バングラ総選挙、与党が9割押さえ圧勝 再選挙要求も
不正多発、産業界も「強権」懸念

2018/12/31 8:35
保存
共有
印刷
その他

【ダッカ=黒沼勇史】バングラデシュで30日投開票した総選挙(一院制、定数350議席)で、ハシナ首相の与党アワミ連盟(AL)が議席数の約9割を獲得し圧勝した。ハシナ氏が3期連続で首相に就く見通しだ。一方、野党は不正多発を理由に再選挙を要求。産業界でもハシナ氏の強権への懸念が広がる。反政府運動が高まれば、2016年の飲食店襲撃テロ以降に改善した治安が再び悪化する懸念がある。

バングラデシュではハシナ首相の強権体制への批判が高まっている(ダッカ)

選挙管理委員会によると、小選挙区300議席で延期・再投票となった2議席を除く298議席のうち、ALが単独で259議席、友党を含む与党連合で288議席を獲得した。最大野党バングラデシュ民族主義党(BNP)中心の野党連合は7議席にとどまった。小選挙区以外の50議席は女性枠として比例配分される。ハシナ氏の首相就任は4度目。1月上旬にも組閣する見通しだ。

与野党とも2桁の経済成長率を目標に掲げており、争点は主に、2009年から続くハシナ体制の継続か政権交代かだった。ハシナ政権は報道統制やインターネットの制限、野党支持者の弾圧など政権維持に向けてあらゆる策を講じた。

野党連合によると、選挙戦中に野党支持者ら1万5千人以上が不当逮捕された。ダッカ在住の30代の女性は「BNP支持の弟は道を歩いていただけで逮捕された。政権は恐怖を植え付けようとしている」と声を潜めた。駐バングラデシュのミラー米大使は27日「過去2週間の暴力増加を懸念している。特に野党候補者に矛先が向かっているようだ」と苦言を呈した。

不正投票も多発したようだ。ダッカ郊外の村に住む野党支持の男性(42)は「投票2日前に『投票所に行く必要はない。(男性の家族)7人分を投票しておく』と、同村のAL支持者に迫られ拒否できなかった」と明かす。野党連合は30日夜、「ほとんどの投票所で不正があった」として再選挙を要求した。

バングラデシュはハシナ政権下で成長率が加速し、産業界は表向きAL支持が多い。だが今回の選挙で「民主主義が大きく後退した」と批判する声も伝わる。ある大手輸出企業の経営者は「ハシナ首相は一定の政策成果を残した。警察や裁判所などあらゆる公権力を使って表現の自由や野党を打ち砕く必要はなかったはずだ」と憤る。

今後は国際社会の反応が焦点となる。「世界の反応は地域の盟主インド次第」(前出の経営者)とされる中、インドが派遣した選挙監視団は30日昼、「公正に選挙が行われた」との声明を公表。再選挙を求める野党連合を支持する国が出てくるかは見通せない。

24年までの長期政権の切符を手に入れたハシナ首相にとって、目先の課題は治安維持になる見通しだ。地元メディアによると、30日は治安部隊60万人を投入したにもかかわらず各地で衝突が起き、与野党双方の支持者を合わせ17人が死亡した。

16年に首都ダッカの飲食店で起きたテロ事件では、日本人を含む22人が犠牲になったが、底流にはALの一党支配や社会の閉塞感があったとされる。1億6千万人を擁する世界8位の人口大国バングラデシュは貧富の格差が広がり、雇用難から多くの出稼ぎ労働者を海外に送り出している。「不正選挙」への不満が尾を引けば、選挙後も衝突が続き、治安が再び悪化する恐れが高まりそうだ。

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]