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大坂と上地、日本テニスの常識変えたW女王

HeatUp東京2020

 日本テニス界の常識を次々と覆した錦織圭(日清食品)、国枝慎吾(ユニクロ)に刺激を受け、後を追うように現れた大坂なおみ(日清食品)と上地結衣(エイベックス)。2018年、大坂は日本勢初となる四大大会初優勝を全米オープンで果たし、上地は全仏の車いす女子シングルスを制覇、日本人初のグランドスラム達成まで残すはウィンブルドン選手権だけだ。現在21歳と24歳、脂の乗った年齢で東京五輪・パラリンピックを迎える。

大坂、底力ためる時

1月から四大大会初戦、全豪オープンがある。18年全米女王として迎える大坂(21)には昨年末、いつも以上にハードなトレーニングが用意されていた。

「今年はとても難しいシーズンになる。みんなが私を倒そうと向かってくるのは全く新しい挑戦」。大坂は「当然のこと」と言わんばかりだ。自分はもっと強くなるしかない。そのためのハードな練習は「ワクワクする」と涼しい顔だ。

攻める場面と守る場面の勘所を覚えた大坂は、世界ランク5位に飛躍した=共同

今年の目標は「世界ランキング1位」。四大大会優勝を成し遂げた今、2勝目よりはまず、「安定していいプレーをしたい。その積み重ねが世界1位」という。

現在の世界ランクは5位。1年前の68位からの飛躍には、四大大会に次ぐ格のBNPパリバオープンでのツアー初優勝と全米優勝が大きかった。「結局、昨シーズンのハイライトはこの2つだけ。1つ大会を勝ったと思ったら、その後で1回戦負けしていてはね」。自他とも認める完璧主義者の大坂は、自分に厳しい。

3年前のデビュー以来、女子テニス屈指のパワーを誇ってきた。サーブもショットも「爆発」という言葉がこれほどしっくりくる選手はいない。ただ、1年前はその力をもてあまし気味だった。気持ちが少しかみ合わないと、力をコントロールできずにミスして自滅する。相手にしてみれば、「粘っていれば、いつかミスしてくれる」選手だった。

17年末から、四大大会23勝セリーナ・ウィリアムズの練習相手を務めたサーシャ・バインコーチについて変わった。攻める場面、守る場面の勘所を覚え、爆発力が1大会続く。それが初優勝にもつながった。

「普通にプレーすれば、私は誰にでも勝てる」と平然と言ってのけるだけの自信も芽生えた。今でも試合中に集中力が切れる悪癖がのぞくこともあるが、これは経験を積むことで少しずつ解消されていくはずだ。

「若いのにプロフェッショナルで、真面目に練習する。それ以上のことはできないし、それを続ければちょっとずつ安定感は出てくると思う」。錦織センパイのアドバイスを、大坂は神妙に聞いていた。

16年リオデジャネイロ五輪は世界ランキングでふるいにかけられ、出場できなかった。「東京での五輪は特別。金メダルがとれたら最高だけど、五輪の全てを楽しみたい」と大坂は今から胸躍らせる。

20年6月8日発表の世界ランキングで五輪出場者は決まる。五輪を意識するのはまだ先。今年はじっくり、揺るがぬ底力をためる時だ。

上地、負けん気に火

昨年10月、ジャカルタで開かれたアジアパラ大会。車いすテニス女子シングルス決勝に勝って初優勝した上地(24)は、日本選手第1号となる東京パラリンピック出場権を手にした。「今年1番の目標にしていたのですごくうれしい」と声を弾ませた陰で、実は大けがをしていた。

前日のダブルス決勝で負けた後、左脇腹が痛み始め、息もしづらい。後に全治4週間の肋軟骨損傷と診断される重傷だったが、テーピングと薬で痛みをこらえ、おくびにも出さない。「プレーにも納得してなかったので、言い訳にはしたくなかった」。身長143センチの小さな体には、負けん気がいっぱい詰まっている。

上地は全競技を通じて日本選手第1号となる東京パラ出場権を手にした=共同

世界ランク1位で迎えた18年は、オランダの新鋭ディーダ・デグロート(21)とつばぜり合いを演じた。連覇を狙った1月の全豪決勝では屈したが、6月の全仏は上地がやり返して優勝。7月のウィンブルドン選手権はデグロートが戴冠し、9月の全米決勝でも上地は敗れる。

ただ全仏優勝も「まぐれで勝てたようなもの」だった。パワーで押すライバルに対し、上地はトップスピンをかけた高いボールで相手を押し込みながら、左右に展開する持久型だ。

全仏決勝では第1セットを失って追い込まれたがゆえ、同じ左利きの中国選手がデグロートと対戦した試合を参考に低い弾道で同じところを何度も攻めるテニスに変えた。「イチかバチかでやったらはまったが、逆に自分のテニスってどんな感じと迷ってしまった」

その後も迷路は続き、ようやく自分を取り戻せたのが全米だった。決勝ではサービスゲームを一つもキープできずに負けたのだが、「やっと持ち直しの兆しが見つけられた」という。

世界ランク上位が参加する12月の世界マスターズ決勝でもデグロートに敗戦。ただ、遅い展開の中にもリスクを負うショットを織り交ぜる新しいスタイルを試せた。「思うような精度で打てれば、ちょっと近づけるのではと思えた」。今月の全豪では一段と成長した姿が見られるだろう。

「納得のいかない勝ち」はあったが「納得のいく負け」が少なかった18年を「テニス選手として全然良くなかった年」と断じる。パラリンピック出場は東京で3度目だ。「12年ロンドンは納得がいったが負け、16年リオデジャネイロは銅メダルを取ったけど納得はいってなかった。東京は納得もいくし、結果も出して終わらせる。妥協をするつもりはない」。負けん気がまた顔を出した。

(摂待卓、原真子)

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