2019年3月22日(金)

欧州自動車にリストラの嵐、英のEU離脱が影

自動車・機械
ヨーロッパ
2019/1/11 7:31
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【フランクフルト=深尾幸生】欧州の自動車業界にリストラの嵐が吹き荒れている。英ジャガー・ランドローバー(JLR)は10日、英国を中心に4500人を削減すると正式に発表した。米フォード・モーターも同日、変速機やミニバンの生産を終了すると発表。数千人を削減する。個別の事情は異なるが、共通の背景に英国の欧州連合(EU)離脱などで欧州に広がる先行き不透明感がある。

JLRのへイルウッド工場(英リバプール郊外、18年9月)

JLRはリストラでEVなど次世代技術への投資を確保する(ジャガーのEV「Iペース」)

「地政学的な破壊などに直面し、未来を守るための決断だ」。JLRのラルフ・スペッツ最高経営責任者(CEO)は声明でこう述べた。

人員削減はまず英国で希望退職を募る。JLRは英国に約4万人の従業員を抱え、今回の削減はその1割以上にあたる大規模なものだ。同社は2018年にも1500人を削減した。

JLRがリストラする直接の理由は中国での販売不振だ。同社の18年の中国での新車販売台数は22%減った。米中の貿易摩擦に端を発する輸入車への関税の変動による市場の混乱や、高級車市場の競争激化の影響を受けた。

それでも英国がリストラの中心となるのは、中国の販売が回復しても英国からの輸出は競争力が低いと判断したからとみられる。JLRは18年10月にスロバキアに工場を開いた。英国からコストの安いスロバキアに生産移管を進めている。生産拠点としての英国の重要度は相対的に下がる。

同社はかねてEU離脱が英国生産に与える影響について懸念を表明してきた。EUとの間で関税が発生したり、物流コストが上昇したりするためだ。スペッツCEOは「『合意なし離脱』なら会社の利益を吹き飛ばし、数万人の雇用が危険にさらされる」と警告していた。

フォードはフランスやドイツ、英国、ロシアなど欧州の広い範囲にメスを入れる。仏ボルドーでは小型変速機の工場を8月に休止。ドイツ西部の工場ではミニバン「C―MAX」などの生産を止める。英国では現地の本社を金融事業の本社と集約する。人員削減は欧州の約5万人のうち数千人にのぼるとみられる。

フォードが大規模なリストラに乗り出す理由は欧州市場での長期的な販売不振だ。欧州ではフォードの主力の小型ハッチバックやミニバンの人気は低下。フォードの18年12月通期の欧州自動車事業は赤字になったもよう。欧州でのシェアは低下傾向にあり、18年1~11月の欧州主要18カ国での販売台数は前年同期比3%減だった。

今後も成長余地は少ない。調査会社のLMCオートモーティブによると18年の西欧の自動車市場は前年割れした。同社は19年を前年比0.8%増と予測する。ただしこれは英国のEU離脱が「合意なし」にならないことを前提としたものだ。

欧米メディアによると、フォードの欧州事業トップのスティーブン・アームストロング副社長は「離脱が悪い方向に進んだ場合、今回のリストラ策をさらに見直す必要がある」と述べた。工場の閉鎖も「テーブルから外れてはいない」という。

英国がEUから離脱する3月29日まであとわずか。暗い影が欧州の産業界を覆っている。

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