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明治に天理、帝京…大学ラグビー王座交代のドラマ

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2019/1/17 6:30
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風通しのいい気風は他校にも影響を与えた。かつては非合理な風習が多かった明大も変わった。一例が、毎日の練習着を1年生が洗濯する習慣。筋力トレーニングや食事を終えて先輩の分まで洗濯をしていると、床に就くのは午前1時。朝練のために翌朝の起床は午前5時ごろだ。これでは体づくりに必要な睡眠が取れないと3年前に撤廃となった。「上級生と下級生がプレーのことを寮でぱっと話し合ったり……。いい文化が築けてきた」と祝原。育んできたコミュニケーション力や主体性は、決勝でのスクラムの修正、勝因となった組織守備で生きた。

王者帝京大も新たなステージへ

帝京大で心身を鍛えた部員からは、今年のワールドカップ(W杯)に出場しそうな選手も多く生まれた。15年W杯以降、坂手淳史、姫野和樹、流大、松田力也、中村亮土の5人が新たに日本代表に定着。リーチ・マイケル主将がリーダーシップを褒めるメンバーでもある。代表への人材供給という点でも帝京の功績は大きかった。

10連覇を逃し、観客席にあいさつする岩出監督(中央)と帝京大フィフティーン。そのチームづくりは他校にも影響を与えた=共同

10連覇を逃し、観客席にあいさつする岩出監督(中央)と帝京大フィフティーン。そのチームづくりは他校にも影響を与えた=共同

その育成力を最も評価していた一人が、エディー・ジョーンズ前日本代表ヘッドコーチだった。複数の関係者によると、ジョーンズ氏は前回W杯の後、代表強化で岩出監督に連携を求める予定だった。自国開催のW杯に向け、若年層の育成などを共同で進めようとしたものとみられる。ジョーンズ氏の退任で幻に終わったが、実現していればどんな形のものができていただろうか。

新たな王者が誕生し、大学ラグビーの一時代が終わった。田中監督は「できることなら帝京のような部員を育てたい。強いチームには文化、スタイルがある。それをつくっていきたい」と今後への構想を語る。近年の帝京大のように各校の見本となり、リーダーになれる人間を輩出する存在を目指すということだろう。

敗れた王者も、このままでは終わらないはず。「選手層がここ数年薄くなってきていた」とチーム関係者が指摘した通り、以前ほどの潤沢な戦力がないのは事実。ただ、9連覇の間にパワーと堅守のチームからダイナミックにボールを動かすスタイルに転換したように、また新たな形を模索していくのだろう。

岩出監督がスクラム練習を減らしたのは「若い選手の体に負担を掛け過ぎてはよくないのでは」という懸念もあったからだという。しかし「帝京に勝つにはスクラムだと思われているみたいやし、(これから我々も)メチャクチャ鍛えるよ」と監督はいう。それができる環境もできた。昨年完成したスポーツ医科学センターは国内最新鋭の機能を保有。けが予防や体づくりで再び他校に先んじる狙いだ。

両校のような人材や設備を「持てる者」が高め合い、一方で天理大のような「持たざる者」が伝統技法に最新の息吹を吹き込んで立ち向かえば、次の時代もまた名勝負が生まれるだろう。

(谷口誠)

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