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フィギュア女子は「トリプルアクセル時代」

プロスケーター・振付師 鈴木明子

フィギュアスケートの世界では、五輪の翌シーズンに新しいスター選手や、大きなルール改正に伴ってこれまでにない戦い方をする選手が出てくることがある。今季はそれが顕著で、わかりやすい。紀平梨花(関大KFSC)が2018年12月のグランプリ(GP)ファイナル女子で、トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)に3回挑戦して2度成功し、13年ぶりに日本選手として初出場初優勝を果たした。同じく12月の全日本選手権女子でもトリプルアクセルを2度決めて2位になり、19年3月にさいたま市で開かれる世界選手権への初出場を決めた。

全日本選手権と同じ時期、モスクワではロシア選手権が開催されていた。女子ではともに14歳のアンナ・シェルバコワとアレクサンドラ・トルソワが高難度の4回転ルッツを跳び、それぞれ1、2位となったことも話題を呼んだ。

紀平はGPファイナルで、13年ぶりに日本選手として初出場初優勝を果たした=共同

成功例増え、研究や分析も進む

いよいよ女子選手は「トリプルアクセル時代」に入ったように思う。紀平だけでなく、23歳の細田采花(関大)も今季、トリプルアクセルを成功させた。難しいジャンプはある程度、ジュニアのころから跳べていないと難しいイメージがあるが、そうとは限らない。18年2月の平昌五輪では当時24歳の長洲未来(米国)が成功させ、現在22歳のエリザベータ・トゥクタミシェワ(ロシア)も今季、コンスタントに跳んでいる。トリプルアクセルは「基礎があって練習を積んでいけば跳べるようになるジャンプ」という認識が浸透し、本格的に女子選手はトライしていくと思う。

インターネットであらゆる映像を見られる。女子選手のトリプルアクセル成功例も増えて、コーチたちの研究や分析も進むと思う。女子選手でトリプルアクセルを成功させたケースは30年近く前からあるとはいえ、パイオニアである伊藤みどりさんの高さのあるジャンプはまねしようとしてもできなかった。

ロシア選手権女子を制したシェルバコワ(中央)。左は2位のトルソワ、右は3位のアリョーナ・コストルナヤ=共同

さらに今後、女子選手も一気に「4回転ジャンプ時代」に突き進むのかといえば、まだ具体的にイメージできない。ロシア選手権で4回転ルッツを決めたシェルバコワとトルソワの2人については、「スリムで小柄な体型を生かした4回転」に見える。この2人が今後シニアに上がり、身体が成長したときに現在と同じようなジャンプが跳べるかが、未知数である。

高難度の4回転ジャンプを成功させれば、高得点を獲得し大会で優勝できるだけの"爆発力"がある。だが、映像で確認すると、4回転を失敗してしまったときのリスクが大きく感じた。これからの成長に期待したい。紀平はトリプルアクセルを失敗した場合でも、そのほかの部分も一つひとつ確実に加点を積み重ねていくことによって、今シーズン結果を残している。

坂本、安定感ある演技が勝因

坂本花織(シスメックス)はショートプログラム、フリーともにミスがなく、安定感のある演技で勝利を勝ち取った。僅差の戦いになれば、1つのミスが大きく勝敗を分ける。大きなミスが少ない試合を着実に続けてきた結果、全日本選手権での評価につながったと思う。紀平とはまた違った持ち味やダイナミックなジャンプがある坂本がトリプルアクセルを跳んだら、どのようになるのか楽しみだ。

全日本選手権女子で初優勝した坂本(中央)。左は2位の紀平、右は3位の宮原=共同

15位に終わってしまったものの、米国に練習拠点を移した本田真凜(JAL)は肉体改造に取り組み、以前はタイミングだけで跳んでいたジャンプにスピードが加わった。筋力がつくとスケーティングのスピードも変わる。身につけた筋力の使い方が発展途上のままシーズンを迎えてしまった印象がある。そのあたりのポイントを今後つかんだら、面白い存在になる。本田のコーチは、ネーサン・チェン(米国)も指導するラファエル・アルトゥニアンさん。彼女の成長も長い目で見守りたい。。

全日本選手権が4連覇で途切れた宮原知子(関大)、ロシア選手権で7位だったエフゲニア・メドベージェワも国内での代表争いが厳しいなか、根本から見直す改革に取り組んでいる姿も見られる。五輪の4年間のサイクルを考えたとき、さまざまな変化に対応し、見直さなければならない時期は必ずある。

私も長い競技生活の中で、よい時期と苦しい時期を経験してきたが、苦しい時期を乗り越えたときに成長があると感じた。選手は焦ることなく、一歩ずつ前に進んでほしい。そして、周りは温かく見守って応援したい。

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