2019年4月22日(月)

イチから分かるBrexit 英議会がEU離脱案否決

2019/1/16 5:07
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英議会は15日、欧州連合(EU)と合意したEUからの離脱案を否決した。英国のEUからの離脱は3月末に期限を迎える。英国がEUとの間で条件を定めずに離脱する「合意なき離脱」が現実味を増してきた。なぜ英議会は離脱案を否決したのか。英国のEU離脱(Brexit=ブレグジット)の背景や今後の影響などをまとめた。

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大きな混乱が生じそうなのに、なぜ英議会は離脱案を否決したのか=ロイター

大きな混乱が生じそうなのに、なぜ英議会は離脱案を否決したのか=ロイター

――そもそもなぜ英国はEUから離脱しようとしているのか。

「EUは発足時の基本理念として、域内でのヒト、モノ、カネ、サービスの4つの『移動の自由』を掲げた。2度の世界大戦を経て、欧州各国が緊密に統合することで域内の戦争をなくそうというのが原点にある。しかし、英国は島国ということもあり、大陸側の欧州諸国と統合することへの反対意見は根強い」

「それでも、英国はEUの一員として東欧などから移民を受け入れてきた。しかし、金融危機や経済の低迷などで雇用情勢が悪化すると、『移民に仕事を奪われている』『テロリストの流入につながる』などと移民への不満が強まった。EUの官僚的な体質や細かな規制、英国が負担するEUへの拠出額の大きさを問題視する声もあり、キャメロン首相(当時)がEU残留か離脱かを問う国民投票の実施を表明。16年6月23日に投票を実施した」

――結果は。

「離脱への賛成が52%で、わずかながら反対を上回った。この投票結果を受け、17年3月29日にEU側に離脱を通告した。EU条約では、離脱の通告から2年後にEU法の適用が切れる。このため、19年3月末が離脱の期限となった。ただ、企業や行政機関などの活動に支障が出ないように、英国とEUは20年末までを『移行期間』と定め、現状の規則や法制が適用され続けることで合意した」

――「合意なき離脱」とは何を指すのか。

「この『移行期間』が適用されるには、英国とEUが離脱条件で合意するだけでなく、英議会と欧州議会などで合意案が承認されなければならない。今回、英議会が離脱案を否決したことで、英国とEUとの間に離脱合意が結ばれない可能性が強まった。この場合、合意を前提にした『移行期間』はなくなり、19年3月末に完全に離脱しなければいけない可能性が強まった」

――「移行期間」がないと何が問題なのか。

「様々な法制や規制などの整備ができないことだ。これまでEUの一員だった英国では、EUの法制が適用されていた。しかし、英国が離脱することで、ヒト・モノ・カネ・サービスの自由な移動ができなくなる」

「例えば、大陸側の欧州諸国と英国が貿易取引をする場合、これまで必要がなかった関税の負担や通関業務などが発生する。これまでは英国で金融や製薬などの承認を取得すれば大陸側の欧州諸国でも適用されてきたが、離脱後は双方で取得する必要がある。本来、こうした不利益が生じないように移行期間で法制などを整備するはずだった」

15日、EU離脱案の採決を前に演説するメイ英首相=ロイター

15日、EU離脱案の採決を前に演説するメイ英首相=ロイター

――大きな混乱が生じそうなのに、なぜ英議会は離脱案を否決したのか。

「最大の問題は北アイルランド問題だ。アイルランド島は北部が英国領の北アイルランド、南部がアイルランドという独立国で、EUに加盟している。英国がEUから離脱すれば、英国領の北アイルランドもEUから離脱することになる」

「この場合、EUに加盟するアイルランドと、英国の一部である北アイルランドはヒトやモノの自由な移動ができなくなる。北アイルランドを巡っては、英国からの独立に賛成する勢力と反対する勢力とが紛争を繰り返してきた。北アイルランドとアイルランドとの間に通関などの『物理的な国境』が生じれば、再び情勢が不安定になりかねない」

――解決策はあるのか。

「英国のメイ政権がEU側との交渉でまとめた離脱協定案は、20年末の移行期間までに解決策が見つからなければ、英本土を実質的にEUに部分残留させる措置を盛り込んだ。そうすれば、アイルランド島での国境管理の必要性がなくなるからだ。しかし、EUに批判的な勢力から『永遠にEUの支配下に残る』との批判を受け、否決された」

EU離脱案採決後、デモを行う人たち=AP

EU離脱案採決後、デモを行う人たち=AP

――今後、どうなるのか。

「英議会からはEUとの再交渉や総選挙、国民投票の再実施などを求める声もある。しかし、離脱期限が迫る中で、いずれも時間的な制約がある。メイ首相は今回の議会採決の前、協定案が否決された場合には『英国は未踏の領域に入る』と警告していた。当面、混乱が続くことは避けられなさそうだ」

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