精神科医の診察、患者の4割が「説明不十分」と回答
精神疾患で医療機関を受診した患者の約4割が「医師の説明が不十分」と感じていることが精神科医による実態調査で分かった。精神医療の分野で患者を対象とした調査は珍しいという。患者や家族が診察内容に不満を持っていることも明らかになり、専門家は医師に患者への接し方を見直すよう呼びかけている。

調査を主導したのは「やきつべの径診療所」(静岡県焼津市)の夏苅郁子医師(64)。2015年6~8月、全国の患者団体などを通じ患者や家族の計1万8千人に郵送で質問票を送付し、患者2683人と家族3519人の計6202人が回答した。調査結果は18年10月に日本精神神経学会の学会誌に掲載された。
回答した患者の病名は統合失調症(72%)が最も多く、うつ病(7%)などだった。
担当医への評価を聞く質問では、患者の41%が「早く診察を切り上げようとする雰囲気がある」と回答。「病名や薬について十分な説明がない」(37%)や「回復の見通しについて納得できる説明がない」(36%)などが続いた。
家族は「薬の副作用など身体的なケアをしてくれない」(33%)や「事務的な感じがする」(31%)などの意見が目立ち、多くが診察時の医師の説明に不満を感じていることが判明した。
「担当医は何を中心に診察しているか」との質問では「患者本人の価値観」との回答が、患者(61%)と家族(52%)ともに最多だったが、「病院の都合」がともに1割程度あった。
夏苅医師らは、患者や家族から「担当医とコミュニケーションが取れない」などとの悩みを多く聞き、医師のコミュニケーション能力がどう評価されているかを調べることにしたという。
夏苅医師は「精神科の医療現場は慢性的な人手不足で『診察は5分、薬を出して終わり』ということも多い。(薬ではなく)医師は言葉の力を大切にする診療をすべきだ」と指摘する。
今後、調査結果は冊子にして全国の精神科病院などに配布する予定で「医師と患者側がどんな工夫が必要なのかを考え、対等に話し合えるきっかけになってほしい」と話している。