被曝線量の分析に誤り、論文修正へ 未同意データ使用も
東京電力福島第1原子力発電所事故後、福島県伊達市の住民の個人被曝(ひばく)線量を分析した論文を巡り、著者の早野龍五・東京大名誉教授(原子物理学)は9日までに「累積線量を3分の1に評価する重大な誤りがあった」として、掲載した英専門誌に修正を求めたと明らかにした。
伊達市内の一部地域に70年間住み続けた場合の累積線量を「20ミリシーベルト未満」としていたが「正しくは3倍するべきだった」という。計算ミスが原因としている。
論文に使用したデータのうち約2万7千人分は本人の同意が得られていなかったことが判明しており「報道で初めて知った。市民の皆様に迷惑を掛けた」とした。
国の放射線審議会は2018年の会合で、事故後に策定された放射線基準を検証する資料として論文を使用しており、事務局の原子力規制庁担当者は「今後の扱いを検討する。不確定な内容があれば、資料から除く可能性もある」と話した。
掲載された論文は2本で、福島県立医大の宮崎真講師との共著。「ガラスバッジ」と呼ばれる個人線量計で11~15年に測定した住民の外部被曝線量を分析し、16年12月に空間線量との関係を調べた第1論文が掲載された。誤りがあったのは、人が生涯に被曝する放射線量との関係を検証し17年7月に掲載された第2論文。
専門家の指摘で誤りに気付き、18年11月に専門誌側に修正を申請。修正版を出すよう求められ現在、対応中という。〔共同〕
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