2019年2月20日(水)

組織的関与、疑い強まる 勤労統計の不適切調査

統計不正
経済
2019/1/17 23:34
保存
共有
印刷
その他

賃金や労働時間の動きを示す毎月勤労統計の不適切な調査問題で、厚生労働省は17日、総務省の統計委員会などに一連の問題を報告した。調査手法を変えた動機などは「調査中」との説明にとどまった一方、根本匠厚労相は2015年から調査の手引が不適切な手法を隠すかのように修正されていたことを認めた。厚労省の組織的な関与への疑いは強まっている。

「毎月勤労統計」の不適切調査について開いた総務省統計委員会で発言する西村委員長(17日午前、東京都新宿区)

「毎月勤労統計」の不適切調査について開いた総務省統計委員会で発言する西村委員長(17日午前、東京都新宿区)

報告は17日午前、総務省の統計委員会から始まった。厚労省は12~18年の統計数値を修正して公表すると表明。統計委員会はこれを了承するとともに、問題となった東京都にある大規模事業所の抽出調査を全数に切り替えることを「可及的速やかに」実施するよう求める意見書を出す。

だが、厚労相の諮問機関である労働政策審議会を含め、同省の報告は11日に公表した内容にとどまった。不適切な調査の動機や組織としての関与は「調査中」との回答にとどめた。

今後の焦点は組織としての関与だ。疑わしい事実は次々と明らかになっている。その一つが調査に使う手引の記述だ。不適切調査が始まった04年からの手引には「東京は抽出調査で良い」と明記されていた。根本厚労相は17日、この表現が15年の手引から削られていたことを認めた。

この直前にあたる14年には統計委員会が、毎月勤労統計の調査手法が正しいか調べることを決めていた。調査対象となってルール違反が発覚することを恐れ、修正したとの見方が出ている。

16年10月には総務省に提出した調査手法に関する厚労相名の書類で「500人以上の事業所は全数調査」とルール通りであると明記していた。厚労省の虚偽と言える。統計の司令塔とされる総務省への報告を現場の判断だけで出すことは考えにくい。

18年1月調査分から都内の数値を全数調査に近づける復元加工をした際には、この事実を公表していなかった。公表に関する事項は、管理する立場の職員がチェックするのが通常の流れだ。

復元加工があった18年の統計は賃金の伸びが高くなった。立憲民主党などの野党が17日開いた合同ヒアリングでは、議員から「日本の国際信用にも関わる」との批判が出た。

自民党は17日の総務会で、不適切調査を受けて修正した19年度予算案を了承した。雇用保険などの追加給付に伴う国庫負担の増加に対応する。一般会計総額は現行案より約6.5億円増の101兆4571億円。公明党も同日の中央幹事会で了承した。政府は昨年末に予算案を閣議決定しているが18日に決定し直す。

厚労省が内部でまとめた最新の推計値では過少給付に対応するシステム改修などに195億円かかり、過少給付はのべ約2000万人、追加給付にかかる経費は約800億円にのぼる。ほとんどを労働保険の特別会計から支出する。17日の労政審では労使双方から「事務費を保険料で負担するのはいかがなものか」との批判が相次いだ。

過少給付だった人への追加給付は難航しそうだ。金額を算出するシステム改修に時間がかかり、厚労省幹部は「18年度内の実施は困難」とする。

17日には根本厚労相がインフルエンザに感染し、18日の閣議を欠席することになった。厚労省が検討する鈴木俊彦次官ら幹部への処分もやや先になる見通しだ。一方で衆院厚生労働委員会の与野党の理事は閉会中審査を24日に開くと決めた。

短期間とはいえ閣僚が不在となれば、問題への対応も滞る。当面は混乱が続きそうだ。

保存
共有
印刷
その他

統計不信(上)「多忙」盾に ルール無視[有料会員限定]

2019/1/16付

統計不信(下) 社会変化に追いつけず[有料会員限定]

2019/1/17付

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報