2019年6月19日(水)

英離脱案、審議再開 否決でも代替案に決め手なし

2019/1/9 18:11
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【ロンドン=中島裕介】英議会下院は9日、欧州連合(EU)と合意したEUからの離脱案を巡る審議を再開した。焦点であるアイルランドとの国境問題の解決策は見つかっておらず、現状では15日に採決をしても否決される可能性が高い。9日の審議では否決後に政府が3営業日以内に代替案を出すことが決まったが、いま取り沙汰されている案にも決め手はない。先行きが見通せないまま3月末の離脱時期が近づいてきた。

メイ英首相は下院での離脱案承認を目指すが、賛成票が積み上がらない=ロイター

「迅速な議論が必要だ」。こう主張するEU残留派の保守党議員らは、9日の審議で「政府案が否決された場合、政府は議会の3営業日以内に代替案を出す」との動議を提出。これが政権の意に反して可決された。

英国のEU離脱関連法では政府案が議会で否決された場合、政府は21日以内に代替案を出すことになっていたが、3日に短縮された形だ。離脱案への支持が集まらない中で、メイ英首相にとって厳しい条件が加わった。

離脱案の焦点は、紛争があった英領北アイルランドと陸続きのEU加盟国アイルランドとの間での厳格な国境管理の復活を阻止することに絞られている。だが妙案は見当たらない。いまの離脱案では、2020年末に終わる移行期間後も問題が解決しなければ英全土をEUの関税同盟に残留させる。さらに北アイルランドでは食品などの規則でEUルールを適用する。この2点が「安全策」と呼ばれる措置だ。

アイルランドとの国境問題が残るうちは、離脱後も英国の主権は大きく制限される。このため与党・保守党内の強硬離脱派は「合意なしの離脱も辞さない」と反発。最大野党・労働党などの残留派も「EUに残る方がマシだ」と訴える。

政府の離脱案に代わる案としては「合意なし離脱」「EUに残留」のほかカナダ型、ノルウェー型の2案が挙がる。

強硬離脱派が推すのがEUとの距離が遠くなるカナダ型だ。同国とEUは包括的経済・貿易協定(CETA)を締結している。カナダはEUとの協定で工業製品の関税撤廃の利益を享受するが、移民受け入れの義務はない。EU域外の国との通商協定の締結も制限されない。英国のデービス元EU離脱担当相は2018年10月「交渉の初期ではEUはカナダ型を提案していた」と証言した。

だが、カナダ型では国境問題を解決できない。規制などのルールは協定の枠外なので、通関手続きが発生するためだ。ノルウェー型なら離脱後の英国とEUの距離はぐっと近くなり、メイ氏を支持する保守党内の穏健離脱派やEU残留派の一部が賛意を示す。

北欧のノルウェーはEU域外だが、EU加盟国と共に欧州経済地域(EEA)へ参加。英国もEEAに加われば、EUとの単一市場に残るので、ほぼ無関税となり通関手続きも少ない。アイルランドとの厳格な国境管理の回避も期待できる。

ラッド雇用・年金相は18年12月「離脱案が否決されたら、ノルウェー型が最善の代替策」と主張した。だが、移民の受け入れ義務は残る。EUの政策決定に関与できないのに食品などの規制は受け入れる必要があり、強硬派の賛成は望めない。

強硬派からは「『合意なし離脱』が(EU離脱を決めた16年の)国民投票の意思に最も近い」(ジョンソン前外相)といった声も出始めた。合意がなければ移行期間もなくなり経済が大きく混乱しかねないが、やむを得ないとの立場だ。

残留派には「再国民投票」を求める声もあるが、実現性は不透明だ。予定通り15日に採決し否決された場合、政府は最短で18日までに代替案を出す必要があるが、EUと再協議をするには時間がない。労働党は内閣不信任案を提出する構えをみせており、解散・総選挙になれば政治の混乱にいっそう拍車がかかる。

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