2019年8月23日(金)

スタジアム 観光の核に ガンバ大阪前社長 野呂輝久さん(もっと関西)
私のかんさい

関西タイムライン
2019/1/15 11:30
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 ■サポーターや企業からの寄付金により2015年に建設されたサッカーJ1のガンバ大阪の本拠地パナソニックスタジアム吹田(大阪府吹田市)。行政に頼らない前例の無い手法での建設で指揮をとったのは、当時ガンバ大阪の社長だった野呂輝久さん(64)だ。

 のろ・てるひさ 1954年三重県生まれ。77年名大経卒、松下電器産業(現パナソニック)入社。広報部長などを歴任。2012年スタジアム建設本部長としてガンバ大阪へ。13年社長就任。16年の退任後は大阪国際大の客員教授などを務める。

のろ・てるひさ 1954年三重県生まれ。77年名大経卒、松下電器産業(現パナソニック)入社。広報部長などを歴任。2012年スタジアム建設本部長としてガンバ大阪へ。13年社長就任。16年の退任後は大阪国際大の客員教授などを務める。

スタジアム建設本部長としてガンバ大阪にきたのは12年。サッカーに関わった経験は無かったが、4万人の観客が収容できるサッカー専用スタジアム建設への寄付金集めを任された。当初は苦戦した。13年にJ2に降格したこともあり、チームの収入も減るなど、取り巻く環境も厳しかった。

旧本拠地の万博記念競技場(同市)に新スタジアムの模型を置き、試合前の90分間、サポーターへの説明にあたった。いつも説明に立っていたから「募金のおじさん」と呼ばれるようになった。

13年9月に竹中工務店に発注。ただ、その時でも目標の140億円より約27億円少ない資金しか集まっていない状態だった。結んだ契約は資金が集まった分までしか造らない停止条件付きのもの。ホームページに「いまの資金の集まり具合だと、ビジョンもスタンドの屋根も無いスタジアムになりますよ」といった状況を示した画像も載せた。募金が集まると椅子が付き、屋根が付き……という画像も示し、寄付を募った。

寄付金が集まらないのならば、収容人員を少なくすればいいのではとの声もあった。それでも日本代表戦など大きな試合も開催できる4万人にこだわった。ビジネスとしてのプラスが大きく、関西の活性化につながると考えたからだ。

14年にチームがJ1に復帰。リーグ戦に加え、天皇杯、リーグカップ戦にも優勝し、3冠を達成した。チームの成績が向上すると、募金も急速に集まった。15年9月にスタジアムが完成。個人で募金をしてくれた人は約3万4千人に上った。まさにサポーターや地域の人たちの力で作り上げたスタジアムだった。

 ■出身は三重県だが、両親が大阪で知り合い、結婚していたこともあり、関西への思い入れは深い。

関西の活性化のため4万人規模のスタジアムの建設を譲らなかった

関西の活性化のため4万人規模のスタジアムの建設を譲らなかった

三重は言葉や文化は関西圏。家の中は関西弁だったし、私も吉本新喜劇が大好きだった。大学生活は名古屋で送ったが、同級生の就職先はトヨタ自動車が人気。ただ、私は関西に行きたかったので松下電器産業(現パナソニック)に入社した。「21世紀はエレクトロニクスの時代だ」という思いもあった。

大阪の会社に入り、関西で暮らすものだと期待した。だが配属先は東京に。その後は長年、企業向けシステムの営業を担当した。いろいろな分野の企業に出入りしていたので、そこで培ったノウハウや人脈は、法人からスタジアム建設の寄付金を募る際に生きた。

松下時代の大阪勤務は秘書と広報担当だった5年強。秘書時代は当時、相談役だった故山下俊彦元社長の担当となり、関西経済の復権にかける地元財界人の思いを間近で感じた。

 ■関西の活性化には「関西らしい"乗り"でアジアの成長力を取り込む」ことが重要だと語る。

25年の大阪万博に向け、アジアからの観光客を呼び込み、その人たちに関西は面白いと感じてもらわなくてはならない。それにはモノよりもコトが重要になる。スポーツでも試合内容はもちろん、試合前後のイベントなど、体育の延長だけではないエンターテインメントの発信が必要だ。スタジアムではプロジェクションマッピングなども実施している。

関西は歴史や文化など、コンテンツが豊富だ。加えて、大阪は商人の街で挑戦する気風もある。実際、インスタントラーメンの発明や阪急電鉄の創業者、小林一三さんが作り上げたビジネスモデルなど、全国に広がった革新的な取り組みは関西発のものが多い。こうした精神で関西の魅力あるコンテンツをアピールし、アジアからの観光客を引き付けることが大切だろう。

(聞き手は大阪・運動担当 関根慶太郎)

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