イタリア19年予算成立 財政悪化懸念なお強く
【ジュネーブ=細川倫太郎】イタリアの2019年予算を29日の同国下院が可決、成立した。欧州連合(EU)側の要請を受け入れ、財政収支の赤字幅を縮小する形で修正した予算案を審議、採決した。だが最低所得保障(ベーシックインカム)などを盛り込み、なお財政悪化の懸念が残る。
AFP通信によると、採決結果は賛成327票、反対は228票。上院は23日に通過していた。
民主党など野党は「議論が十分でない」などと反発し、上下両院で審議は紛糾した。コンテ首相は29日「(19年予算は)野心的な改革計画の一歩になる」と述べ、経済再建への自信を示した。

国内総生産(GDP)に対する財政赤字の比率は2.04%とした。イタリア政府は当初、この比率を2.4%と定めた予算案をEUの執行機関である欧州委員会に提出した。だが、前政権が掲げた数値の3倍という高水準で、欧州委は「深刻な規律違反がある」という理由で修正を求めた。
欧州委はイタリアに対し罰金などの制裁手続き入りを検討した。しかし同国政府が譲歩し、予算案の赤字幅を圧縮した。
コンテ政権は6月の発足当初から低所得者層に対するベーシックインカムの導入、年金受給開始年齢の引き下げなど拡張型予算につながる経済政策を掲げた。こうした政策を盛り込んだ形で19年予算は成立したが、開始時期の延期や規模の縮小で対応する。一方、不動産など国有資産の売却加速で歳入増を目指す。
それでも予算の大枠は修正前と変わらず、市場では財政悪化への懸念が漂う。イタリアの政府債務残高のGDP比は130%超で、ユーロ圏ではギリシャに次ぐ2番目の高さだ。欧州委はイタリアの財政の状況を今後も注視していく方針だ。
イタリア経済は個人消費の減速などで、7~9月期の実質成長率が前四半期に比べマイナス0.1%に落ち込んだ。コンテ政権の経済政策はポピュリズム(大衆迎合主義)の色彩が強いばらまき型で「対症療法にすぎない」との見方も多い。
18年のイタリア政治は大きく揺れた。3月の総選挙では当時の与党だった民主党が大敗し、ポピュリズム政党「五つ星運動」が第1党に躍り出た。単独で過半数に届かず、6月に極右政党「同盟」と連立で合意した。
コンテ政権はイタリア経済低迷の主因がEUの財政ルールに合わせた緊縮策だと主張。19年予算案を巡り、歳出拡大を目指すイタリア政府と、同国政府の債務削減を重視するEUとの対立が表面化した。一時はイタリアの国債や株が売られ、金融市場は動揺した。