日本電産・永守会長「尋常でない変化」

着実な成長を遂げてきた日本電産が業績予想の下方修正を迫られた。2019年3月期は従来の最高益予想から一転、6年ぶりの最終減益になる見通しだ。背景にあるのは中国事業での想定を超える逆風だ。中国での需要が急減し、車載向けや家電向けのモーター事業が急激に悪化している。
「尋常でない変化が起きた」――。17日夜に東京都内で開いた緊急記者会見で、永守重信会長は驚きを交えつつ足元の事業環境を説明した。今回の下方修正では9年ぶりの減収も見込む。
業績は順調な進捗だった。18年4~9月期は純利益が同期間として過去最高を更新。車載用や家電用のモーター販売が伸び、ロボット部品である減速機も好調だった。
追い風だった風向きが一変したのは18年11月。「11、12月と、ガタンガタンと落ち込んだ。受注や売り上げ、出荷のベースで、世界的に全セグメントにおいて大きな変化が起きた」(永守氏)
日本電産は「米中貿易摩擦に端を発した経済の不確実性が、中国経済を中心とした世界の実体経済に深刻な影響を及ぼしてきている」と指摘した。中国を含むアジアの売上高は、連結全体の約半分を占めており、業績へのインパクトは大きい。
たとえば、重点分野に据える車載用モーター。18年11月の中国での生産は前年同月に比べて「全体でみると3割ほど減少した」(吉本浩之社長)という。エアコンなど家電用モーターも18年11~12月は3~4割減少した。現地でのエアコン関連の在庫は約4000万台とされ、永守氏は「19年1~3月期か、場合によっては19年4~6月期まで影響は残る」とみる。
今後は構造改革を急ぐ。従来の主力だったハードディスク駆動装置(HDD)向けモーターの工場などの転用や統廃合を進める考えだ。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘氏は「米中貿易戦争に伴う需要減は日本電産に限った話ではない」と指摘。来週から本格化する3月期企業の決算発表を前に「業績見通しを下方修正してくる企業は増える」との見方を示す。
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