2019年9月17日(火)

英「合意なし離脱」対応急ぐ 物流分散へフェリー増便
9日から審議再開

2019/1/8 17:56
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【ロンドン=中島裕介】英政府は3月末に迫る欧州連合(EU)からの離脱に向け、EUと離脱条件などで折り合えない場合の「合意なし離脱」の準備を加速する。離脱に伴う通関手続きや、関税ルール変更の周知徹底などだ。9日から再開する英議会での離脱案の審議で与野党の反対派が翻意する可能性は低く、最悪の事態への備えが必要と判断した。

メイ首相はEUと協議を進めている=ロイター

メイ首相はEUと協議を進めている=ロイター

まず対策を強化するのが、通関手続きの発生で最も混乱が予測される物流分野だ。フランスへ渡る玄関口のドーバー海峡付近では積み荷の検査などのために数十キロメートル規模のトラックの大渋滞ができると予想されている。商品や原材料の輸送の遅れなどを通じて、サプライチェーン(供給網)に影響を及ぼす可能性が高い。

このため英政府は英南部のポーツマスなどを発着するトラックを搭載できるフェリーを増便し、ドーバー以外への物流の分散を図る。これに1億ポンド(約138億円)を充てる方針だ。7日にはドーバー海峡周辺で約100台のトラックを使って渋滞を再現して訓練も行われた。

陸続きの英領北アイルランドとアイルランドとの国境でも何らかの手続きが設けられる可能性がある。

企業向けには、合意なし離脱に伴う関税のルール変更や企業が取るべき対策などを記した助言書をEメールで約8万通分、送付を始めた。医薬品などの業界に、物流の停滞に備えた在庫積み増しを求める狙いもある。さらに週内にはラジオ広告や交流サイト(SNS)を使って、国民に向けても合意なし離脱への備えを呼びかける予定だ。

これとは別に英国とEUは2018年末までに、金融や運輸など緊急性が高い分野での対応策を別々に公表した。双方の内容を照らし合わせると、離脱後に英・EU間の航空機が飛ばない可能性があるといわれていた航空分野では、19年3月末の離脱から1年間は現状が維持される方向となった。

金融では世界の拠点となっている英国のデリバティブ(金融派生商品)の清算機関を、EUの金融機関も1年間に限り今まで通り使えることが固まった。EU企業のデリバティブ残高の約41兆ポンドに影響が出るとの試算もあったが、大混乱は回避されそうな情勢だ。

ただいくら対策を強化しても、今までゼロだった関税や通関手続きの発生による企業への影響は「政府の対策ではカバーしきれない」(英政府筋)。EUで営業するために必要な単一パスポートが失効する英金融機関からは、約110兆円の資産がEUに移されているという試算もある。

メイ英首相は1月15日の離脱案の採決に向け「議員が支持できるよう、EU首脳と話をしている」と主張。9日の審議再開までにEUと協議した打開策などを公表し、反対派を説得する考えだ。

最大の懸案であるアイルランドとの国境に厳格な境を置かないようにする具体策を棚上げにしたままの英・EUがまとめた離脱案の根本的な修正がなければ、反対派は賛成に転じない公算が大きい。現段階では15日の採決で離脱案が承認される可能性は低く、「合意なし離脱」を回避する道筋は見えないままだ。

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