オレオレ詐欺が凶悪化? 息子装う電話、2日後に強盗
東京都内の高齢夫婦宅に息子をかたって家にある現金を尋ねる不審な電話があり、2日後、押し入った3人組の強盗に数千万円を奪われる事件が起きた。専門家は「詐欺より手っ取り早く、暴力を使って金を奪う新たな手口の可能性がある」と注意を呼びかけている。

捜査関係者によると、9日、渋谷区の90代の夫と80代の妻が暮らす住宅に息子をかたる男から「病気になったのでお金が必要」と電話がかかってきた。家にある現金の額を尋ねられ、夫婦は相手が息子だと思い込んで「2千万円なら用意できる」と答えてしまった。
その後、息子と話して偽者だったと気づき、息子は9日のうちに警視庁に相談。同庁は多額の現金を家に置かないよう夫婦に防犯指導をした。
覆面をした男3人が夫婦宅に押し入ったのは翌々日の11日未明。夫婦を縛って現金数千万円と貴金属類を奪い、夫は顔を殴られてけがをした。
オレオレ詐欺などの特殊詐欺で、事前に相手を信用させるために「携帯電話の番号が変わった」「病気になって声が出ない」などと電話を入れる手口は「アポ電」(アポイントメントをとる電話の意味)と呼ばれる。
警視庁によると、2018年1年間に把握したアポ電は都内だけで3万件超。今回の事件はアポ電で多額の現金があることを確認して犯行に及んだ可能性が高いという。
高齢者の詐欺被害防止活動に携わる警視庁OBの鷹見昇さん(64)は「特殊詐欺への警戒が広がるなか、言葉巧みにだますのではなく、手っ取り早く暴力で現金を奪う手口が今後増える恐れがある」と懸念する。
夫妻宅の近隣住民によると、近所では18年末ごろに同様の不審電話が相次いでいた。鷹見さんは「アポ電は同じ地域に集中する傾向があり、住民同士で情報を寄せ合って予兆を共有することも対策として有効だ」と話している。