を選ぶ。

要するに、消費財企業にとって、従来の商品を手直ししたり、アップデートしたりして高値で売る昔ながらの戦略は通用しなくなった。一方で、安売り店大手の独アルディやリドルはプライベートブランド(PB)商品を押し出し、米アマゾン・ドット・コムや中国のアリババ集団はネット通販を小売りの主流にした。

英蘭ユニリーバのCEOを退任したポール・ポールマン氏=ロイター

英蘭ユニリーバのCEOを退任したポール・ポールマン氏=ロイター

新時代の代表選手は米ヘイロー・トップ・アイスクリームだ。インスタグラムを駆使したマーケティングと健康志向の宣伝文句で、3年もたたずして米国で6番目のアイスクリームブランドに成長した。ユニリーバは対抗策として、やっと昨年、同様の低カロリー・高プロテインの製品「ブレイヤーズ・デライト」の販売を始めた。

厳しい状況を切り抜けるため、業界の大半は大幅なコストカットを強いられてきた。その多くは、ダン・ローブ氏率いる米投資ファンドのサード・ポイントやポール・シンガー氏率いるエリオット・マネジメントなど、アクティビスト投資家からの圧力を受けた動きだ。

近年、米国勢の間で、企業経営に対する哲学の違いがあらわになっている。その典型例が、米3Gキャピタルの支援を受ける食品大手クラフト・ハインツだ。同社はライバルである英蘭ユニリーバやネスレよりも冷徹にコストカットを推し進める。

米国の飲食料品企業の時価総額がより低いこともあり、これまでアクティビスト投資家は欧州よりも米国でより多くの成果を挙げている。サード・ポイントはキャンベル・スープの取締役会に2人を送り込み、次期CEO指名に影響力を行使できる立場にある。一方、ネスレに対する影響力の行使は最近影を潜めている。エリオット・マネジメントのペルノ・リカールに対する圧力行動はまだ始まったばかりだ。

とはいえ、アクティビスト投資家の脅威があるだけでも行動を促すに足り得る。役員会は迅速に問題を解決しなければ、変化を迫るヘッジファンドの標的になるとの認識を一段と強めている。

役員会のトップ人材探しに助言する英ブカナン・ハーヴィーのサムエル・ジョハル氏は、レキットベンキーザーのカプールCEOが辞任したのは、そうした事情かもしれないと語る。

カプール氏の在任中、任期前半は売り上げ成長が顕著だったが、近年は苦戦していた。17年にはフットケア製品立ち上げに失敗、ひどいサイバー攻撃、韓国でのスキャンダルなどに苦しんだ。直近では、同氏が約179億ドル(約1兆9600億円)かけて買収した米ミード・ジョンソンの粉ミルク製品のオランダ工場で製造が中断し、成長を妨げられた。

「ラケシュへの不満が株主の間でたまっていて、役員会はその不満に対処した」と前述のジョハル氏は説明し、「もし高まる不満を放置していれば、アクティビスト投資家による抗議に直面し、問題に対応できなくなっていただろう」と続けた。

レキットベンキーザーのクリス・シンクレア会長はカプール氏の職務遂行にはなんら問題がなく、単に、カプール氏自身が後進にバトンタッチする時が来たと感じたと明らかにした。

カプール氏自身は、1年前に実施した同グループのヘルス部門と家庭用品部門を分離したことで、新組織が今後のより良い成長の礎となると自信を語った。「これは素晴らしい分野であり、レキットベンキーザーには今後数十年に渡って、絶好のチャンスがある」と結んだ。

By Leila Abboud, Owen Walker, and James Fontanella-Khan

(2018年1月17日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2019. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.

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