アップル業績下振れ 中国で減速、買い替えも進まず
米アップルが2日に発表した業績見通しの下方修正が、波紋を広げている。同社がその理由に挙げたのは、売上高の2割を占める中国を中心にスマートフォン(スマホ)の販売が不振だったことだ。米国との貿易摩擦で消費が落ち込んだとしているが、スマホの機能が成熟するなかで定期的に新製品を投入して買い替えを促す同社の戦略も曲がり角を迎えている。

アップルが発表したのは2018年10~12月期の売上高の見通し。当初見通しから6~10%低い840億ドル(約9兆円)に引き下げた。その結果、16年7~9月期以来の前年同期比減収となる見通し。同社の株価は2日の時間外取引で一時8%下落した。
ティム・クック最高経営責任者(CEO)は投資家向けの声明で「新興国について一定の厳しさは予測していたが、中華圏(中国と香港、台湾)については経済減速の規模感を想定できなかった」と述べた。
中国は世界のスマホ市場の3割を占めており、そこでの停滞はアップルの業績を直撃する。今回、売り上げ全体の約6割を占めるスマホ「iPhone」が最新機種の「XR」を中心に振るわなかった。同社は毎年、年間で最も売り上げがたつ10~12月に最新機種を拡販するが18年はその目算が狂った。
実際、同社が今回の修正の最大理由とする中国市場のマクロ環境は同社にとって逆風だ。中国の18年7~9月期の国内総生産(GDP)伸び率は6.5%で09年の金融危機以来の低水準だった。業績見直しの発表直後に米経済テレビ局CNBCの取材に応じたクックCEOは「中国経済は18年後半から明確に減速し始めている。貿易摩擦がそれに拍車をかけている」と述べた。
スマホ市場も伸び悩みが目立つ。米調査会社のIDCによると中国での18年7~9月期のスマホ出荷は6四半期連続で前年割れとなった。縮む市場に米通商政策が冷水を浴びせているというのがアップルの言い分だ。
ただ、新作iPhoneで毎年の需要を喚起する戦略が限界に近づいている可能性もある。クックCEOも先進国を含めた中国以外の地域についても「iPhoneの買い替えが思ったほど進まなかった」と述べている。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校経営学部のテリー・クレマー非常勤教授は「ライバル企業とのスマホの性能差がそれほど無くなるなか、価格が高いアップル製品は買い替えが進まない」と指摘。米国の携帯端末下取り会社によるとiPhoneの平均買い替え期間はライバル端末よりも長い傾向にある。
実際、日本でも主力のiPhoneの販売には陰りが出ている。18年10月発売のXRは、販売が振るわず在庫が積み上がった。大手販売代理店によるとXRの携帯大手3社の販売台数は、前年に発売した新機種の1カ月後の水準より3割程度少ないという。
原因が何であれ、iPhoneの販売減が続けばアップルをとりまく部品供給(サプライヤー)網にも影響が出る。アップルは約200社の主要サプライヤーを抱えるが、多くは台湾、米国、日本の企業だ。
経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)は売上高の過半をアップル向けが占め、XRに液晶パネルを供給している。同社は18年11月に「モバイルの振れ幅を慎重に見極める」(月崎義幸社長)として、19年3月期の売上高見通しを引き下げている。
スマホ用のリチウムイオン電池などを手掛けるTDKの石黒成直社長は世界のスマホ市場について「15億台の年間販売で頭打ちの状態だ。機能も成熟化しており、買い替えサイクルが長期化している」と足元の市況を危惧する。
アップルの時価総額は18年8月には米企業として初めて1兆ドルを超えた。底堅い収益力で投資家の期待を集めてきたが、一部にあったスマホ事業の失速懸念をぬぐえない中で、米中関係も悪化。同社とそのサプライヤーは不安のなかで年明けを迎えた。
(シリコンバレー=白石武志、中西豊紀)
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